コシナ・フォクトレンダーブランドからフジフイルムXシリーズ用の「COLOR-SKOPAR 18mm F2.8 Aspherical」が登場した。原稿執筆時点では詳細な発売日は確定していないが、2月中の発売が予告されている(※編集部註:2月9日に発売決定)。

コシナ フォクトレンダー COLOR-SKOPAR 18mm F2.8 Aspherical 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算28mm相当
●最短撮影距離:0.17m
●最大撮影倍率:1:6.6
●レンズ構成:5群7枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:43mm
●大きさ・重さ:φ59.3×23.5mm・115g
●付属品:フード

既発=ULTRON 27mm F2の兄弟モデル

フルサイズ換算で28mm相当画角となり、開放口径をF2.8とすることで、コンパクトな設計を実現したというその外観から「あれ? どこかで…」という意識が芽生えるが、昨年登場した筆者の愛する「ULTRON 27mm F2 X-mount」と同じ外観デザイン・サイズとなっている。

全長はマウントから23.5mmに抑えられているが、重さは本レンズの方が5g軽い115gとなる。スペックから想像するよりも心地良い重みが手のひらに伝わってくるのが面白い。
念のため、私物のULTRON27mmと実際に持ち比べてみたが、42歳男性のハンドセンサーの精度では5gの違いは分からなかった。

レンズの命名規則は、開放F1.5より明るいレンズがNOKTON(ノクトン)、F1.6〜F2.0までがULTRON(ウルトロン)、F2.1より暗いレンズがCOLOR-SKOPAR(カラースコパー)とのこと。VoigtlanderブランドのXマウントレンズはこれで7本目となり、順調にラインナップが拡充されている。

F5.6で2mにセットして「なんちゃってパンフォーカス」気味に撮った時のカット。掲載サイズだとピントが来てる様に見えますが、拡大するとちゃんとピントの来ているところとそうじゃないところが分かります。ド逆光だけど、ご覧の通りコントラストはしっかり高いです。
■X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/4000秒) マイナス0.3露出補正 WB:晴れ ISO250 ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルタ

写真に興味が無い人からすると「18から50mmの間になんで7本もあるの? ズーム1本で良くね??」と感じてしまうかも知れないが、写真ファンからすると「(全てを買うワケではないが)7本でもまだ足りない」のだ。

たとえば「お散歩にあのレンズのサイズが良さそうだ」や「あのレンズならいつもの装備に1本追加しても負担が少なさそう」などと想像したり、「あのレンズの描写をあのシーンで使ってみたい」と妄想をふくらませるのはとても幸せな時間である。なので近似する距離のレンズを複数本手にしてしまうのは、仕方のないことである。道楽の道の険しいところだ。

ちなみに、同じ焦点距離の純正レンズがXF18mmF2 Rがあり、こちらは1段明るくてAFも付いてて116g(ほぼ同等)。体感では純正の方が軽くて実用面でも上なのだが、カラースコパーの方が圧倒的に格好良い。よって筆写の見解では実質的に互角となる。

粒状を出したかったのでISO1250で高感度ノイズリダクションは-2でパチリ。絞っても良かったけど、あえてF2.8で。Xシリーズで撮っていると色々と表現の手段があるので楽しい。
■X-T5 絞り優先AE(F2.8 1/14000秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO1250 ※フィルムシミュレーション:ProNeg.Hi

使用感はやはりULTRON27mmと同等

コンパクトなパンケーキレンズなので若干の窮屈さは否めず。ピントはリングではなくレバーで操作するタイプなので、X-S20などのコンパクトながら大型グリップを備えるボディとの相性は少々悪そうに思うが、グリップがコンパクトなX-T5やX-Pro2、グリップのないX-E4などでは使用感は良好。ただし、個人的な好みから言えば、レバーのサイズはもう少し大きい方が嬉しい。

いつもの通り、Xシリーズに最適化されているので、絞りリングとフォーカスリングの回転方向は純正と同一。他のXシリーズ用Voigtlanderレンズと同様に電子接点を持っているので、電気通信対応ボディとの組み合わせでは、撮影画像へのExif情報記録やAE/AWB、IBIS動作、フォーカスチェックなど純正レンズと同等の使い勝手があり安心感がある。
電気通信に非対応のボディ(X-Pro2など)との組み合わせでも、レンズ無しレリーズを「許可」にしておけば、実絞りによる絞り優先AEとマニュアルでの撮影が可能だ。

他のレンズと同様にX-S20などのPSAMモードダイヤルを持つ機種との組み合わせ時には、モードダイヤルのポジションに注意しておきたい。公式の紹介動画はコチラから。

COLOR-SKOPAR 18mm F2.8 Aspherical X-mount 製品紹介

www.youtube.com

2色展開で悩む…幸せなひと時。

ULTRON27mmと同じく、シルバーとブラックの2色展開かつ付属のフジツボフードはねじ込み式でブラック仕上げ。径のサイズも同一で、スペックとレンズ銘の刻印は専用となる。

