世界初(コンシューマー機としては)のグローバルシャッターを搭載したソニー αシリーズの最新型プロ機「α9 Ⅲ」。その機能性と操作性はいかに? プロカメラマン・宇佐見健氏が実際に撮影したインプレッションを、写真とともに徹底解説します。

■宇佐見健氏プロフィール
1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。専門誌出版社、広告代理店を経て独立。撮影ジャンルは360度全天球、水中、旅、風景、オーロラ、ポートレート、モータースポーツ、航空機、野鳥など多岐に渡る。カメラ誌等では新製品機材の実写インプレッションやHOW TO関連、カメラメーカー工場取材など多方面の記事を執筆中。

ソニー α9 Ⅲ を宇佐見健氏が実写&解説!「究極のシャッターチャンスを追い求める、最も尖った機種」

世界初のグローバルシャッター搭載。αシリーズのプロ機

ちょうど1年前(※記事執筆当時)の暮れ、世界初となるグローバルシャッター(以下、GS)搭載という話題で注目を集めたαシリーズのプロ機最新型「α9 Ⅲ」。

メリットとしては、高速で動く被写体を捉える場合に発生する「ローリングシャッター歪み」と呼ばれる歪みのない写真と、超高速シンクロによる新たな表現の可能性が提案されているが、その一方でGSの単価が高いことと、その方式上、最低ISO感度が高くなってしまい、画質面で不利という側面もある。

ボディ上面のアナログダイヤルは機種毎の特色に合わせて装備の有無があるが、背面のボタン配置はα7 Ⅲ以後のセンターファインダーを持つ機種でほぼ統一されている。

他にも注目は、AIプロセッシングユニットの搭載と8.0段のボディ内5軸手ブレ補正という、最新のデバイスを盛り込み、最高で120fpsでAE/AF駆動することがアピールされている。これの凄さは、毎秒120回AFを行うので、仮にAFが数回ミスったとしても残りの全ての回で精度を担保できるという点にある。α1にも搭載されていたが、α9 Ⅲではさらに最新のAIプロセッシングユニットによる被写体認識の進化も加わっている。

プリ撮影時の、シャッター全押しから遡って記録する時間を非常に細かく設定可能。グローバルシャッターかつ最速120コマ/秒の威力を存分に活かすことができるだけでなく、無駄打ちにも配慮されている。

そのターゲットユーザーは究極のシャッターチャンスを追い求めるスポーツ・報道系プロユーザーであることは明らかであり、最も尖った性質の機種と言えるだろう。

その点では、筆者もかつて動きモノが好物でブラックアウトフリー機も馴染みがあったという理由で初期型に飛びついた一人なのだが、プロユーザーであっても扱うジャンルが広すぎたし、早まった買い物だったように思う。高速連写性能を持て余すことはなかったが、画質や純正クリップオンフラッシュ以外(つまり大型ストロボ)との相性の問題もあり、仕事で使える出番は限られたのだ。

ソニー α9 Ⅲの機能性・操作性

先代から格段に強化された被写体検出が実現するAF追従と最大120コマ秒の超高速連写

約2年後に登場したα9 Ⅱは主に画像転送系のマイナーチェンジだったこともありパス。3代目の本機には、センサー一新での画素数アップに僅かな期待もしていたが儚い夢で終わる。たしかに被写体検出などAF性能の強化に魅力を感じる部分もあったし、本誌の新サンニッパのレビュー作例撮影などでもそこそこ使ったが、購入には至らなかった。

グリップサイドがラウンド形状となり、手のひらのRに沿って自然に握り込むことが可能。指先側も指掛かりの良い形状になった。大袈裟でなく、撮影時の疲労感がまったく違う。(■製品撮影:豊田慶記)

