今回はSNSを中心にコスられ、絶賛の嵐を巻き起こしているLUMIX S5Ⅱでございますよ。…ちょっと悪意含みの表現としたのは、どれだけ良いモノでも賛否はあるべきだと思っているから。カメラが想定されている使い方に終始すれば、自ずとその印象は「良い」結果に収束していくものでもありますがね。

AFを語るその前に、細部をネチッと検証

S5Ⅱのハイライトはなんと言っても像面位相差AF(以下、PDAF)でしょう。専門用語ではPDAF(Phase Detection Auto Focus)と言います。「え? 像面位相差ってミラーレスの業界標準では??」と思った人はモグリね。

レンズ交換式のミラーレス機の始祖でもあるLUMIXは、これまで画質を最優先にするっていう考えにもとづいて、頑なにコントラストAFを採用し続けていたのですよ。そのパナソニックが、ついに重い腰を上げたってことです。

控え目な「Panasonic」の主張が好感触。ペンタ部のブランドロゴがメーカーロゴだったら…ちょっぴり野暮な感じもするから、個人的には良いことだと思っていますよ。メーカー名が前面にないと少しデザイン的に優れた印象あるもんね。SIGMAのfpとか。

で、像面位相差AFを得た撮像センサーに組み合わされるエンジンも新型です。センサーが変わればエンジンも変わるので、ザックリ言えば世代と仕組みが変わりましたよ、ということ。

PDAFに注目が集まりがちなので、それ以外の部分の印象が薄いですが、進化点はたくさんあって、動画性能の拡張とEVF周りの刷新、HDMIのインターフェイスがTypeAになったことなどが分かりやすいところ。あとUSB3.2 GEN2になっているので、動画ユーザーには嬉しい改良になっています。

スチル派の注目点としては、シャッター速度のスペックやボディ内手ブレ補正のスペックは同等も、後者に関してはアルゴリズムが改良されているとのこと。

マウント上部のスリットから吸気して、ペンタ部サイドから排気。気になる防塵防滴性も担保されているという話でした。

また外観は新旧でほぼ同じに見えるけれど、動画性能拡張のためにペンタ部に搭載された放熱システムも忘れてはならないところ。ここに搭載するっていう発想は、フィルム上がりのカメラメーカーにはないよね。こういう展開はトヨタの大好物なのですよ。

こうしたS5Ⅱの仕様を見た後でフジX-H2シリーズの外付けファンを見ると「ダセェな…」と思わざるを得ませんし、ニコンZ 9の巨大さについても「昭和初期の発想かよ…」という気持ちが湧いてきます。(LUMIX S5Ⅱについて、開発者に取材した記事がどこかでそのうち公開されますので、詳しい話はそちらを楽しみにしてくださいまし)

一応ですが、わたくしめはS5ユーザーでもあります。なので、今回はS5ユーザーからみたS5Ⅱってどんな感じ? ってのを基準にレビューしていこうっていう回になります。

ついに、やぁ~っと老舗カメラメーカーに追いついた??

S5Ⅱを使ってみると、カメラの道具としての部分が素晴らしく改善されていました。
まずね、グリップした瞬間から手に馴染む感がマシマシ。そう感じさせる最たる部分がストラップ取り付け方法の変更だね。

シャッターボタンがS5Ⅱ(手前)に角度が付いていることが分かるかと。これも利いてます!

三角環を用いた方式から板金のスリットタイプへと変更することで、グリップ側への張り出しが無くなって、手に取付部が当たらなくなった…これが本当にデカイ! とくに手の大きな(手袋のサイズはLL)筆者にとって、これまでのS5のストラップ取り付け位置って邪魔で仕方なかったのだけど、S5Ⅱは自然にグリップできるのです。

グリップの形状も変わっていて、指掛かりが良くなっているのも効果的。サイズ的には小指が余るのだけど、ここはボディサイズ的には仕方がない…かなぁ。でも(ニコン)Z 6とかはサイズとグリップ性を両立出来ているからね。…まぁグリップ感は個人差が大きな部分なので、お店にて触ってみてくださいな。

形状的に分かりやすいところだと、シャッターボタンと同軸にあるフロントダイヤルに傾斜が付けられて、操作性が向上しています。また、シャッターボタンが乗っている部分の面積が増えて、指掛かりが良くなってますな。ソニー機ってこの部分が狭くてカメラを上から掴むようにした時に、指が掛かるところが少ないから不安になるのよね。ちなみにニコンとキヤノンは良い感じよ。

他にはAF-ONボタンの操作性も良くなっているし、ジョイスティックの形状変更は劇的改善ってくらいに効いています。試しにS5Ⅱで10分ほど撮影してからS5で同じようにジョイスティック操作しようとすると「二度とテメーのジョイスティックは使ってやらねぇ!!」っていう気分になるね。S5は斜め入力に対応していないし、ジョイスティック自体の形状もイマイチ使い難いと思っていたから、S5ではタッチパッド操作で運用しています。

AF ONボタンも押下しやすくなりました。

S5Ⅱはジョイスティック操作に対するAFカーソルの反応が非常に良くて、お世辞抜きで最良クラスかと。これより良いのはEOS R3のスマートコントローラーだけだね。ま、クラスと構造が違うものを比べるのは野暮なので「S5Ⅱは70万円以下でベストのAFカーソルの操作性を持っています」と言っておきましょう。
トヨタ的にはこの分野のベンチマークにしたいくらい好印象です。この際ニコンは、パナソニックに弟子入りしたほうが良いかも。

EVFは「このクラスにしては良い感じ」という覗き心地。倍率ドット数覗き心地の全ての点でS5から改善されているし、他社機まで視野を広げれば、同じクラスのα7 Ⅳより全然良い。ただまぁ、筆者個人の好みで言えばZ 6の方が好きだね。ちなみに同門のS1シリーズとは比べちゃダメ。あちらは極上です。フラッグシップですから。