気になっている人もきっといるだろうと考え、X-E4にシルバーとブラックをそれぞれ組み
合わせたショットを撮ったので購入時の参考にされたし。ここでは雑念を排除するためにグレーバックで撮りました。

筆者の場合、ULTRON27mmをシルバーにしたので、仮に本レンズを購入する場合には必然的に黒となりそうだが、敢えてシルバーにして自分を惑わしつつ、偶然性を楽しむというスタイルもあり。カラーリングについては沢山悩みましょう。これもまた趣味における大変に幸せな時間なのだから。

サイズから鑑みるに、描写はかなり優秀かと。

28mm画角はワイドレンズとしては微妙に狭い感じもしました。広角だけど、写り込み過ぎないという見方も出来るけどね。F5.6にしたつもりだったけれどF5.0でした。撮り方がだんだん「GR系」になってくる不思議。
■X-T5 絞り優先AE(F5.0 1/750秒) マイナス0.7露出補正 WB:晴れ ISO250 ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルタ

描写の傾向はULTRON27mmF2と似ており、開放絞りからシャープに解像するタイプ。至近端かつ開放でもそれほどホワッとはせず、「絞りの利くレンズ」というよりは優等生的な描写性。歪みはほぼ無く、気持ち良くスコーンと写る。

シビアに評価すると、極々四隅はf/5.6まで絞ってもちょっぴり甘いし、至近側では明暗差の大きな条件ではフリンジも出る。が、フイルムシミュレーションによってはこの色ズレは気にならないし、極々四隅についても、写真鑑賞でそんなところを注視することは無いので、実用上は問題ナシと言える。

ちゃんとピント合わせました。絞ってることもありますが、めちゃくちゃシャープに解像していて「このサイズのレンズなのにこんなに写るんかい!」ってニヤニヤできます。
■X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) プラス0.7露出補正 WB:オート ISO250 ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

ワイドレンズであること、レンズサイズ、使用状況等を総合的に考慮すると、かなり頑張っているという印象。なので、素直な感想としては「こんなにちっこいのにスゲー写るぞ」って感じ。初めてリコーGR1やミノルタTC-1(どちらもフィルムカメラね)に触れた時を思い出しました。というか、GR1っぽい雰囲気があるような…描写性能で言えば本レンズのが上だけど、どことなく似たオイニーがします。

ワイドのMFレンズなのでピント補助機能は駆使した方が安心。試しにX-T5のEVFで拡大表示させずにMF撮影してみたが、まぁまぁの頻度でピントが甘かったので、ワイドレンズのMFは少し難易度が高め。ピーキングよりも拡大のが良いと感じた。

言うなれば「絶妙な立ち位置」に乗っています。ちょこんと。

拡大せずにピントを合わせたから、ちょっとだけピントが甘いんだよね。でもわずかに曖昧になった写りがフィルムっぽくも見えて好きです。時にはピントの微妙なコントロールを表現に取り入れないとな、と背筋が伸びる思いがしたこと、ここに表明します。
■X-T5 絞り優先AE(F4.0 1/2700秒) マイナス0.3露出補正 WB:晴れ ISO250 ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルタ

念のため、f/5.6にしてピント位置を2m前後に予め設定し、ほぼ無限遠から1m程度までが被写界深度内として見れるか? という実験もしたが、X-T5の40MPセンサーだと正直厳しい。
とは言え、ちょい甘くらいのピント時の印象も悪くなく、これはこれで表現に使えそうだな、という発見もあった。

28mm画角と言えば新宿。20年前にリコーのGR1sで撮ってたシリーズを思い出しながら撮影してみました。
■X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/900秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO250 ※フィルムシミュレーション:ノスタルジックネガ

あとね、ピントは薄いのだけど描写が厚い感じがしました。何言ってんだコイツ? ってなるかもだけど、何か良い感じに厚みのある写りです。作例はありませんが、逆光にも強く、目立つ感じのゴーストは試した限りでは確認出来ませんでしたよ。

「絶妙なレンズ」というのがこのレンズの印象。上述の通り、優秀な光学性能で、キレの良い写りが楽しめるのだけど、それだけじゃないぞっていう部分もあり、使いこなし甲斐のあるレンズというのが率直な感想。

試しにブレボケもやってみましたが、デジタルっぽい再現じゃなくて、フィルムっぽい表現に撮れたので「あら、貴方ってそういう事も出来るのね」みたいな頼もしさがあった。

ひとつ前の写真の続きで、当時と同じように構図を斜めにしてパチリ。こうやって思い返しながら、当時どんな事を想いながら撮ったのか? を振り返りつつ撮るのも楽しいね。
■X-T5 絞り優先AE(F5.0 1/1250秒) WB:晴れ ISO250 ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルタ