■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート
コシナ ZEISS Distagon T*1.4/35 ZM 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算35mm相当
●最短撮影距離:0.7m
●レンズ構成:7群10枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:49mm
●大きさ・重さ:φ60.6×65.2mm・381g
●付属品:-
コシナ=ツァイスのメーカー推奨「入門レンズ」
同じor近いスペックでZMとVMを並べると、ZMの方が比較的お高い設定となっているので、本レンズ登場時には「さすがはツアイス」の感がありつつも、ライカ純正レンズと比較するとかなり廉価な設定に「強力なプライス」と心を揺さぶられたものだ。
登場時はMマウント互換のシステム持ってなかったけど、昭和生まれのコンタックス育ちとしてはついつい欲しくなっちゃったワケです。
それが、昨今の昇竜の如き値段上昇の影響を受けない頑固な価格設定によって、相対的に「あれ、ひょっとしてお手頃かも?」みたいな感覚的麻痺が生じてるのが面白い。
ちょっと寂しいのは、ZM最新レンズは2015年発売の本レンズということ。とはいえ、良いモノはいつの時代でも楽しめると思うので紹介したいと思います。
絶賛発売中のカメラマンリターンズ#11で連載中の「トヨ魂」でも軽く触れていますが、「コシナの考える”ようこそ”のツアイスレンズ(ZM)って何?」 とコシナさんに聞いてみたところ、オススメされたレンズのひとつです。
滲み出る質感は「これぞ20万円超」。どこぞのソレは反省されたし。
VM(フォクトレンダー)レンズとZM(ツアイス)レンズでは絞りリングのステップが異なります。フォクトレンダーは1/2段ステップ、ツアイスは1/3段です。使用感としてはZMの方が露出を追い込む感じがあって、VMはもっと気楽な感じ。絞りリングの操作感もZMはやや硬質。
レンズの質感は素晴らしく、溢れ出るオーラから「我は20万円超である」という雰囲気をひしひしと感じます。こういう良いモノ感のあるレンズって眺めているだけでも楽しく、例えば「ディスタゴン」という名前の意味や歴史を調べる気にもなるので、一粒で5度は美味しいと思います。
スペック的には381gだけど、それ以上にズシリとした重さを感じるので、例えばグリップのないLUMIX S9などと組み合わせるよりグリップのある機体と組み合わせた方がバランスが良いというか、使いやすいようには感じました。ちなみに、バッグに入れていてもシッカリ重いです。
結論としては、ドチャクソに写る。以上。
レトロフォーカスってことも関係しているのか、撮影距離や絞り値を問わず素晴らしい描写力。「周辺までキリリと鋭い切れ味に美しいボケ」…という月並みな感想しか出てこないのだけど、ちょっとクールな表現がフォクトレンダーとの違いを如実に表現しているようにも見えるし、相当性能が出ているのか、ピント位置から一気にボケる感じがあって立体感がエゲツナイ。
写真だけ見てると何ミリで撮ったのか分からない感があって、ディスタゴンは特別である、とアピールしているようにも思えました。
レンズの素の近接性は最短70cmとため息が出そうなのだけれど、繰り出し量6mmのヘリコイドアダプターで最大繰り出しにするとレンズ先端から約17cm(指標まで約26cm)まで接近することが出来る。
ということで、万能性という観点ではFE 35mmF1.4 GMやRF35mmF1.4L VCMと同等の近接性が得られるので、ヘリコイドアダプターを持っておくと安心でしょう。それに電気接点持ってないから、ちゃんとメンテすれば人間より長生きできると思うので、自身亡き後には形見としても役目を担ってくれるでしょう。
35㎜だけで8本! でも、まだ出しそうな予感…。
撮った絵を見て感動のあるレンズでした。
どのカットもすごくクリアで気持ち良い描写に見えると思いますが、これだけ写ると普段見ている景色が違ったように見えてくるから、「あの場所をこのレンズで覗くとどんなふうに写るかな?」みたいに、ご近所の再履修をする必要が生じるわけです。
実に恐ろしいですね?
何が怖いって、コシナにはVMの35mmレンズが現行品だけでも6本。ツアイスブランドに本レンズを含めて2本。合計の8本の35mmレンズがあるってコト。
他のレンズからスタートしてもディスタゴンは気になるし、ディスタゴンから始めてもノクトンのF1.2を無視することは出来ないし、性能面でもアポランターはやはり体験しておきたい。日常使い用にウルトロンやカラースコパーも気になる。
…みたいな感じで走り出したが最後、ゴールは遠ざかるばかり。特徴を掴んだ頃には他のレンズが気になり、新たに入手し写りの違いにニヤリとするなり強制的に再履修が始まるループに突入します。そうやって増殖していくと「どのシーンにこのレンズは合うのか?」という幸せな悩みに日々沈んでいく未来が待っています。
実際に、カメラマンリターンズの座談会でコシナのS氏は「8本で足りますか?」と笑っていたので、コシナはまだまだ35mmを追加してくる可能性が大。ZMレンズが足踏みしている状況は少し寂しいけれども、いまはまだ力(貯金)を蓄える時だというコシナなりの良心かも知れません。