■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
「フルサイズ×コンパクトで人気を博したα7Cの後継機」豊田慶記氏がソニーα7C Ⅱ と α7CR を解説
α7 Ⅳとα7R Ⅴの中身を詰め込んだシリーズ最小版Bros.
「フルサイズ×コンパクト」というコンセプトを掲げ、2020年末にα7 Ⅲをベースに大幅な小型化を実現したことで人気を博したα7Cの後継機。
α7 Ⅳと同じ約33MPの裏面照射型CMOSセンサーを持つα7C Ⅱと、α7R Ⅴと同じ約61MPの裏面照射型CMOSセンサーを搭載する派生モデルのα7CRというラインナップは、ソニーが「フルサイズ×コンパクト」というコンセプトに手応えを感じていることの証だろう。
α7CRにはグリップエクステンションGP-X2が付属。単体で購入することも可能(2万2000円・税込)。もちろんα7C Ⅱにも装着が可能だ。ボディカラーは共にブラックとシルバーを用意。
両機の特徴として、AIプロセッシングユニットと最新のBIONZ XRを組み合わせたエンジンを採用していること。α7R Ⅴ登場時に話題となったリアルタイム認識AFを楽しめるので、見た目からは想像もつかないほどの高度な動体撮影に対応できるAF性能を持っている。
登場からちょうど1年経って(記事は2024年の10月時点でのもの)改めて本機に触れてみたのだが、α7Cの時とは異なり陳腐化を感じさせず新鮮さがまだまだ感じられた。
外観は前面と上部のロゴ以外、α7CRもα7C Ⅱも同じ。背面液晶のスペックはα7Cの約92万ドットより約104万ドットに向上している。
その理由として、α7Cに比べボディの質感が改善されたこと、前ダイヤルの搭載による操作性の向上、EVFの覗き心地が“まずまず”のレベルになったことに加え、効いているのか効いていないのか分からなかったボディ内手ブレ補正の効果をシッカリと体感できるようになったことで、安楽さが劇的に良くなったことが影響している。
AF性能についてもいまだに唸らされるレベルにあることは間違いないが、EOS R5 MarkⅡなどの新世代のAF性能に触れてしまっている筆者にとっては、眩しいほどの実力という訳ではない。
それでも、鳥類や飛行機に対しては他社を圧倒するレベルの被写体認識AFを持っていることは、ソニー機のアドバンテージといって良さそうだ。特に飛行機はゴマ粒サイズでもビシバシ認識してくるので、開発チームの中には余程の飛行機撮影マニアがいるのだろう。
【α7CR】 ソニーが苦手な雲にAFさせたいシーンなのだけど、カメラ任せでAFさせて結果はバッチリ。表現力で言えば、階調は広ければ良いというものでもないのだけれど、ドエライ潤沢というか、階調の詰め込み方がとても上手い。
■α7CR FE85mmF1.4 GM Ⅱ 絞りF5.6 1/1000秒 マイナス0.3露出補正 ISO100 WB:オート クリエイティブルック:ST AFモード:AF-C フォーカスエリア:ワイド
撮影時の感触自体は、α7CRの方がレリーズ感のキレが良くショックも少ないので使っていて気分が上がる。筆者の好みだ。その一方で、AFのつかみ具合や追従性についてはα7C Ⅱの方が若干スムーズに感じられた。こちらは昨年(※注 記事発表当時)のレビュー時と変わらない印象である。
【α7C Ⅱ】ハイキーにしたかったので大胆にプラス補正して撮影。こういったシーンでもAFは迷わない。レンズが良いこともあって柔らかな雰囲気で撮る事ができた。α7CRと比べると階調性は少しタイトだけど、比べなければ全く気にならない。
■α7C Ⅱ タムロン 17-50mm F/4 Di Ⅲ VXD 絞りF4.0 1/50秒 プラス3.7露出補正 ISO 1600 WB:オート クリエイティブルック:NT AFモード:AF-C フォーカスエリア:ワイド
α7C Ⅱ & α7CRの高いAF性能と表現力
