タムロンからフジXシリーズに対応する、フルサイズ換算で16-30mm相当画角となるF2.8通しのワイドズームが登場した。本レンズは2021年にソニーEマウント用(APS-Cフォーマット)が発売されており、その実力を知る人も多いことだろう。

タムロン 11-20mmF/2.8 Di Ⅲ-A RXD Xマウント 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算16-35mm相当
●最短撮影距離:0.15m(W)/0.24m(T)
●最大撮影倍率:0.25倍(W)/0.13倍(T)
●レンズ構成:10群12枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ73×86.5mm・335g
●付属品:フード 

APS-C専用設計のメリットを存分に生かした超広角ズーム。

11mm至近側でのボケ具合のチェック。ワイドで寄るとスマホっぽさが出てくるのが、なんか面白くて、とりあえず寄って撮ってみたくなります。ボケはワイドズームとしては結構キレイなのでは? ちなみにXF10-24mmF4よりもボケ味は良いと思います。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F4 1/480秒) ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

長さ86.5mm、重さ335gと、スペックからは想像できないくらいに軽量コンパクトな仕上がっており、F2.8通しのズームであるにも関わらず負担なくカメラバッグに本レンズをプラスすることができそうだ。APS-Cフォーマット専用設計のメリットが効いている。

焦点距離の近い純正レンズとしてはXF10-24mmF4 R OIS WRがあるが、本レンズのアドバンテージは開放F値の明るさにある。この絞り1段の差をISO感度に割り振るか、シャッター速度に割り振るか手段は様々だが、個人的には表現や「撮れる撮れない」といった大きな違いを生む差となる。

これは20mm時。絞ってることもありますが、キレ味がお見事。AF性能は、XF10-24mmF4の旧型(WRって付いてないやつ)よりも少しだけ良い感じがしました。具体的にはAF-C時の追従性がちょっと良いです。現行品(WR付いてる方)と本レンズを直接比べてはいませんが、現行品と旧型を比べると現行品の方がAF制御がきめ細かい感じはします。IBIS付いてるカメラなら手ブレ補正の効果もそこまで変わらない気がしました。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/1700秒) マイナス0.3露出補正 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルター

ネガティブな点としては光学手ブレ補正を持っていないこと。タムロンといえば強力な手ブレ補正(VC)を持つレンズが多いので勘違いしていしまいそうだが、本レンズはその限りではない。
とはいえX-T5やX-H2シリーズ、X-S20などのIBIS(ボディ内手ブレ補正機構)を持つ機種との組み合わせでは決定的な差とはならないだろう。

逆光耐性は純正より上も、LVと実画像の違いがまんま一眼レフ…。

ワイド側で撮る時にはスルー画(LV映像のことね)と実画像で画角がちょっと変わるので、DSLR時のような注意が必要です…という話をこの後にツラツラやります。写りそのものは気持ち良いね!!
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/750秒) ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

描写はソニー版でテストした時と同様で、非常にクリアでキレの良い描写が楽しめる。これは個体差なのか、それとも製造が熟れたことで組付け精度が高くなったのかは不明だが、以前よりも周辺描写に優れるようにも見えた。

純正旧型(XF10-24mmF4)との逆光比較

左がタムロンで右が純正旧型。これはワーストシーンでの対決となっています。タムロンはF4.0がワーストで純正はF5.6がワースト。逆光耐性はタムロンの勝ちで、どの絞り値でも明確にフレアが少なくてクリア。比べているレンズが現行品ではなく筆者私物の旧型だけど、逆光性能は新旧でほぼ変わらないという印象があるので参考にはなると思います。本文でも触れますが、中〜遠景シーンでの周辺画質は純正の方が上でした。至近側はタムロンのがキレイだね。

逆光耐性は素晴らしく、フレア・ゴーストは非常に軽微。あまりに印象が良かったので、試しに筆者私物のXF10-24mmF4 R OISと比べてみたが、逆光耐性においては明らかに本レンズが優れていた。

中央部の解像性能は本レンズがわずかに上、周辺部はXF10-24mmF4 R OISの方がズーム全域でわずかに良かった。トータルではほぼ同等という評価になりそうだ。画質でどちらにするかの選択をしたい人にはより悩ましくなってしまいそうだが、純粋に画角と手ブレ補正のアドバンテージを重視するか、逆光耐性とF2.8の明るさにメリットを見出すかで選ぶのが良いだろう。

LV映像と実画像画像での歪曲の比較

スマホアプリ、“CameraRemote”にてキャプチャーしていますが、左がスルー画で右が実画像。スルー画では明らかに歪んでいます。EVFとLCDともに、撮影時には歪んだ映像を眺めつつの撮影になるところが一眼レフみたいだよね。撮影画像はちゃんと補正されるのだけど、他のXマウント用タムロンレンズでもこうなります。タムロンさん、なんとかなりません?

気になったのは他のXマウント版のタムロンレンズと同様に、LV映像に歪曲補正が完全に適用されないように見えること。つまりLVでは歪んで見えるのだ。もちろん実際の撮影画像ではいまく補正されるのだが、シーンによってはトリミングされてしまうので、厳密なフレーミングをしたい場合には工夫が必要になってくる。

X-T5だとF8.0まで絞ると回折で甘く見えました。この辺のバランスは撮る時にちょっと考えるし、実際難しいです。回折させても良い時もあれば、期待値との乖離が大きくて印象が悪くなることもあるので。X-T5だとネットをワイドレンズで撮ってもモアレが…と悩まされる頻度がかなり少ないのが良いね。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/1250秒) マイナス0.3露出補正 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ACROS + Yフィルター

これは一眼レフ時代のOVFでは当たり前の事ではあった。が、ミラーレス機のメリットでもあるこの部分に若干の我慢が必要になるのは嬉しくない。こうしたことが気になるのはワイド画角を活かした都市景や物件撮影シーンであり、自然風景写真ではあまり気にならなそう…、と言いたいが、ワイド時のパースの付き方がLVと撮影画像で異なるので「あれ? 撮る時はもっとダイナミックな印象だったのに」となるシーンは皆無ではない。

純正レンズだともっとゴーストが出ますが、タムロンならこの程度。まぁ描写の効果としてゴーストが出て欲しい場合もあるから、一概にどちらが良いというのは言えないところではあります。比較云々という視点を排除して単体で評価するなら、描写性能の良さが印象的なレンズだね。このサイズ感でこの明るさを実現していて、この写りを実現してるのはスゴイと思うし、画像チェックしていてもキレが良いから「おっ」とザッピングの手が止まります。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/2400秒) マイナス0.3露出補正 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード