ソニー FE 24-50mm F2.8 G(SEL2450G) 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算24-50mm相当
●最短撮影距離:0.19(W)-0.30(T) (AF)/0.18(W)-0.29(T) (MF)
●最大撮影倍率:0.30 (AF)/0.33 (MF)
●レンズ構成:13群16枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ74.8×92.3mm・440g
●付属品:フード
“G”レンズゆえにα9 Ⅲの最高約120コマ/秒連写にも対応
本レンズはEF24-70mmF2.8 L(1型ね)などの様にテレ端で最も全長が短く、ワイド端で最も長くなるのだが、フード装着状態でも最短で約120mm、最長状態でも全長約140mmとかなりコンパクト。そして重さについても約440gと、F2.8ズームとしては規格外の軽さだ。
こういうレンズが出てくると、システムサイズが大きくなることを敬遠してフルサイズ以外のフォーマット機を選択していたユーザーの食指も動くというもの。ナンダカンダ言ってもフルサイズ機は楽しいのだ。コンパクトなフルサイズシステムも持っておきたい、というのが人の心だろう。
「G」を冠するレンズらしく、ブリージング補正機能やα9 Ⅲの最高約120コマ/秒連写にも対応。純正の強みを遺憾なく発揮出来る標準ズームとなってい。
ちなみに本レンズはCP+2024直前に発表され、当初5月17日発売とアナウンスされていたが、約1ヶ月前倒しで発売されることとなった。
「オッサンゆえの思い込み」で戸惑うことも
手にしてみると、本当にフルサイズ用のF2.8ズームなのか不安になるサイズ感。何しろ同社APS-C用のE16-55mmF2.8Gよりも軽量かつコンパクトなのだ。ややもすると感覚が狂うのが、それでも嬉しいことは嬉しい。
AFは「ソニー」って感じ全開の無音で迅速。スッと合う。
仮に初めて触れる機材が最新世代のソニーのAFだった場合、将来が心配になります。コレを基準というか模範的な性能だと認識してしまうと…これ以上は危険ですね。
フォーカスリングは非常にスムースだが操作トルクが軽く、MFは少しやり難い印象。とは言えAFが十分に良いので問題はないかと。
それよりも気になったのは、前述したズーミング状態。
「伸ばすとワイド」と何度も心の中で唱えておいても、外観の状態を頼りにズーム操作すると意図しない画角になってしまうことが何度もあった。…でもね、そんなの若人であればスンナリ対応出来そうだよね。
最近の高性能なズームレンズらしく、写りは良い。逆光シーンでは比較的フレアとゴーストが出やすいが、画面内のクリアさは保たれているし、コントラストが大幅に下がることもない。やや演出的にも見えるので、このサイズ感を実現するためのトレードオフというよりは、狙った性格という気がしてならない。というのも、逆光シーンであることの説明にも効果的に使えるからだ。
全体的には、画面中央付近のシャープネスが見事で気持ち良い解像感がある。至近端ではやや甘くなるが。
「G」を冠するとはいえ“ちいサイズ”のF2.8ズームなので、口径食でグルグルボケに見えるんじゃないの? と邪推していたけれど、実際には筆者にとっては全く気にならないレベル。というか、キレイにボケている。コンパクトなズームレンズとしては…みたいな前置きが要らないレベルで頑張っている。
とはいえ周辺部までカッチリ派にとっては、特にテレ側での開放絞りはやや物足りなく感じる場合もあると思われる。が、それも1段絞れば十分な解像感になるし、筆者としてはあらゆる条件で良く写るレンズだ、という感想だった。
ボディ側からの設定では歪曲補正は常にONとなり、歪曲はキレイに補正されている。が、RAWデータを見てみると現状の Lightroom Classic ではお手本のような樽型を楽しめ、補正技術の高さを味わうことが出来る。スゴイ技術だ。
MTF曲線から「初代のFE 24-70mmF2.8 GMに匹敵する」というアピールもあったが、初代を何本かテストした経験から言えば、筆者的には本レンズの方が写りは同等以上、というのが正直な感想だ。初代は良いレンズだが製造が難しいのか、片ボケの個体に何度か出会っているし、なによりデカくて重い。
テレ側こそ50mm止まりだけれども、サイズは約半分で少なくとも同等の写りがあることに驚きを禁じ得ない。
買わない理由が見つからない? ソニー、やっぱスゲーーや!
小さく軽く良く写る。さらにAFも素晴らしい。言葉にすると無双状態だが、実際問題として控えめに評価しても合理的というか隙のない性能だ。
筆者はへそ曲がりなので「サイズを盾に、買わない理由を宣うユーザーを理詰めで屈服させてくるような1本」と評価したいと思う。
微妙な表現であることは理解しているが、実に巧妙というか老獪な製品企画だと感じ、GMシリーズとGシリーズの棲み分けも明瞭になりつつある。
カメラバッグへの収納性も申し分なく、α7CRと組み合わせると重い機材の呪縛から解き放たれたような気持ちになり、巨大な標準ズームレンズ特有の「お家で画像チェックしている時だけ楽しい」とはならなかったことが印象的だった。
執筆時点で、本レンズは供給に時間がかかる旨の告知があったが、それは明るいけれどコンパクトなズームレンズに対する市場の期待やニーズを上手く掴んでいることの証左だろう。ひょっとすると高性能だが巨大なレンズに対する疲れもあるのかも知れない。
ライバルは2022年10月末に発売されたタムロンの20-40mmF/2.8 Di Ⅲ VXD(Model A062)だろう。こちらも良いレンズで、さらにコンパクトな仕上がりだ。しかも本レンズの40%OFFくらいの予算で手に入るので悩ましい。
本レンズと同じコンセプトと思しき「FE 16-25mm F2.8 G」も発表され、ソニーの開発力を見せつけられる思いだが、様々なスペックを模索する姿勢と、実際に展開してくる姿勢はとても頼もしく感じる。