すでにレビュー記事にも書いたが、PENTAX 17を実際に使ってみて、ゾーンフォーカスの使いにくさが気になった。そのゾーンフォーカスの使いこなし方を今回は考えてみた。

段数が細かい!? PENTAX 17のゾーンフォーカス

そもそもゾーンフォーカスはコンパクトカメラのAF化以前に大流行したピント合わせの方式で、ピントが合う範囲を3〜4つのゾーンに分割、撮影者が被写体までの距離に合うゾーンを選びピントを合わせる。

ゾーンが遠、中、近の3つだけなら、初心者でも迷うことなくゾーンが選べるが、PENTAX 17のゾーンは全部で6段。とにかく段数が多すぎて、とっさに最適なゾーンが選べない。

さらに各ゾーンはアイコンで表示されるが、なかでも人のシルエットを用いた3つのゾーンのアイコンが似通っていることも問題だ。

ひと目で区別が付かないし、アイコンの間隔が狭いので境目も分かりにくい。ゾーンフォーカス本来のコンセプト無視したこのような仕様を 果たしてゾーンフォーカスと呼んで良いのだろうか?

PENTAX 17のゾーンフォーカスはで6段。段数が多いだけでなく人のシルエットを用いたアイコンが3つもあるので、どのゾーンを選べば良いか判断に迷う。それだけでなくアイコンの間隔の狭さも視認性を妨げている。

こちらはオリンパスXA2のゾーンフォーカス。ゾーンの段数は、遠、中、近の3段だけなので、初心者でも迷わず選べる。これがゾーンフォーカス本来の姿!?。

目測式として使おうとしたけれど…

そこで私が思い付いたのは、ゾーンフォーカス式ではなく目測式として使うこと。だが実際に使ってみると、こんどは距離目盛りの見にくさに苦労するはめに---

PENTAX 17の距離目盛りはレンズ下部に付いているので、これを見るためにはボディ底部を上に向ける必要がある。だがPENTAX 17の場合、ネックストラップを付け首から提げた状態でカメラを上に向けると数字の天地が逆になってしまう。

それだけでなくメートルとフィートの表示が横に並んだデザインも不親切。∞マークの後ろに小さく表示されたmとftの文字を見ないと区別が付かないのだ。

本来なら輸出国に合わせてメートルあるいはフィート表記の2種類の商品を用意すべきだが、せめて表記の色を変えるくらいの心遣いはできなかったものだろうか。 

カメラを首から提げた状態で目盛りを確認しようとすると天地が逆になるうえ、メートルとフィート表示の文字色が同じなので区別が付かない。さらにPENTAX 17のピント合わせはAFコンパクトカメラのレンズ繰り出し機構の流用なので、この目盛りに表記された距離しかピント位置の選択は不可。中間を選んでも近い方の距離に設定されてしまう。

何か良い解決方法はないかと取扱説明書のページをめくっていたら、「撮影距離を設定する」ページに記載されていたピントが合う範囲を示す表に目が止まった。

「いつでもこの表が見られれば、ゾーン選びに苦労しないのでは?」そこで閃いたのが、これを小さなカードにプリントして裏ブタのメモホルダーに入れることだ。

「我ながら良いアイデア!!」。自画自賛で申し訳ないが、これがあれば、もうゾーンフォーカスの使いにくさに泣くことはない。

便利さを独り占めするのは気が引けるので、カメラの現物を見ずに早々と予約して発売日にPENTAX 17を手に入れた皆さんに差し上げたところ、これが大好評。なかでもフィルムカメラ歴が長い人ほど、この良さを理解してくれるのは嬉しい限りだ。

PENTAX 17の取扱説明書に記載された「撮影距離を設定する」ページに記載された各ゾーンのピントが合う範囲。説明書に記載はないが、この表はレンズ開放時(F3.5)のもの。実際の撮影では絞りを絞ることが多いので、被写界深度はさらに深くなる。

ゾーンフォーカスの段数は実は4段!! 

この表を作ってみて、実はもうひとつ重要な事実に気が付いた。それはPENTAX 17のゾーンフォーカスの本当の段数は4段であること。

使用説明書に記載されたゾーンは6段だが各ゾーンに割り当てられた撮影距離が途切れることなく連続しているのは1メートルから∞遠まで。具体的には至近距離、近距離、中距離、遠距離の4つゾーンがこれに相当し、これらのゾーンが少しずつオーバーラップしながら1メートル以遠の距離をカバーしている。

これに対しテーブルフォトと至近距離の間には46センチ、さらにマクロとテーブルフォトの間には21センチものピントが合わない空白地帯が存在する。それだけでなくテーブルフォトを選んだときの被写界深度は7センチ、マクロに至ってはわずか2センチしかない。

早い話が、被写界深度をピント合わせの拠り所とするゾーンフォーカスにピントが合わせられない空白地帯があったり、極端に被写界深度が浅い条件に対応させること自体に無理がある。

このほかテーブルフォトとマクロ使用時はファインダーのパララックスという大きな問題も発生する。いずれにしても、この2つのゾーンを使いこなすにはそれなりの経験と技術が必要で、ナメて掛かると高価なフィルムを無駄にするはめになる。

ここで私は声を大にして言いたい。「マクロとテーブルフォトをゾーンフォーカスの段数に含めてしまったことが、そもそもの誤りである。」

最初に私は「ゾーンの段数が多すぎて使いにくい」と書いたが、マクロとテーブルフォトを省いて4段と解釈すれば、それほど目くじらを立てずに済むのではないだろうか。

私が自作した各ゾーンに対するピント位置の早見表。見やすくするため説明書の表から必要な情報だけを抽出。使用頻度が高いAUTO時に設定されるパンフォーカスの被写界深度も加えてある。各ゾーンが対応する距離の数値を見ると、意外と幅が広いことに気付くだろう。これだけ範囲が広ければ目測を誤ることはない。いずれにしてもこの表を見れば、PENTAX 17のゾーンフォーカスが4段であることは一目瞭然。テーブルフォトと至近距離はオマケの機能と割り切ると気持ちが楽になる。

この早見表をプリントしてメモホルダーに入れておけば、ゾーンフォーカスが格段に使いやすくなる。うまい具合にメモホルダーはファインダーアイピースの真下にあるので、特に意識しなくてもカメラを構える前に必ず眼に入る。

ゾーン選びに悩んだらAUTOモード

それから、もうひとつ注目したいはAUTOモード時に自動的に設定されるパンフォーカス機能。このときピント位置は1.7メートルに固定。プログラムAEは開放から1段ほど絞ったF値からスタートするので、1メートル以上被写体から離れれば∞遠までシャープに写る。 

また絞りを開放にできないと被写界深度の浅い撮影は無理と思われるかも知れないが、PENTAX 17のレンズは焦点距離が短いので絞り開放にしても被写界深度は思ったほど浅くならない。

「BOKEHモードに過大な期待を抱くとがっかりする」。こうと書くと語弊があるが、AUTOとBOKEHの差は意外と少ないというのが私の見解だ。

ただしAUTOモード時はストロボオフが選択できない。暗い場所だとストロボが自動発光してしまうので、この点には注意が必要だ。それからゾーンを選ぶのは面倒だし、チャンス優先のストリートスナップ派を目指すなら、AUTOモードに徹する選択肢もある。