ニコンZマウント仕様のタムロン35-150mm F/2-2.8 Di Ⅲ VXD(Model A058)が9月21日に発売される。昨年9月に発売された、タムロン初のZマウント用レンズ「70-300mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ RXD(Model A047)」に次ぐ2本目となる。ちなみに本レンズのソニーEマウント仕様は2021年10月に発売済みだ。

タムロン 35-150mm F/2-2.8 Di Ⅲ VXD ニコンZマウント 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算35-150mm
●最短撮影距離:0.33m(W)/0.85m(T)
●最大撮影倍率:1:5.7(W)/1:5.9(T)
●レンズ構成:15群21枚
●最小絞り:F16-22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:82mm
●大きさ・重さ:φ89.2×160.1mm・1190g
●付属品:フード

2本目のZマウントに、あらためて期待したい!

70-300mm F/4.5-6.3 は使ってみたものの至って普通のレンズで正直、魅力的とは言えなかった。ニコンは70ー300mmを自社では発売しておらず、タムロンのために空けておいたかのように思えたので期待していたのだが…。タムロンならもっと高性能なレンズを開発するこが可能であったろうという不満が残った。

その点では、本レンズは期待できる。すでに発売されているソニーEマウント用が好評というのもあるが、それ以上に2019年5月に発売されたニコンFマウント仕様の35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)を大口径化したものと捉えることができるからだ。35ー150mmはニッコールにはなかったレンジ。人物の取材には最適で、撮影距離を変えなくても35mmで全身、70mmで上半身、150mmで顔という撮り分けができて便利だったのだ。

それがZマウント仕様で、しかも大口径化されての登場となると期待が膨らむ。制約が多いニコンFマウント仕様よりもZマウントの方が性能が出せるのでは…とか妄想し、かつ開放絞りがF2というズームはZニッコールにはないので、この点でもワクワクが高まる。

撮影共通データ:ニコン Z 8 WB:オート ISO:感度自動制御 ※ピクチャーコントロール:スタンダード
■35mm時 絞り優先AE(F2.8 1/40秒) マイナス1.0露出補正 ISO500 

さて、まずは最初にお盆の灯ろう流しを撮りに行った。早く撮ってみたくて使用説明書もろくに読まずに出掛けてしまった。ボディはZ 8だ。本レンズとZ 8とのホールディングバランスは、ややフロントヘビーということで最良といえる。というのも、ボディ側が重いよりもレンズ側がやや思い方が構えたときはバランスがいいのだ。

■107mm時 絞り優先AE(F2.8 1/125秒) マイナス1露出補正 ISO6400 

毎年8月、アベっちは札幌で休暇を楽しんでいる。この8月15日には札幌の中島公園でお盆の伝統行事「灯ろう流し」が行われた。例年は戦没者追悼が主体だが、今年はロシアによるウクライナへの軍事侵攻で犠牲になった人や新型コロナウイルスで亡くなられた人たちも追悼された。灯ろうは500基ほどもあっただろうか。

■150mm時 絞り優先AE(F2.8 1/100秒) ISO25600

僧侶が池に入って灯ろうに灯をともす。この日は風が強く、点けても点けても消えるものが多い。アベッちなら「ちぇ!」となるところだが、さすがは徳を積んだ僧侶。表情は少しも変わらず穏やかだ。その表情を的確に捉えることができた。ピント合わせは瞳AFだ。

追従性は抜群にいい。モーター駆動音が小さく静寂性にも優れている。TVの取材を始めムービーを録っている人も多かったので、静かに撮影できるのは素晴らしい。高速かつ高精度のAFを実現できたのは、リニアモーターフォーカス機構VXD(Voice-coil eXtreme-torque Drive)を採用したおかげだそうだ。

■150mm時 絞り優先AE(F2.8 1/160秒) ISO1250 

ISO感度自動制御にしておいたので、ほとんどのシャッター速度は手ブレしない限界の焦点距離分の1秒で設定された。まれに遅く設定されることもあったが、ブレたコマはほとんどなかった。タムロンといえば、一眼レフ時代は手ブレ補正に定評があった。ミラーレスになってもその特性は引き注がれている。日が暮れ始めると集まった人たちは水面に映った灯ろうの明かりを眺め、亡くなった人に思いをはせているようだった。

35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)の上位互換モデル。

レンズの外観を見ていこう。洗練された美しいデザインで高級感がある。緩やかな曲線と曲面が多用されているのが寄与している。Z 8との組み合わせは、F2という大口径でありながらサイズ、重量的にもバランスがいい。

レンズ本体の左側面にはスイッチボックスとフォーカスセットボタンがある。最低限の出っ張りでも素早く操作できるよう曲面でデザインされている。
専用ソフトウェア“TAMRON Lens Utility”により、あらかじめピントを合わせたい2点間と移動時間を設定し、フォーカスセットボタンをクリックするだけで、被写体から被写体へフォーカスが移動する「A-Bフォーカス」や、MF時のフォーカスの動き方を「リニア」か「ノンリニア」で選べる。

ズームロックスイッチはカメラを肩から下げたとき、レンズの重さで知らぬ間にズームが伸びてしまう現象「自重落下」を防ぐ機構だ。タムロンは古くから備えているレンズが多い。

フードは花形フード。35mmに合わせてあるので150mmでは短い感じは否めない。内側の反射を抑える階段状の処理はやや粗め。もう少し細かな方がいいのではと思ったが、効果には問題なかった。フードはロック機構付きで摩耗による緩みがないため、長年の使用にも安心だ。

35-150mm F/2.8-4 Di VC OSD (Model A043)と2本を並べて撮ってみた。もちろん35-150mm F/2-2.8 Di Ⅲ VXDの方が長い。最大径も84mmから89.2mmに増している。だが、全長が長いためか径が大きくなったのはそれほど感じられない。逆に35-150mm F/2.8-4 Di VC OSDの方がずんぐりしているので太く見える。

150mm時では、2本とも全長が伸びるが、35-150mm F/2-2.8 Di Ⅲ VXDの方が伸びる長さが短く、35-150mm F/2.8-4 Di VC OSDの方が長いので、全長の差が小さくなった。これも光学設計の工夫といえる。ちなみに重さは400gほど重くなっているが、外観からは分からない。