シグマから開放F1.4の対角魚眼レンズが登場した。民生用フルサイズフォーマットに対応する交換レンズとしては初となるスペックとのこと。また、開放F1.4のレンズとしては世界で最も広角のレンズとなる。

シグマ 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art Eマウント 主な仕様

●焦点距離:15mm
●最短撮影距離:0.385m
●最大撮影倍率:1:16
●レンズ構成:15群21枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:-
●大きさ・重さ:φ104×155.9mm・1360g
●付属品:ケース 三脚座 プロテクティブカバー ガイドプレート ショルダーストラップ

デカい、重い、硬い、強い…ここまでくると潔いかも。

例によってLマウントとソニーEマウントが用意され、AFにはリニアモーターHLAが採用されている。全長は脅威の157.9mm、最大径も104mmと、記憶にある魚眼レンズのイメージからは大きくかけ離れたサイズ感。重量についても1360gに達する。

先日紹介した同社の500mmF5.6 DG DN OS | Sportsよりも10g軽いが、体感では本レンズの方がズシリと重く感じられる。三脚座の動作はスムースだが、手持ち撮影では三脚座の角が手のひらに突き刺さって結構痛い。

AFはリニアモーターHLA採用が効いていて非常に軽快。AFの止め精度も申し分ない。
なんというか、他に比べようがないレンズなのでデカい重い、硬い、強いという感想しか出てこなかったが、目的がハッキリしていて良い。
付属のレンズキャップの造りが良く、ガチャガチャとイジっているだけでも楽しい。

至近端から5cm程度の距離。遠距離でのギンギンなシャープネスと近距離での写りにはギャップがあるが、それもまた面白い。超新星爆発みたいなイメージに出来るか試行錯誤してみた。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F1.4 1/1600秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO100

さっすがシグマ。従来の「魚眼レンズ」とは一線を画す高画質!

魚眼感が少し曖昧になるような撮り方をしてみました。モクモクの曇天だと空がもっといい感じになったと思うけれども、これはこれで不穏な感じが出ていて良いかと。近距離だと少し周辺光量が落ちてるかな?
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F1.4 1/3200秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ISO100

魚眼レンズとは思えないほどクリアでキレの良い画像が得られる。至近側では甘さが出てくるが、それでも一般的な魚眼レンズ、例えばシグマには15mmF2.8の対角魚眼レンズがあり、筆者も過去に使っていたが、こちらのレンズよりも写りは良かった。

あまりにも破天荒な描写なので、イマジネーションに任せて色々無理もさせたくなるけれど、撮影距離30cm以内の近距離かつ周辺部に撮影対象を配置させると球面収差のような滲みがあるので「まぁそうだよね」と現実に引き戻される。

絞り開放かつ至近端でパチリ。この条件だとしっかり滲みが分かる。でも嫌な感じはありません。特徴を出すためにこういう撮り方していますが、かつて無い表現だと思うのよね。F2.8〜4.0くらいで満足出来るキレが得られますが、背景がボケてる方が楽しそうだし、寄れることが可能性に繋がっている点が大変に素晴らしいと思います。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F1.4 1/4000秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO100

それでも魚眼レンズとは思えないような、深度の浅い、背景との分離感のある描写が面白い。

本来の使い方はやはり星景だろう。撮影距離が70cm以上離れていれば目の覚めるようなキレを楽しめる。この描写は唯一無二のものだ。

驚いたのは開放絞りであっても、周辺部に明暗比の大きな対象が写り込んだ場合に色収差がほぼ無いこと。試しに補正ナシでも撮ってみたが、その程度は非常に軽微で驚かされた。
兎に角ド級の性能であり、これを求めるユーザーにとっては必須のレンズとなりそうだ。

収差補正比較 (カコミ部分を拡大)左が補正ありで右が補正ナシ。

本文に反して作例はちょいと絞っていますが、色々イジワルして撮った中で「お、色ズレてる」ってなったのは2シーンだけで、絞ったカットのみ薄っすらと確認できました。まあ、この写真がトヨタがテストした中でのワーストになります。この条件でだけ僅かに色がズレましたが、基本的に色ズレしません。光線状態やピント位置を工夫&イジワルしてやっとこさ時々出る、程度です。色収差などは普段補正適用状態で撮ると思うので、皆さんが遭遇する機会はほぼないと思います。
■絞り優先AE(F4 1/100秒) マイナス2.3露出補正 WB:オート ISO100

とはいえ、お楽しみは…星景、オーロラファンにお譲りいたしますー。

いかにも、といった魚眼らしい使い方もしています。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F1.4 1/160秒) プラス0.3露出補正 WB:オート ISO100

体力測定時の1枚。実際に撮るなら絞って撮りますが、解像感だけで言えば開放でもこれまでの魚眼レンズ以上にシャープ。このレベルは旧オリンパスのM.ZUIKO ED 8mmF1.8 Fisheye PROだけだし、それ以上の性能になっています。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F1.4 1/2500秒) プラス1.3露出補正 WB:オート ISO100

画像見てても異次元のシャープネスなので、まるでCGというか、自分がゲームの世界に居るような感覚になってきます。感想が「凄い」しか出てきません。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F3.2 1/80秒) プラス2.3露出補正 WB:オート ISO100

スペックを見て初めに思ったのは「これはオーロラや星景用だな」だった。というのも、筆者も過去にスウェーデンでオーロラを撮ってみたことがあるのだけれど、F1.4のレンズが必須となる。

星景では500ルールや200ルールという星を点として移したい場合に500÷焦点距離=シャッタ秒時という目安の式があり、露光秒数を延長すると星を点として捉えたい欲求を叶えられない場合がある。特に空気のキレイなところだと大気のチリのようなものによる拡散が少ないため星がシャープに写り、さらにその判断はシビアになる。

実際に筆者は2016年にオーロラを撮影した際、(フジ)XF16mmF1.4で撮影した時には200ルールを適用し、換算24mmということでF1.4 / 8秒露光で撮影していたが、8秒では星がブレて見えたので少し感度設定を妥協して結局6秒で撮影し直した。

絞っているのでキレッキレ。アイデア勝負って感じで色々撮っていました。でも、魚眼は難しい…。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) マイナス2.3露出補正 WB:オート ISO100

太陽入れ込みましたが、何も起こりません。他の魚眼レンズでも逆光でこれと言った不都合はなかったような気もします。周辺でもα7CRの60MPセンサーに負けてないというか、シッカリ結像出来ててCGみたい。呆れるほどの光学性能って感じ。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F4.0 1/640秒) プラス0.7露出補正 WB:オート ISO100

当時よりもさらに高解像なシステムになっているのでコダワリたい人はもっとシビアな撮影条件となるだろう。それに画質的に欲張りたい場合はISO1600以下を使いたい。
そういった願望を叶えるにはF2.0やF2.8のレンズでは役不足なのだ。

今後、このレンズによって今までにないような鮮鋭感の星景やオーロラの写真に出会えるのかと思うと楽しみだ。

星景とかは本職の方にお任せして、魚眼をスナップ運用してみたらこんな感じ、というのが伝われば本望というか頑張った甲斐があったと思います。こんな激しい性能じゃなくて良いので軽い方の魚眼も欲しいね。
■ソニー α7CR 絞り優先AE(F5.6 1/30秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ISO250