シグマから、待望のフルサイズミラーレス対応70-200mm“ニッパチ”望遠ズームが新発売。ポートレートから風景、ネイチャー、各種スポーツなど、被写体守備範囲の広さではもはや定番。「ついに出た!」と待ちわびていたファンも多いことだろう。
シグマ 70-200mm F2.8 DG DN OS | Sports(ソニーE) 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算70-200mm相当
●最短撮影距離:65(W)-100(T)cm
●最大撮影倍率:1:5.2(焦点距離200mm時)
●レンズ構成:15群20枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:77mm
●大きさ・重さ:φ90.6×207mm・約1335g
●付属品:ケース・フード・三脚座
なんだかんだでも、今もって不動の人気を誇るレンジ。
たしかに「定番」ではある。が、今となっては3倍弱のズーム倍率もテレ端200mmという焦点距離もちょっとモノ足らなく感じるユーザーもいるかも? しかし、近すぎず遠すぎずな距離感と、明るい絞りによるボケ味をコントロールしやすい望遠ズームとして不動の人気は変わらないはずだ。
それだけに、コンパクトなミラーレスカメラボディの機動力にマッチする仕様を待ち望んでいたシグマファンも多いはず。しかも堅牢性の高い鏡筒に優れた描写性能と高速AFシステム、強力な手ブレ補正など最新技術をギュッと詰め込んだ造りのスポーツラインでのラインアップ。フルサイズαシリーズと組み合わせたホールディング性など実用上はもちろん、佇まいもなかなかカッコイイ。
シグマのミラーレス用レンズでは初の絞りリングを搭載
インナーフォーカス採用のためズーム操作による全長変化がなく、重量バランスの移動もほとんど気にならない。レンズ単体でも約1.3kgと、一眼レフ用の同クラスズームに比べれはその軽さは歴然。
愛用のショルダー型カメラバック・ロープロSH 200 AW(もう型落ちしているが)にはフード逆付状態でα7 Ⅳボディに装着したまま収納可能で、さらにその左右には24-105mmF4や16-35mmF2.8など単体の交換レンズ2本を携行できた。
操作性においては、本家GマスターのFE 70-200mm F2.8 GM OSSレンズを凌駕。各種機能呼び出しをアサイン可能なAFロックボタンも、縦/横フレーミングでも自在に操れる3か所に搭載するなど本家レンズと変わらぬ操作性を実現している。
これは好き嫌いの個人差もあると思うが、シグマとソニーではズームリングとMFリングの位置が前後逆になっている。シグマのレンズでは鏡筒先端側にあるズームリングに左手親指と人差し指をかけたまま薬指1本でMFリングの操作が可能になり、手持ち撮影で両方を使う撮影においては構図キープしやすさの点で具合がいい。
一方、本家ソニーのレンズではズームとフォーカスの操作のたびに手を前後移動させなければらないし、そもそも左手はカメラレンズの重量を支えているのだから撮影スタイルによっては不安定に感じることもあるわけで…。もちろんAFオンリーのユーザーならこんなことは取るに足らないことかもしれないが…。
小さくても目立ち度バツグンの被せフード
流石はスポーツラインの一本。小さくても専用フードは被せ式。着脱のたびにネジを回すお作法が必要なのは面倒かもしれない。が、径が大きく先端ラバーのおかげで地面や床にレンズを下向きにして置く際の安定感は申し分ない。これは複数台の運用でカメラをとっさに持ち替える動作で有利な場面もある。しかし風景撮影がメインだったりすると、窓開きフードが良いというユーザーもいそう。
細かいところをもう一点クローズアップすると、アルカスイスにそのまま対応する回転式三脚座は、不要ならば脚部だけ付属の六角レンチで着脱が可能。ただし4点止めのため着脱作業はかなり煩雑。落とせば紛失のリスクもあるので現場での着脱は避けるべきだろう。
工具と同梱のビス2本はスペアではなくクイッククランプ側の仕様に応じ位置決めや脱落防止用途のピンとして使う。この三脚座は専用設計のため他機種への共用は不可だが、こういうパーツこそ多少ブサイクになっても互換性があるほうが親切なんじゃないのかな?と思わなくもない。
近景から中間距離のキレが良すぎて…。
遠景撮影も画面周辺まで一定のシャープネスをキープできていると思う。しかし解像感に関しては近距離~中距離での撮影をしながら得られていた満足感とは異なり、「こんなものかな?」と何か釈然としない感覚を覚えてしまう。
それは展望台からの作例のような、ほぼ無限遠ピントで画面を構成した、言わば「平凡な撮り方の写真」で陥りやすいこと。ある程度撮影距離が離れていても被写体の背景に適度なボケ味を得られる画づくりがこのレンズの優れた描写力を堪能する秘訣なのだと思う。
αユーザーの場合、従来のGマスターレンズ70-200㎜F2.8の他にリーズナブルで軽量の絞り開放F4.0通しのGレンズという選択もある。が、このレンズであれば携行時の重量負担も少なくF2.8をの描写を楽しめる。広角、標準、望遠ズームの3本態勢はもう体力的に無理と諦めていた人にも魅力的だろう。ちなみに1.4倍と2倍のテレコンバーターも装着も可能なので100-400mmとの置き換えというのも良いかもしれない。