タムロン 70-180mm F/2.8 Di Ⅲ VC VXD G2 (Model A065) 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算70-180mm相当
●最短撮影距離:0.3m(W)/0.85m(T)
●最大撮影倍率:1:2.6(W)/1:4.7(T)
●レンズ構成:15群20枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ83×156.5mm・855g
●付属品:フード
手ブレ補正搭載でも小型軽量な第二世代大口径望遠ズーム
名称の末尾につく「G2」は第二世代を表すもので、本レンズ「70-180mm F/2.8 Di Ⅲ VC VXD G2」は、2020年5月に発売された「70-180mm F/2.8 Di Ⅲ VXD」の後継モデルということになります。
先代はF2.8通しの望遠ズームでありながら、長さ149mm、重さ810gと、同クラスのズームレンズとしては非常に小さく軽いことが特徴でした。しかも光学性能はとても良好で、AF性能も高速・高精度、MF限定ではありますが0.27mという驚きの近接撮影を実現させていました。
総じて「高性能な望遠レンズを自由に扱える楽しさを教えてくれるレンズ」だったと言えるでしょう。
それでG2となった本レンズは何が変わったかというと、独自の手ブレ補正機構VC (Vibration Compensation)を新たに搭載したところが大きいです。VC搭載によって、長さは156.5mm、重さは855gと、それぞれ少しだけ増えてはいますが、それでも(手ブレ補正機構搭載の)同クラスレンズとしてクラス最小・最軽量の座は維持しているそうです。小型・軽量化に挑むタムロンの強い意気込みを感じますね。
また、本レンズには「フォーカスセットボタン」と「カスタムスイッチ」が装備されており、それぞれのボタンとスイッチには、さまざまな機能を割り当てられるようになりました。これは前モデルには搭載されていなかったので、使い勝手は向上するものと思います。
その「フォーカスセットボタン」と「カスタムスイッチ」の機能を設定するために設けられているのが、鏡筒基部付近にあるUSB Type-C端子になります。PCやスマートフォンにUSB接続して、アプリケーションの「TAMRON Lens Utility」から好みの機能を割り当てることができます。昨今のタムロンレンズには当然のように搭載していますが、先代モデルには非対応でした。
小型軽量であることがもたらす大きなメリット
実際に使ってみると、ことのほか小型・軽量である本レンズのありがた味を実感することになります。小さいので標準ズームを使っているくらいの感覚で、望遠の世界を気軽に楽しめます。さらに軽いので被写体を探し歩いている時に、負担を感じることが本当に少ないです。ちょっと大げさかもですが、「大口径望遠ズームの撮影ってこんなに楽だったっけ?」くらいの感想は確かにありました。
「大口径望遠ズームに三脚座がなくて大丈夫なのだろうか?」なんて不安が頭をもたげることもなくはないですが、なにしろレンズが軽いので、実際にはカメラ側の三脚ネジ穴で雲台に固定しても何ら問題はありません。むしろ三脚座を使わない方が安定するくらいではないかと思います。軽くてコンパクトであることは、あたためて素晴らしいと感じることができます。
高解像ながらもタムロンらしい優しさの描写性能
描写性能、特に肝心の解像性能はと言うと、これは光学性能を一新したというだけあって大変に素晴らしいものがあります。絞り開放で撮っても周辺部まで破綻なく綺麗に被写体を描いてくれます。もちろん絞り込んだ方が、より隅々まで画質が安定して解像感が向上します。が、暗いシーンなど絞りを開けなければいけない条件でも安心して使える性能があるのは嬉しいことです。
高解像なだけでなくボケ味も良好です。前ボケ、背景ボケともピント面から違和感なくなだらかに柔らかくボケていくのはしめたもの。高解像ながらもギスギスせず、どこか優しさを残したピント面と、協調しながら美しい画を描き出してくれました。
「解像感とボケ味の両立」はソニー「Gマスター」レンズの得意とするところですが、実は各メーカーとも同様の思想で鎬を削っているのだなあと思いました。さすが最新設計のレンズです。
暗いシーンで油断すると、思わずわずかな手ブレを起こしてしまいがち。そうなるとせっかくの高画質も台無しです。そんな暗いシーンで、ボディ内手ブレ補正が効いたのか? レンズ内手ブレ補正が効いたのか? はたまたその両方が効いたのか? 実際のところは分かりませんが、今回の試写ではさまざまなシーンで遅いシャッター速度でもよく手ブレを抑えてくれていました。
小柄なレンズなのに、絞り開放でも周辺光量の低下が見られないのは、電子補正のおかげだろうと考えていたのですが、玉ボケを写しても口径食がほとんど見られないことから、もともとの光学性能が優れているのだということを知りました。光学設計技術の進化には本当に驚かされます。
0.3mまで寄れるようになった近接撮影性能
最短撮影距離はテレ端180mmで0.85mと従来と同じですが、ワイド端70mmでは0.3mの近接撮影が可能です。大口径望遠ズームとしては驚異的なスペックで、このときの最大撮影倍率は約0.38倍になります。前モデルはワイド端でも0.85mまでしか寄れませんでした。
前モデルはカメラボディ側でフォーカスモードをMFにした場合限定で、最短0.27mまで寄ることができるという特殊な仕様でしたが、本レンズはAFのまま最短0.3mまで寄れるのが特徴です。とても扱いやすく進化したことはもちろん歓迎すべきところです。ただ、前モデルの0.5倍という撮影倍率と、幻想的ともとれる周辺部の独特な写りはなかなかにして魅力的でしたので…そこは悩ましいところです。
まとめ ~純正レンズと真っ向勝負できる自信作!~
今回使用したソニー「α7 IV」ですが、ボディ側の機能である「瞳AF」や「動物瞳AF」などは、純正レンズと変わらずキチンと作動してくれます。さらに「ファストハイブリッドAF」にも対応していますので、AFも速く正確に合焦すると思ってもらってまったく問題はありません。
本レンズはリニアモーターのVXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)を搭載しており、性能は前モデルより向上しているとのことですので、「α7 IV」や「α7R V」などの現行最新モデルのボディでも、70~180mmくらいの焦点距離で不足のないAF性能を示すのは当たり前のことといえると思います。
近接撮影の得意な望遠ズームといえば、最近ではソニーから純正の「FE 70-200mm F4 Macro G OSS Ⅱ」が驚きをもって発売されたばかり。超絶スペックの望遠ズームであることに変わりはありませんが、そちらはF4通しで、本レンズはF2.8通しになります。
サードパーティー製のレンズというと、純正に比べて一歩引けを取るように感じることがあるかもしれませんが、描写性能は万全。さらにタムロンならではの独自仕様があり、ボディ側との相性も問題なく、さらにはお値段も優しいと来ているのですから、選択肢のうちに加えるにはあまりにも有力な候補なりえる存在だと思います。