先日紹介したNOKTON Classic 40mmF1.4のシングルコート版。こちらも2004年4月登場の20年選手となり、現行VMマウントレンズとしては最古参。MC(マルチコート)版と同じレンズ構成となるが、本レンズはすべてがシングルコーティングとなる。違いはそれだけ(S・Cの刻印とレンズの色が微妙に異なるくらい)だ。

■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート

コシナ Voigtlander NOKTON Classic 40mmF1.4 SC VM 主な仕様

●焦点距離:40mm
●最短撮影距離:0.7m
●レンズ構成:6群7枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:43mm
●大きさ・重さ:φ55×29.7mm・175g
●付属品:-

違いはコーティングだけ。どこまで違いはあるのか?

MCと比べて逆光時のフレアは特に至近側で少し出やすい感じがするような、しないような。滲んだ際の拡散が少しだけ大きいような、変わらないような。「いかにも」な写真撮ってみたけど、豪快に特性が違う訳ではないから判断が難しいです。
■絞りF1.4 1/125秒 プラス2.7露出補正 ISO250

全体的にニュートラル方向だった色調のMC版と比べ、SC版では「クラシカルな色調を再現している」と公式ページでアピールされている。

MC版では微妙なピントコントロールや撮影距離の設定と絞りの組み合わせでポワポワとした味わいも楽しめる一方、キリリとした現代的な高性能レンズの側面をも併せ持っていた。果たして昨今の賢いAWBを持つ機種でそうした色調の違いは出るのだろうか? 

遠景開放でホワホワするか? っていうと、ちゃんとピントを合わせれば全然シャープに解像します。遠景だからと無邪気に無限遠で撮るとホワホワしまっせ。撮ってる時の感覚だけど、AEの結果はSCの方がMCよりも少し暗めに出る気がしました。微妙にフレアっているのかも知れない。
■絞りF1.4 1/5000秒 プラス1.0露出補正 ISO100

体感はMC版と全く同じ。レンズ銘板に青字でS・Cとある以外に差が無いように思われるので、以下、MC版のものを引用します。

全長が30mm未満という驚きのサイズ感で、重さも175gしかない。それでいて開放F1.4というのは現在の感覚では異色。いかに光学性能重視で肥大化が進んでいるのか? が分かるような気がしてくる…が、ユーザーの購買理由に「性能向上」がある以上は仕方のないことなのだろう。

ユーザーとメーカーは共犯関係にあるということを思い出させる現実がそこにあるが、全部が全部そっち方面にならなくても良いんじゃないですかね?

絞りリングのステップは他のフォクトレンダーブランドと同様に1/2段。操作感はいつものコシナレンズそのもので、とても心地良い。今回の試用機材の製造年と使用状況は不明だが、仮にこのクオリティを20年も維持出来ているのだとしたら、それは大変に素晴らしいことである。

最短撮影距離は0.7m。ヘリコイドアダプタ(LM-LSL M Ⅱ)全伸ばしの状況では、指標まで約26cm、レンズ先端からは約20cm弱まで接写することができた。

う~ん、う~ん、う~ん…。ほぼ同じじゃね?

ヘリコイドアダプター併用で、最至近で撮った時の柔らかさ、という点ではSC版の方が柔らかいとは思いました。でもこれコーティング関係あるのかなぁ…全体繰り出しで、至近側だと後玉がセンサーから離れていくだけだし、室内だとモノコートと一部マルチコートの影響ってそんなに大きいワケじゃなくない?? って思いながら撮ってた思い出。
■絞りF1.4 1/1000秒 マイナス0.7露出補正 ISO160

撮影前は、SC版は簡単にフレアが出てフワッとエモい感じにやりやすいかな? と予想していたけれど、LUMIX S5と組み合わせる限りにおいて、NOKTON Classic 40mmF1.4VMに関しては相当頑張らないとMC版とSC版の違いを出すのは難しいと思われます。

こういう撮り方をした際のピント位置前後の滲みや色ズレはMC版の方が小さいです。もう少しスッキリしてるって言えば良いかな? あと周辺部のフリンジの程度がSCの方が微妙に悪い。でもこうしたフリンジってモノクロで撮ると良い感じに滲んで輪郭を柔らかく見せてくれるので、必ずしも出ない方が良いってワケでもありませんよ。カラーでも絵作りによってはフリンジがあったほうが雰囲気が良いとか、いわゆる「エモさ」以外の部分でもそういう事があります。ま、自己満の世界だけど。
■絞りF1.4 1/40秒 プラス1.0露出補正 ISO200

コシナの公式見解では「SC版ではクラシカルな色調」ということでしたが、強いて言えば少しマゼンタからイエローに傾いているかな? と思わなくもない程度。言われなければ気付かない可能性が大です。

一応気になったので、全く同じシーンで撮り比べてはいませんが、日中日向シーンではS5で運用する限りにおいて、SC版のAWB判定は5300K前後で推移。MC版では5100K前後でした。

ケルビン固定で撮り比べれば、見た目にももっと色味に差が生じた可能性は否定できないけれど、眼を三角にして比べて「あーだこーだ」言うのが適切なキャラクターのレンズだとは思えないので検証はしていません。

両方を買う必要はないかと。そもそも両方を用意しているコシナが異常です(愛)

ヘリコイドアダプター込みでの最至近でパチリ。コーティングの違いとか、よく分からねーし、もう良いやと思って気持ちを切り換えて撮り出した辺り。やっぱね、ボディ内手ブレ補正があると楽しさは8倍くらいに跳ね上がります。絶対ブレると思ったけどS5君もやるねぇ。なんかあるじゃん? 1/40秒とかで撮りたい時が。共振での機構ブレとか考えなくて良いちょっと緩めのシャッター速度ってやつが。
■絞りF1.4 1/40秒 マイナス0.7露出補正 ISO200

全体的な描写の方向性としてはMC版と近似。SC版ならではの表現をしようと目論むであれば、例えば逆光で嫌らしい位置に光源を配置するなどの工夫をしなければ違いは生じないように思います。

フリンジの出方などを観察すると、MC版の方が少しだけスッキリしているかな? という気がしなくもないけれど、個体差で片付く程度の差でしかなかった。そもそもコーティングでフリンジに差が出るのか分からないし。

独特の立体感。「最新世代のレンズだとこういう柔らかさのある立体感出せないだろ? お前ら性能高すぎて、厳しい光線状態でも何も起こらないから」と思いつつパチリ。周辺光量落ちも良い仕事していますね。性能面って部分で話をしても、普通に高性能なレンズだと思います。SCとMCはどっちを選んでも良いと思うな、ってこの時確信しました。写りというか使い心地は大差ないと思います。
■絞りF1.4 1/1600秒 マイナス1.7露出補正 ISO100

ということで「SC版の方が好事家としては特別感があるので気分がアガる」とか、「通(ツウ)はSCを選ぶかも知れないが、私は敢えてのMC」みたいな、気分で選べば良いように思います。

収益性や製造効率みたいな部分で言えば「SC版だけ用意すれば良かったのに」って製造に関わる大人なら考えてしまうと思います。でも、そういう正論をヨソに、どちらもリリースしてしまうのがコシナの、コシナ足る所以なのだろうと。

「迷ったら両方」の精神はキライじゃない(大好き、の意)です。