ルミックスSシリーズ用に特徴的なサイズ感の新ズームレンズが追加された。18-40mmという特徴的なレンジを持ち、沈胴式とすることで全長は僅か40.9mmに抑えられている。個人的な意見で言えば、持ち運び時や収納時に小さくできるが、沈胴式は沈胴解除の操作が正直、手間に感じる派だ…。
■撮影共通データ:パナソニック LUMIX S9 WB:オート

パナソニック LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算18-40mm相当
●最短撮影距離:0.15m(W)/0.35m(T)
●最大撮影倍率:0.28倍
●レンズ構成:7群8枚
●最小絞り:F22-32
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:62mm
●大きさ・重さ:φ67.9×約40.9mm・約155g
●付属品:-

沈胴式でスナップシューター…はて?

パナソニック的には『描写力とコンパクトさを兼ね備えたスナップシューターレンズ』であることをアピールしているが、そもそも沈胴式のレンズをスナップシューター扱いするのは「ん?」と思わなくもない。

その一方で、収納時に小さくできるというのは嬉しくもある。そういった、ハッキリしない気持ちが少なからずある。
とは言え、金属マウントでありながら約155gを実現した手腕には素直に感服である。加えてSシリーズ用のレンズは現状描写性の良いレンズばかりなので、撮影が楽しみである。

本レンズはLUMIX S9の新しいキットレンズとしても用意され、キットレンズについてはシルバーのカラーバリエーションも存在する。S9についても新色が新たに登場した。発売は10月25日(金)が予定されている。

「世界最小の代償」となるのかなぁ…

触れた感じはプラスティッキーだが、クラス的には「こんなものだろう」という気持ちがある。
写真ファンとしては妥当だと感じるだろう。しかし例えば、ビギナーがS9のレンズキットで総額20万円以上を支払って手に入れたとすると、どんな気持ちになるだろうか? と想いを馳せてみると、少しだけ複雑な気持ちが無くもない。性能からすると妥当かそれ以上の価値のある価格とは思ったが、実際問題としてお手頃価格とは言えず、もう少しだけ持つ喜びにも配慮して欲しい。

最大倍率となる21mmの至近端でパチリ。フォトスタイル:L.クラシックネオなので少しふわっとした再現ですが、それでもかなりシャープでキモチイイ描写。だが、開放F値的にはF6.3だから、まぁ…みたいな複雑な思いが無いわけではない。いちいち複雑な気持ちになるんよ。
■絞り優先AE(F6.3 1/30秒) プラス2.0露出補正 ISO100 WB:オート

操作時にスレ感やムラ感があるわけではなく、至ってスムースなところは美点だろう。
ここで少し気になったのは、ズームリングとピントリングのローレットパターンが近似しており、なおかつ距離も近いこと。

ズームしようとするとどうしてもピントリングに指が触れてしまうのだ。しかも、それぞれの操作トルクが重めで快適ではないし、ローレットの角がちょっと痛い。このサイズを実現するための最適解の設定なのかも知れないけれど、コレでいいの? とは思った。

ポイントの分かれ道は、ズーミングの頻度と使い方? 

LEICAモノクロームでパチリ。マジか!? ってくらいキモチイイ写り。開放で周辺までキリリなのに、このサイズってのがいまだに信じられません。これなら8万円弱しますわな。気になる御仁はキャッシュバックのあるウチに。もしくはS9とセットでキメるのが吉です。
■絞り優先AE(F4.5 1/30秒) プラス0.7露出補正 ISO200 WB:オート

ややネガティブな気持ちのままイジっていたが、あまりの軽さに「本当にフルサイズ対応のレンズなの?」とついつい思ってしまう。なんてったってこのサイズでワイド端が18mmなのだ。公式の触れ込みにある”描写力”のワードに「無理してんじゃないの?」と少なからず疑念を抱いてしまった。

が、実際には「これを本当にお前が!?」と2度見してしまうほどキレの良い描写にビックリ。至近端でも滲まず、どのズーム位置や撮影距離であっても周辺まで見事なもの。開放F値で無理していないことが効いているようだ。

バッキバキにシャープ。背面モニターでチェックした時にも「マジ?」って思うし、PCでちゃんとチェックした時にもやっぱり「マジ?」って思う解像性能。存在感と実力が一致してないレンズ代表に躍り出そう。なお価格的にも妥当以上の実力があります。足りないのは所有欲を満たすかどうかってところ。製品作りは本当に難しいね。
■絞り優先AE(F8 1/320秒) ISO100 WB:オート

描写力をアピールするに足る実力に納得したところで、「それでは遠慮なく」とあれこれイジワルを画策。しかし、強いて言えば画面の対角線上ギリギリ外辺りに強い光源を配置するとシャワー状のゴースト・フレアが生じるシーンがあった程度でキットレンズにしておくには惜しい逸材だ。

ズーム操作のシブさを逆手に取って、単焦点レンズみたいな気分で撮ってると強烈に楽しくて発売日をカレンダーに取り敢えずメモ。まったく、感情の波が乱高下させられますな。
■絞り優先AE(F4.5 1/30秒) マイナス0.3露出補正 ISO250 WB:オート

ズームリングの操作トルク設定に疑問を感じていたが、あまりズームさせずにそれぞれの焦点距離でパシパシ撮る感じで運用してみると、例えばコンパクトな広角単焦点レンズでお散歩しているような気持ちになり楽しかった。

さらに操作トルクの設定などにナルホドと感じることが多く、2時間も撮るころにはかなり可愛くみえてきたことは事実。とはいえ、ズームを多用する場合にはやはり「チッ」と思う。

このサイズでありながらもSシリーズの描写…そこが最大のトピック

背景の葉っぱの縁に妙な色づきは少ない、というかほぼ無い。厳しいことを言えば周辺部の光源ボケの形状をみてみるとコマ収差っぽさあるけれど、私もそこまでイジワルは言いませんよ。このレンズ、出来過ぎです。
■絞り優先AE(F4.5 1/30秒) プラス0.3露出補正 ISO100 WB:オート

逆光シーンでのワーストはこちら。ここまで目立つシャワーゴースト(右上)はこのシーンだけだったので、ピンポイントで弱点を引き当てたのだと思います。光学設計に限らず、ものづくりは「こちらを立たせればアチラが立たず」の連続。特にこのサイズバランスを実現するために対応が難しかったのかな?と思いました。ちなみに31mm時です。
■絞り優先AE(F8 1/100秒) ISO400 WB:オート

撮れば撮るほど写りが良い意味で気になってきたので、すっぴんを見たくなりRAWデータをLrCに読ませてみると…林の中で木漏れ日を見上げるようなシーンで周辺部の明暗比が大きい箇所にはフリンジが出ていた。

が、それとて程度は悪くなくカメラJPEGではほぼ完璧に補正されている。歪曲についてもビックリするほどではなく、補正ナシだと四隅がケラれて…みたいなこともなかった。

歪曲補正は完璧…の感じを出したくて撮りましたが、オリジナルデータでは立体感がエグくて本当に驚きました。21mm画角で平面撮ってここまで立体的に描写するレンズって、大概どれも高いんだよね。

18-40mmというズームレンジについても、歴史を振り返ってみれば超ワイドのズームレンズが18-35mmの時代もあったので、そこまで珍しいものでもなさそうだ。撮影条件やズーム位置を問わず、安定して見事な写りだったことはもちろんだが、最大の驚きはその性能をこのサイズに凝縮していること。

超ワイドズームまでは必要ないけど、そこそこなワイドズームレンズが欲しい場合の選択肢としても良さそうだ。