2022年11月25日の発売日に入手したかったのですが、当日は丸一日ロケ。結局、11月27日のお昼前に受け取りました。予備バッテリーは事前に入手しておいたので、元箱ごとドンケのF-1Xに詰めたままシグマの18-50mm F2.8 DC DNの作例撮影に、まっさらのX-T5を投入したことを良く覚えています。そこから1年と4ヶ月間をX-T5と過ごしてみて、の感想にしばしお付き合いください。

それにしても「軽微な不具合の修整」、多すぎじゃね?

インプレ時の別カットになります。X-Pro2などと比べてACROSを意図通りの仕上げにすることが難しく感じていたX-T5だけど、WBを固定することで大分特性の把握ができるようになりました。悩んでいる人はお試しあれ。
■フォクトレンダー NOKTON 35mmF0.9 Aspherical 絞り優先AE(F0.9 1/16,000秒) マイナス0.3露出補正 ISO250 WB:晴天 ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルター

X-T5が自分のカメラとなってから、の第一印象は、ぶっちゃけ「バグだらけ」でした。具体的には、◯起動直後にメニュー画面からマイメニューに入ると著しく反応が悪くなる◯Camera Remoteとの接続性が悪い(現在はX appになり解消されました)◯連続撮影を繰り返すと表示が崩れる
etc…とったものです。

約2週間後に公開されたVer.1.01を適用するまでは四六時中ハングアップ等していた記憶が強く、印象悪かったです。
早々にX-H2Sへの買い替えをワリとマジで何度も考えましたが、H2シリーズはグリップ形状が手に合わず、グリップを握り締める度に「あと少しだけでも手に合えば…」と何度天を仰いだか分かりません。

調子がある程度分かってきたので、過去にやっていたシリーズを再開させようかと画策中です。っていう遊び心が芽生えるカメラなのはX-T5の良いところ。サイズ感の魔力はあるよね。もっと大きいカメラだと気合が要るのだけど、T5なら気軽にトライできる雰囲気がある。ちなみにこれは路面標識で、「横断歩道あり」。
■フォクトレンダー COLOR-SKOPAR 18mmF2.8 Aspherical 絞り優先AE(F8.0 1/8秒) ISO160 WB:晴天 ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルター

そんなウジウジしている真っ只中に、北海道・十勝地方でマイナス18℃の環境下(車の外気温計の数値)で1時間ほど特に防寒のケアをすることなく撮影する機会がありました。以前使っていたX-H1もマイナス15℃環境で普通に使えたので、X-T5についても「まぁ大丈夫だろう」とは予想していましたが実際に何事もなく動いてくれたので、少し株を上げました。

過去にもニコンD4やD800でも似たような撮影をこなしているのですが、何のケアもなく使うと、ニコンの上位機ですらミラーやシャッター等の動作不良が発生するのです。こうしたシビアなコンディションで使ってみると「可動部の少ないミラーレスは耐低温性に優れているのだな」と改めて実感できます。

「スモールリグのグリップ」導入でホールディングは盤石

L型ブラケットはウッドグリップだけど、L型グリップはラバーグリップです。製品ページはこちらに。

その後、暫くはX-T5を使う機会が少なく稼働率は低調でしたが、Ver.1.03が公開された2023年2月中旬以降から徐々に稼働率が上がり始めます。

いざシッカリと使い始めると、程よいボディサイズが心地良く、特にXF35mmF1.4Rのような軽量なレンズとの組み合わせでウロウロしていると「もうコレでカメラ選びは完結したかも」と思えちゃうほどに撮影が楽しく、お気に入りになりました。

ただ、XF16-55mmF2.8 R LM WRのようなXシリーズとしては大柄なレンズとの組み合わせでは、グリップサイズの小ささが気になり始めました。
で、その対策としてスモールリグのグリップを5月に購入。ファームウェアがメジャーアップデート(Ver.2.00)されたのもこの頃で、完成した(やっと信頼できるカメラになった)と感じました。

