2006年3月登場。現行のフォクトレンダー VMレンズでは2番目に歴史のある製品です。レンズ名称にある『P』印はおそらく「パンケーキ」をアピールするためのものだと思います。COLOR-SKOPAR 21mm F4 Pも『P』印付きで薄い(25.4mm)からね。でもHELIAR 40mm F2.8 Asphericalは21.2mmしかないのにP無し…識者に集ってもらってコシナ座談会を開催する必要がありそうです。

■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート

コシナ Voigtlander COLOR-SKOPAR 35mmF2.5 P Ⅱ 主な仕様

●焦点距離:35mm
●最短撮影距離:0.7m
●最大撮影倍率:1:2.5
●レンズ構成:5群7枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:12枚
●フィルターサイズ:39mm
●大きさ・重さ:φ55.0×23.0mm・134g
●付属品:-

135gポッチでありながら「心地良い重量感」を感じさせる不思議。

ヘリコイドアダプタを最大繰り出しにして、レンズ側も至近端でパチリ。ワーキングディスタンスは20cmくらい。こういう使い方できるとすごく自由な感じがあって楽しい。結構シャープでしょ?
■絞りF2.5 1/500秒 プラス0.3露出補正 ISO100 WB:オート

「Ⅱ」というからにはベースになったレンズがあるようで…。トヨタ調べでは1999年登場のCOLOR-SKOPAR 35mmF2.5(P-typeとC-Typeがある)というL39マウント用レンズのレンズ構成とスペックが近似していることを発見。

ただし本レンズでは最後面のレンズが異常部分分散ガラスになっていますね。それによってどんな効果があるのかは分かりませんが、何かしらが凄くなっていそうな雰囲気があります。

気持ち絞ってF2.8でパチリ。高感度でのモノクロとの相性がスゲー良くて「これは、ダメなヤツだ…」ってなりました。近々買うレンズの筆頭候補に躍り出た瞬間でもあります。まだ買ってないんだけど。
■絞りF2.8 1/60秒 マイナス0.7露出補正 ISO250 WB:オート

手にすると驚きの軽さにビックリ! ってことはなく、小さいワリには心地良い重量感。なのにスペックを確認すると134gしかありません。

ちなみに、体感では先日紹介したCOLOR-SKOPAR 50mmF2.2(135g)の方が明らかに軽く感じました。よって「ほぼ同じ重さ」はどうやっても信じられませんでした。

レンズの質感はいつものコシナ。2006年登場だからといって、そこは不変。このビルドクオリティで実売が3万円台ってのは、令和の衝撃と言っても過言ではありません。

思いのほかパキッと写ります。周辺もそれほど落ちないし…。

小さくて軽いレンズで写りもキモチイイとなると、移動はほぼスキップです。この画像の撮影時はまだLUMIX S9発表前のタイミングだったのだけど、S9みたいなフラットなカメラに溶接したい感が非常に高まりました。でも私、EVFは欲しい派です。
■絞りF2.8と4.0の間 1/1250秒 マイナス0.3露出補正 ISO250 WB:オート

撮ってみると現代的なパキッとした写りにまずビックリ。
「パキッとした写り」といっても、遠景で山とかを開放絞りで撮ると最新のバカでかいレンズと比べて多少のモヤ感があることは事実です。

が、このサイズでこんなに写るの!? っていう驚きにヤられます(1敗目)。撮りはじめは何となく保険というか気分的にF2.8とかF4を選びがちでしたが、絞り開放から全然イケました。最周辺部はさすがに話は別よ。

周辺光量は、思ったより落ちないタイプ。きっと良い感じに落ちるタイプだろうと踏んでいたので、正直に言えば少し裏切られたキモチではありましたが、次の瞬間には「あら、アナタそんなに頑張れるの?」と可愛く見えてしまう、通称 ”手のひら返し” を華麗にキメたことは事実であります。

ま、絵作りや撮り方を工夫すればソコソコ落とせますが、事実としてナカナカの性能にヤられました(2敗目)。

チューリップ撮って「こんなに写るの?」って驚いて、そっちがその気ならとイジワルしたのがコチラになります。前ボケ・後ボケ・周辺部含めて全然嫌な感じがない…。これは!!!ってなりました。ドエライ素直。
■絞りF2.5 1/200秒 プラス0.7露出補正 ISO100 WB:オート

最短70cmと、現代っ子にとってはさすがにスパルタンな仕様。よって至近側はそれなりなのかな? と予想していました。が、アダプタ込での最至近で撮ってもキレッキレ。流石にそういう状況で、周辺部でピント合わせちゃうと甘さはあるけれど、そんな無体を働かなければ相当良い感じ。

引きの絵での硬質な感じから、ボケ味はそこまで期待してなかったのだけれども、予想に反して自然なボケ味で思わず前後不覚となりお花攻めに1時間ほど費やしました(3敗目)。あと、寄ってもクリアな印象が損なわれないってのは本当に良いね。気持ち良い描写です。

ちなみに筆者の持つヘリコイドアダプタ(焦点工房のLM-LSL M Ⅱ)を全伸ばしした状態での最至近はレンズ先端から約20cm。ボディの指標までで言えば約26cm程度でした。これだけ寄れれば35mmレンズとしてもかなりイケる部類だと思います。

コシナ=フォクトレンダー沼への「最初の一歩」として推奨します!

レンズの素の実力である最短撮影距離の0.7mだとこんな感じの距離感でっせ。
■絞りF2.5 1/125秒 プラス2.3露出補正 ISO400 WB:オート

全体的には2006年に登場したレンズと思えないほどの高性能っぷりを前にトヨタは屈服。シビアに言えば周辺部までカッチリってワケじゃないし、特に斜め方向に奥行きが出るような撮り方をした時の、ピント位置より大きく手前側の周辺部にハイライトやコントラストの高いモノがあると、美しくはない感じに写る場合があります。

しかし、大変に些細なことです。逆に言えば、そういうシビアな事がしたくなるくらいの仕事っぷりでありながら、お手頃価格を維持しているから不思議。昨今の資材高騰もあってこの先は心配ですが、ユーザーとしてはとても有り難くもあります。

歪曲はとても軽微な樽型。ほぼナシと言っても良いでしょう。35mmレンズ使うといつも「難しい」って思い出ばかりが先に来るのだけど、本レンズは「楽しい!」って思い出ばかり。
■絞りF2.8と4.0の間 1/160秒 マイナス0.3露出補正 ISO160 WB:オート

余計なことを言えば、規模や構造(会社と製品の話)が違うので同列に語ってしまうことは本来不適切ですが、それでも感情的な話をすれば「何であそこの製品は大したクオリティではないのに、あんなに高いんだ?」みたいな気持ちは出てくるよね。

ともあれ、安定した性能があるし、素直で扱いやすい特性なのでマニュアルレンズ入門編(フォクトレンダー入門でもアリ)としても結構良いのでは? と思いました。