シグマから、ミラーレス専用高倍率ズームの真打とも呼ぶべき60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sportsがいよいよ登場。2018年秋に発売された、同じ仕様の一眼レフ用Sライン=60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSMは某カメラ誌にて使い倒したので、その優れた描写性能と被写体適応力に関してはよーく覚えております。

シグマ60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports 主な仕様

●焦点距離:60-600mm
●最短撮影距離:45-260cm
●最大撮影倍率:1:2.4(200㎜時)
●レンズ構成:19群27枚
●最小絞り:F22-32
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:105mm
●大きさ・重さ:φ119.4×281.2mm・2485g(ソニーE)
●付属品:フード ケース ストラップ 三脚座

一眼レフ用と同じ仕様も、完全リニューアル&軽量化を達成!

今回はミラーレス専用のDG DNでは初のSラインとして、ライカLマウントとソニーEマウントの2タイプでの発売。そうです、マウントアダプターを介さずソニーのαボディにダイレクトで着くというわけ。待ってましたというユーザーも多いことでしょう。

注目すべきは、4年前発売のレンズが単純にマウント仕様変更されたというありがちな話ではなく、光学設計を含むほぼ全てがリニューアルという点。特殊低分散ガラスの数や配置などを刷新した19群27枚の新規光学設計を採用し、さらなる解像度の向上や諸収差の補正に加えて短撮影距離も大幅に短縮。200mm時はほとんどハーフマクロに近い世界まで撮れてしまう最大撮影倍率1:2.4を実現しています。

しかし、このレンズに興味を持つほとんどのユーザーは動体絡みの撮影を想定しているのは間違いないわけで、新開発のリニアモーター「HLA(High-response Linear Actuator)」を採用したAF駆動は、従来機より高速かつ静粛で正確なAF制御を可能にしている点も期待が膨らみます。
ただし今回の試用機材はβ機。実際の量産機ではAF-C性能がさらに改善できる見込みが立っているとのことだが、一番気になる性能を試せないのはチョイと残念。

まぁそれは仕方がないとして、注目すべき点のひとつは質量がレンズ単体で2500gを切り、60-600mm F4.5-6.3 DG OS HSM比で約200g強の減量に成功したこと。
たとえばEOS 5D MarkⅣとα7Ⅳをそれぞれ組み合わせたボディ込み重量で比較すると、前者が3590gに対して後者は3022g。約500グラムもの差はかなり大きいでしょう。

とはいえ、それでも3kg超なので、相当腕力に自信がないとすぐに腕がプルプルしてきちゃうのは確実。そこは進化した手ブレ補正機能=ワイド端7段、テレ端6段という強力な補正効果を発揮してくれるはず。

届いたレンズをα7Ⅳに装着し、さっそく家の近所で散歩がてら持ち歩いてみたところ、その重みに15分ぐらいで少々後悔、そして30分で強制終了。特に撮影目的を決めず撮り歩く御伴のにするにはさすがにデカくて重すぎるのです、当然ですね。

まずはお散歩作例から見ていただきましょう。

1枚目がソレ? という声が聞こえてきそうですが、ごちゃごちゃした電線を超望遠で超圧縮。100-400mmクラスでも撮れそうな写真です。すれ違った人に「何かいるんですか?」と聞かれ「いいえ」と即答したあとの数秒間は時が止まったようでした。下手な場所でこのレンズを振り回すと不審者扱いされても文句は言えません。
■545㎜ ソニーα7 MarkⅣ 絞り優先AE(F6.3 1/6400秒) ISO800

カオスな写真のあとはスッキリと。手前と奥のお地蔵さんも、穏やかな表情がうっすらわかるボケ具合と石の質感描写もなかなか良いです。でも70-200mmF2.8で撮ったのかと聞かれたら…重たいレンズを持ち歩いた甲斐がないですわ。
■600㎜ ソニーα7 MarkⅣ 絞り優先AE(F6.3 1/400秒) ISO800

殺風景な用水路の土手に咲く菜の花にミツバチを見つけ、最も小さいAFフレームで4~5mの距離で撮影。確かに合焦はビュンと素早い印象。ハチが少し離れた別の花へ移動しても身体はそのままレンズを振るだけで追従できるのは600㎜の威力なのかな。
■600㎜ ソニーα7 MarkⅣ 絞り優先AE(F6.3 1/2000秒) プラス0.7露出補正 ISO800

遊びは終わりだ。 さあ、現役バリバリ、プロの作品をご覧あれ…。

歩いたコースが悪いのは否めませんが、さすがにあてもなく撮り歩くのもここらが限界。ものすごい消化不良気味なので、だいぶ陽が傾いてきたけれど野鳥ならそれなりに居るであろう公園へ車でGO。やはりこのレンズはしっかり撮影目的をもって持ち歩くのが健全ですよ。いや、もちろんチャレンジするのは個人の自由なので止めませんが。

池のほとりでマッタリしながらたまに嘴をパクパクするチュウサギ。前後でボケているのはマガモたち。短時間で集中してシャッターを切るなら、手持ちでもさほど重さは気にならないものです。動きのないシーンでもありますし…。
■600㎜ ソニーα7 MarkⅣ シャッター速度優先AE(F6.3 1/1250秒) ISO1000

お気に入りの枝にいるカワセミ。いつダイブしても対応できるように待ちかまえますが、さすがに長時間の手持ちでスタンバイは辛すぎ。構図を決めて待つようなシーンでは、少なくとも一脚は欲しいところ。結局はダイブはせず普通に飛び去るタイミングに反応できず腕の疲労とテスト的に撮影したこの1枚が残りました。しかしこの大きさの写りでも解像力の高さはしっかり伺えます。
■600㎜ ソニーα7 MarkⅣ 絞り優先AE(F6.3 1/4000秒) ISO800

ISO感度を上げてもシャッター速度が稼げなくなってきたため、撮影を諦めて帰りに向かう途中にエサ取りに励むコサギに遭遇。その移動に合わせて先回りをしながら捕食の瞬間を狙う。実際はかなり暗くてAF測距が怪しくなってくる環境でも、被写体検出も瞳AFもしっかり食いついてくれたので小魚ゲットの瞬間をゲットできました。
■600㎜ ソニーα7 MarkⅣ 絞り優先AE(F6.3 1/800秒) ISO6400