操作頻度の高い露出補正ダイヤル。スレ感はいつの間にか解消されました。アナログダイヤル自体の質感と操作性は円錐台ダイヤルのX-T4などの方が良いね。円錐型のT5のほうが美しくは見えるけれども。

ところが、時期を同じくしてアナログダイヤルの操作感がザラザラというか、何か細かいものを噛み込んだような感触になり、大いに萎える事件が…。1ヶ月ほどは失意の底に沈みましたが、いつの間にかザラつきはほぼ無くなりました…原因は不明です。

カラースコパーの最短撮影距離での作例を撮ろうとアレコレやってた時の1枚。思想が強すぎるかも、ということで自重しました。個人的にはお気に入りの1枚。
■フォクトレンダー COLOR-SKOPAR 18mmF2.8 Aspherical 絞り優先AE(F2.8 1/140秒) プラス2.0露出補正 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

この頃はコシナレンズのインプレが連続してやってきたこともあり、MFの楽しさに改めて腰がシビレるほどのめり込み、特にNOKTON35mmF0.9ではインプレ用の作例撮影(採用されるのはせいぜい5~6カット)なのに5000ショット以上切っており、自分でも「熱に浮かされていた」と強く反省しています。

繰り返しになりますが、ボディがコンパクトなので程よいサイズのレンズと組み合わせた時に楽しさが爆発します。機動力というのは写真趣味においては、とても影響力のある性能のひとつである、と改めて気付かされた次第です。

データ容量、なにげに重いっすね。

3方向チルトを称賛していたけれど、S5使うようになってバリアングルに慣れちゃうと、動けばどっちでも良いや、と思うようにもなりにけり。X-T5の小さな不満のひとつが、このあと触れるけれどもデータのデカさ。
■フォクトレンダー NOKTON 35mmF0.9 Aspherical 絞り優先AE(F2.0 1/1250秒) マイナス0.7露出補正 ISO500 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

ちなみにトヨタの直近3000ショットから算出した1枚辺りのデータサイズの平均はJPEG(L / FINE)で22.5MB、RAWはロスレス圧縮記録していますが39.8MB、合計では1ショット辺り63MB程度でした。
参考までに45MP機の(ニコン)Z 8で撮影したデータ2000ショットでの平均値はJPEGが9MB(こちらはデフォルトのNORMAL設定です)、ロスレス圧縮RAWで平均31MB、合計で約40MBと結構違います。

同じくEOS R5での結果はJPEG(L / FINE)が平均14MB、RAW記録で46.2MB、合計60MBでした。
シーンや設定も異なるので単純に比較することはできませんが、それでも実績値としてニコンやキヤノンの方がデータはコンパクトであり、X-T5のデータ量の大きさが目立ちます。

「被写体認識:鳥」だとハシビロコウは上手く認識出来ず。これは任意選択でやってます。ワイド/トラッキングの安定感は基本的には悪くないけれども、暴れる時はまぁまぁ暴れるので、使い分けは必要かなぁ。ファームアップ前は動物撮るにはAF精度がイマイチ信頼できなかったけど、Ver.2.03以降はだいぶ良くなった感じはします。
■シグマ 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary 絞り優先AE(F6.3 1/250秒) ISO500 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード

AFレンズでもシッカリ撮り始めると、やはり気になるところが出てきました。たとえば望遠ズームで「動物認識」を駆使するような撮影条件では、微妙にピント精度が悪いコマが続いたり…。実はシグマ100-400mmF5-6.3 DG DN | Contemporaryの作例撮影では苦労しています。

こちらについては9月21日公開のVer.2.03でだいぶ良くなりましたが、真剣に撮影するとやはりまだ歩留まりが気になり「X-H2Sが必要なのでは?」という悪魔の囁きがトヨタの精神を蝕みます。

そんな折にX-H2Sで撮影する機会があったので、購入検討するつもりで真剣に取り組みました。が、やはりグリップが合わないことが決定的となり、無事にX-H2Sへの迷いは浄化されました。
グリップを握りしめている時間が長いから、どうしても手に合う合わない、は気になっちゃうのよ…。

ファームVer.2.00以降はまずまず安心しています!