描写性についてはα7CRの方が良い。α7C Ⅱも悪いワケではないが、α7CRと比べるとハイエストライトとディープシャドーの階調がタイトに見えた。簡単に言えば潰れやすく飛びやすいということだが、これは画質を比べた場合の話。α7C Ⅱも十分に満足度の高い表現力を持っている。この差は、熟練者向けのα7CRと幅広いユーザー層に向けたα7C Ⅱでそれぞれチューニングを分けているということかもしれない。
ちなみに、α7CRに付属しているグリップエクステンションGP-X2だが、バッテリー交換時の可動部分のガタツキが気になり、以前よりも「ヤレ」た感触だった。昨年触れた時も「この“しつらえ”にしてはちょっと高いかな?」と感じられたが、今回は「もう少し頑張って欲しいかな」という感想。こういう部分はニコンの作りの方が良いし、アルカスイス互換などの工夫が欲しかった。
撮影性能から考えるとα7C Ⅱは魅力的に見える。キャッシュバックキャンペーンを駆使すれば更にお買い得感は高まる。α7CRについても、クロップを併用することで使い勝手が大きく拡張される。APS-Cクロップしても26MPであることが大きなメリットだ。標準ズームであっても擬似的に高倍率ズームのように使えるので、軽装でのトレッキングで守備範囲を広げることができる。
【α7CR】かなり風の強い日だったので高速シャッターで、AF-C+トラッキング任せで連写でパチリ。ビックリするくらいのAF精度で、連写する必要無かったほど。積層センサーじゃないのに、風に揺れる花に対して完璧に追従するとは…。
■α7C R シグマ 28-105mmF2.8 DG DN | Art 絞りF2.8 1/2000秒 マイナス0.3露出補正 ISO200 WB:オート クリエイティブルック:IN AFモード:AF-C フォーカスエリア:トラッキング
ソニー α7C Ⅱ & α7CRの「◯と×」
⚪︎
・AFが素晴らしい
・AE/AWBの制御が賢い
・手ブレ補正がちゃんと効く
×
・シャッター速度の上限が電子でも1/8000秒
・EVFの覗き心地はあと一息
⚪︎
・納得感のある価格
・大きな不満がない
×
・楽しさは少し足りないかも
・画質はS9などの方が良い
⚪︎
・階調性がとても広い
・クロップしても26MPある!
×
・性能対価格では妥当だけど、質感は物足りない
(写真&解説:豊田慶記)
ソニーα7 Ⅳ のスペック
- センサーサイズ:35mmフルサイズ
- 画素数:【α7C Ⅱ】約3300万画素 【α7CR】約6100万画素
- ファインダー:0.39型OLED EVF 約235万9296ドット バリアングルタッチパネル
- レンズマウント:ソニーEマウント
- モニター:3.0型 103万6800ドット
- 感度:ISO【α7C Ⅱ】100~51200 ※拡張ISO 50/204800 【α7CR】ISO 100~32000 ※2 拡張ISO 50/102400
- 連続撮影速度:【α7C Ⅱ】約10コマ/秒 【α7CR】約8コマ/秒 ※連写撮影モード「Hi+」時
- 記録メディア:SDXC(UHS-Ⅱ対応)
- 大きさ:約124.0×71.1×63.4mm
- 重さ:【α7C Ⅱ】約514g 【α7CR】約515g
- 発売日:2023年10月13日
- 価 格:【α7C Ⅱ】32万8900円(ボディ)/ 36万1900円(FE28-60mmF4-5.6レンズキット)
【α7CR】 43万4750円(ボディ)
※価格は記事執筆時のものです
α7C Ⅱ
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α7CR
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本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。興味のある方は、本誌もぜひチェックしてみてください!↓