その理由は、「APS-Cにクロップすると10メガ足らずになる画質」に少しでも不満を感じるなら、手を出すべきではないと思ったから。

「そういう人のためにはα1 Ⅱがあるではないか!?」というのも分かるし、価格的には5万円ほどの差はあるものの、十分な高速性能も持ち、高画素を活かして風景や商品撮影にだって使えるフラッグシップという選択もある。

ただ、もしこれを読んでいる方が報道系でもプロでもないが、「とにかく動きモノを撮りまくりたい!」とか、「大きなプリント作成は特に考えていない!」という人なら、α9 Ⅲは先代から格段に強化された被写体検出が実現するAF追従と最大120コマ秒の超高速連写を存分に味わえる唯一無二のモデルだ。

鷹匠の調教中を撮影。小型のセイカーハヤブサの飛翔はEVFで追うのも難儀するが、トラッキングAFのフレームに捉えさえすれば瞳ピントは高確率でゲットできた。
■FE100-400 mm F4.5-5.6 GM OSS 1/5000秒 絞りF5.6 マイナス0.3露出補正 ISO640 鳥認識 撮影協力:鷹の庵
■共通撮影データ/シャッター優先AE WB:オート

その証拠に、作例のような高速で飛翔するハヤブサを撮影するのは、筆者は初の経験だったが、瞳にだってガチピンを得られたし、個人的にはものすごくブランクのあった至近距離でのスケボー撮影などでもしっかり結果を残せた。

カメラ位置は地面レベルのローアングル。ジャンプの寸前にセクションが身体のほとんどを隠してしまうが、一瞬のブラインドでもAFの復帰は素早く瞳に合焦している。
■FE28-70mm F2 GM (1/4000秒 絞りF2.8) プラス0.7露出補正 ISO250 人物認識
■スケートボーダー:Keiichiro Saito

しかし、これはα9 Ⅲに限ったことではなく、ライバル機も含め全てで起こりうること。100%の成功は無いのだ。

プリ撮影にしても、静止している姿にシャッターボタンを押して不用意に類似カットを量産するのではなく、飛び立つ瞬間とシャッターボタンを押す指先だけに全神経を集中させるべし…などと書きながら、今でも“いつかクロップしても1600万画素くらいはキープできる機種に育たないかな…”と淡い期待を抱く自分がいるのも事実なのですけどね。

セクションにスケボーのノーズをあてて滑らすバックサイドKグラインドというトリックを流し撮りにしてみた。低速シャッターで多少上下方向手ブレも入ったが、頭部をしっかりトラッキングAFが捉えていた。
■FE28-70mm F2 GM 1/80秒 絞りF22 プラス0.7露出補正 ISO250 人物認識

宇佐見 健氏が考えるソニーα9 Ⅲの「◯と×」

⚪︎
・賢くなった被写体認識AF
・歪まないのは正義!
・握力消耗が軽減の馴染むグリップ

×
・120fpsって、もう高速動画じゃん?
・α1 Ⅱと比べてトリミングの自由度低し
・莫大な枚数が撮れちゃう
・バッテリー消費はチャンピオン級

(写真&解説:宇佐見 健/一部製品写真:豊田慶記)

ソニーα9 Ⅲ のスペック

  • センサーサイズ:35mm(フルサイズ)
  • 画素数:約2460万画素
  • ファインダー:0.64型OLED EVF 943万7184ドット
  • レンズマウント:ソニーEマウント
  • モニター:3.2型 209万5104ドット
  • 感度:ISO 250~25600 ※拡張ISO 125/51200
  • 連続撮影速度: 約120コマ/秒(電子)
  • 4軸マルチアングル タッチパネル
  • CFexpress Type A/SDXC(UHS-Ⅱ対応)デュアル
  • 大きさ:約136.1×96.9×82.9mm
  • 重さ:約703g
  • 発売日:2024年1月26日
  • 価 格:93万5000円(ボディ) ※価格は記事執筆時(2023年12月)のものです
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本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。興味のある方は、本誌もぜひチェックしてみてください!↓