ソニー α7C Ⅱ 主なスペック
●35mmフルサイズ
●約3300万画素
●Eマウント
●ISO100~51200(※拡張ISO50/204800)
●約10コマ/秒
●0.39型OLED EVF 約235万9296ドット
●3.0型 103万6800ドット
●バリアングル タッチパネル
●SDXC(UHS-Ⅱ対応)
■発売日:2023年10月13日
■実勢価格:29万5900円(ボディ)
■大きさ:約124×71.1×63.4mm
■重さ:約514g
最新AIプロセッサー&ボディ内手ブレ補正も大幅強化
「フルサイズxコンパクト」というコンセプトでα7 Ⅲをベースに2020年に登場したα7Cだが、本機はα7 IVと同じ3300万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載。AIプロセッシングユニットと最新のBIONZ XRの組み合わせとなり、α7R Vで話題となったリアルタイム認識AFを本機でも楽しむことができる。
画素数やAFの強化はもちろん、ボディ内手ブレ補正についてもスペックに疑問を覚える最大5.0段の効果から体感出来る最大7.0段へと進化。動画性能についても4K60pやS-Cinetone搭載などかなり本気の仕様で、オールラウンダーとしての資質を高めている。
ボディの質感がグッと改善されチープさが影を潜めただけでなく、前ダイヤルの採用も嬉しいポイント。操作性は撮影快適性に直結するし、上位モデルのサブ機として使う場合に混乱しない。おそらくα7Cにはそういった市場の声が多数寄せられたのだろうと推測されるが、ここにキッチリ対応してきたソニーの姿勢を評価したい。
GUIもα7R Vやα6700などと同じ最新世代のものへと更新されていて、操作性が大きく改善されているし、グリップについても指掛かりが良くなった。その一方で、グリップ時の指とレンズとのクリアランスは僅少なので、レンズリリースボタンに触れてしまいやすいところが気になった。
α7Cの「絶望感」すら覚えたEVFの覗き心地は大きく改善された。が、正直に言えばまだ必要最低限の感がある。同じ236万ドットのEVFを持つフラットボディの機種と言えばフジのX-E4があるが、こちらの方が筆者の眼には覗き易い。
と、ここでEVFにこだわるならα7 IVという選択肢もあるだろう。しかしAF性能に大きな差があるし、α7C Ⅱに触れた後ではどこか古臭く感じてしまうことも事実。
ソニー機は陳腐化が早い(それだけ進化のスピードが速い)ので、鮮度があるうちに悩まず買うか、買ったらカメラボディの情報収集をしないことがオススメだ。
もちろん、画質・撮影性能的な観点で言えば、普通に使うのであれば従来機でも全く問題ないことは疑いようのない事実。混乱を招くような言い方になってしまったが、この辺は個人の印象も関わってくる部分なので…。買い替えを促すつもりはありません。ただし、迂闊に触れるんじゃねーぞって話です。
例によって撮影感触に情熱をくすぐられるような要素はない。淡々としたものであるけれど、従来機より感触は良好。α7CRも同じスペックのシャッターを持っているハズだが、不思議なことにα7C Ⅱの方が感触が少しだけガサツに感じられた。個体差かも知れないが…。
さらに2機種の比較では、階調性について違いが感じられた。α7CRと比べるとα7C Ⅱはややタイト。特にハイライトはα7CRと比べて飛びやすいので露出で工夫する必要がある…とはいえ、1台だけで楽しむには問題なさそうだ。この階調性の違いによるものなのか不明だか、露出補正の頻度はα7C Ⅱの方が明確に多かった。
手ブレ補正についてはα7Cから明確に改善された。α7Cは体感3.0段程度という感触だったが、本機はスペックに近い実力が感じられる。気になったのはα7CRと一緒に使っていると、α7CRの方が効果が若干大きく感じられたこと。これは先に述べたシャッターの感触の違いが影響しているのか、あるいは個体差なのかは不明である。
驚異のAF=被写体認識能力は圧倒的!
AIプロセッシングユニットによる被写体認識AFは非常に強力。フレーミング時に認識枠が表示されて、初めてそこに鳥が居る! と気付くようなシーンが何度もあった。暗所や逆光時の検出性能についても申し分なく、構図の自由度が高い。
またカメラ任せでも期待通りのポイントでAFしてくれる頻度が高く、カメラを信頼して撮影することができる点は非常に素晴らしい。飛行機などはゴマ粒サイズであってもビシバシ認識しトラッキングできていた。きっと開発陣に飛行機の撮影を愛する人が居るのだろう。
AFに関しては、誇張無しに「驚異的な性能」であり、その検出精度には狂気的なものすら感じさせる。
α7Cの登場から約3年。初代は「C」印(コンパクト化)の為にα7 Ⅲと比べて失ったものが大きかったが、今作は無印(α7 IV)と遜色ないどころか、一部では凌駕する性能を得た。
進化改善の歩幅は非常に大きく、カメラの道具としての改善はもちろん、デバイス性能的にもあらゆる用途に対応出来る実力があることを実際に体験してみると、α7C Ⅱ約30万円という価格も納得できる。
仮に自身が従来機のユーザーであれば、本機を体験してしまうと従来機を愛することは難しそうなほど。従来機ユーザーは生半可な気持ちで本機に触れない方が良い。
こうしたカメラ性能の進歩は、ビギナーにとっては誰でも難しいシーンに対応できるという成功体験を与えてくれる。そして熟練者にとっては、新しい表現へのチャレンジを後押ししてくれる贈り物だ。
撮影の過程は少しだけ味気ないものになったけれど、それでも写真をより楽しく身近なものにしてくれたのは、ひょっとするとソニーなのかも知れない。初代α7登場からの10年を振り返ってみると、ふとそんなことを思ってしまった。
なんか…いつもと言ってることが真逆ですね。