あまり使えてなかったなー、と思いシグマの56mmを持ち出してパチリ。このレンズ、良いですぜ。ボディの程よいサイズ感にコンパクトなレンズを組み合わせた時の軽快感は格別。しかも撮影性能がソコソコ高いので、ストレスが少ない!
■シグマ 56mmF1.4 DC DN | Contemporary 絞り優先AE(F1.6 1/4700秒) マイナス0.7露出補正 ISO250 WB:晴天 ※フィルムシミュレーション:ACROS

そんなこんなで1年が過ぎ、ファームウェアもVer.2.10まで進化しています。まだ気になる動作は時折あるものの、1年前と比べて大きく改善されたと実感しています。

バグ以外は基本的に満足していますが、369万ドットのEVFについては時折ピントの山が掴みにくいと感じることがあり、年に数回ほどH2系の576万ドットEVFが恋しくなることがあります。

とは言え、サイズ感や程よい性能など「X-T5だからこそ」の魅力もあり、一概にどちらが良い、良かったという結論を下すことは出来ません。が、自分の撮影スタイル的にはX-T5が合っているように思います。

通常運用時のバッテリー消費は良く、筆者の撮り方ではメカシャッターメインで単写、パフォーマンスはエコノミーという条件で、満充電状態から撮影開始して丸1日、1000コマが楽に撮れます。
手ブレ補正についても強力でスナップ運用では満足しています。

なんだかんだ言っても、楽しいから使っていますー!

AFについては、ファームアップ毎に少しずつ改善していることが実感できています。トヨタ基準では、得手不得手を理解していれば信頼出来るAF性能です。
40MPもある利点として、クロップ時の心理的な障壁が低いという点も魅力です。というのも1.4倍クロップで約20MPでの記録ができ、さらにトリミングなどする余裕があるというのは自由度の観点からも有り難いものです。

不満点は不具合。ここまで「バグがー」と何度か記述していますが、不具合(不正な動作)は本当に多く、不具合やバグと思しき事象が起こると今後の快適な撮影の為にもそれが仕様なのか実力なのか、あるいは不具合なのかの切り分けと、回避策があるかどうかの確認をする必要があります。

正直に言えば、その度に「自分は一体何をやっているのだろう?」という気持ちになります。例えば失敗が絶対に許されないガチガチのシーンを、1台のみ(普通はサブ機も用意するけどね)のX-T5で安心して撮影を遂行できるか? と言われれば、この1年の実績から考えれば「否」となりますから。

こういう大型のレンズと組み合わせる時は、X-H2系やX-H1の方がやはりシックリ来ます。あと、こういう縦位置で縦方向となる繰り返しパターンの成分を持つ被写体に対するAFは、フジのカメラは本当に凄く苦手。こうしたクセを知っておくことが快適な運用に繋がります。言い方を変えると、使いこなす楽しみがあるっつーか。ま、詭弁だな。
■シグマ 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary 絞り優先AE(F6.3 1/400秒) マイナス0.7露出補正 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA/スタンダード

じゃ、なんで使ってるの? と言われれば、好きだから。それにVer.2.00以後はまずます信頼しています。とはいえ、レビュー用に例えばEOS R6 MarkⅡなどを使うと安定感がまるで違う事に眩しさを覚えます。

またファームウェアアップデートのリリースには「軽微な不具合を修正」という文言で纏められがちで、どの不具合が解消されたのかが分かりません。アップデート後に不具合が起きた操作を行い「あ、直ってる」とか「直ってない…」と確認する手間もあり、ユーザーフレンドリーではない姿勢には不満があります。

でもねー、筆者にとっては使っていて楽しいカメラであることに疑いの余地は無く、作例撮影含めて心地良く向き合っていられる時間の長いカメラです。