バッファが大幅に増強されたこともあって、RAW+JPEGでチョットやソットの連続撮影したくらいではバッファフルにならなくなりました。S5の小さな不満が貧弱なバッファだったので、ここも嬉しいポイント。

細かいところではメディア挿入時の認識が早いのもマルだし、どちらのスロットもUHS-Ⅱ対応としたのもGood。
また、フジで撮影したデータが残ったメディアをS5に挿入するとハングアップする症状がありましたが、S5Ⅱではそれが解消されています。フジとパナを使ってるユーザーがどれだけいるのか分かりませんが、同じ悩みを持つ人であれば、あの悪夢から解放されるのです。

あとね、ペンタ部にあるファンの動作音はMax運転でも気になりません。これは実機でチェックしてもらいたいところのひとつだね。

使っていて気になったのは、最新世代のカメラとしては起動が遅いことと、アイセンサーの感度が筆者の使い方だとどの設定も合わなかったこと。
ダイヤル類の操作感については、昨今のミラーレス界としては業界標準だけど、ニコンのハイクラスの一眼レフを知っているユーザーからすると激しく不満を覚える質感だとは思います。ちなみにS5も同じ不満アリ。ダイヤルの質感が安っぺぇよ! でもコスパが凄く良いから許そうか…ウムム、複雑ぅ!

ん? と思ったのはAFC時に表示レートが下がること。この部分をミドル機に望んで良い性能なのかは判断が難しいよね。ただし、このレート低下は公式さんも把握しているようで、どこかのYoutubeチャンネルで対応するかも? みたいなことを言っていたので期待したいですな。

S5だと小さなAF枠設定にしてもカゴ(手前側の障害物、という意味)にAFしやすかったシーンなのだけど、S5Ⅱはより小さなAF枠が選べるからサクサク撮れるね。
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 プログラムAE(F5.6 1/320秒) プラス0.7露出補正 ISO1250 フォトスタイル:L.クラシックネオ

画質検証。新旧比較

撮影前は、画素スペック的には同一ってこともあるし、素のS5の画質も十分に良いから「パッと観で分かるほどの画質差は無いだろう」と予想していました。
が、撮れば撮るほどS5Ⅱの画像はナンダカ印象が良い。

SCENE 1 

例によって左がS5Ⅱです。本当に微妙な差だけど、ボケの消失感がより自然に。S5(右側)は少しジャギジャギしていて、強いて言うなら「デジタルっぽい」感じでした。あと、一応だけどISO1600でもヘッチャラ。さすがはフルサイズ。
共通データ■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 絞り優先AE(F5.6 1/320秒) プラス0.7露出補正 ISO1600 フォトスタイル:スタンダード

だからと言って、拡大してパッとチェックするくらいだと新旧で大きな差は見当たらない。そう思ってまた全景で見ると、やっぱり1枚の写真としての品が良くなったような、そういう「あれ? 何か良いぞ」というクオリティの違いがあります。
ということで、いつものシーンでどこに違いがあるのかを比較チェックしてみました。

ネットリと観察してみたら、違いは確かにありましたよ。
結果から言えば、斜線の再現性が滑らかになっているのと、輪郭部にコントラストを強調したような表現がなくなっている、もしくは薄くなっていました。その他ではボケの消失感がキレイに表現されてるね。

SCENE 2

左がS5Ⅱ。このサイズで分かるか微妙ですが、曲線部の再現がちょっとだけ良いし、輪郭部の強調が少なくてリンギングみたいな再現が抑えられています。
共通データ■LUMIX S 50mmF1.8 絞り優先AE(F2.8 1/500秒) ISO10 フォトスタイル:スタンダード

どれも超マクロな、重箱の隅をつつかないと出てこないような小さな差なのだけれども、画面のあらゆるところで小さな改善があるからこそ、1枚の写真として観た時の印象が良くなっている、というのが感想です。「なんか良い感じ」の犯人はコレだね。もちろん、コレが発動しない時もあるので悪しからず。

SCENE 3 ISO12800

ここではほぼ同等。有意差は無いと思いました。
共通データ■LUMIX S 50mmF1.8 絞り優先AE(F4.0 1/15秒) ISO12800 フォトスタイル:スタンダード

高感度画質は、拡大するとISO12800以上はS5の方がキレイに見える部分もあるのだけど、まぁ誤差と言えば誤差みたいな感じだと思います。トヨタレベルの観察眼ではどちらも相当キレイという感想で、最近愛用しているX-T5と比べちゃダメだけど「さすがはフルサイズ」と、つい思っちゃう。

話を戻して、特にISO6400以下ではトヨタ的には見比べてもノイズレベル的な尺度だと違いは分かりませんでした。強いて言えばS5Ⅱがキレイかなぁ、という程度で、画像を混ぜちゃうと判別は難しいと思います。あと、気のせいかも知れませんが“L.クラシックネオ”でノイズ乗せた時の感触がS5よりも良い感じです。

表現が難しいのだけれど、画質性能的にはほぼ同等=撮影誤差の範疇に収まる、というのがフェアなコメントだと思いました。
その理由として、プリントやデータを観た時に「この程度の差なら気にならない」って人が大多数だと思うから。1枚だけ写真を見せられた場合、私もきっとどちらで撮ったのか分からないと思います。でも撮ってる側の意見としては、S5で撮ったカットよりS5Ⅱで撮った写真のが観ていて気分が良いんだよ。コレってカメラ選びでは大事な性能というかニュアンスだと思います。

以下、後編は近日公開!

パナはモノクロの表現が良いね。フジの次に好きです。S5Ⅱになって、雲のモクモク感が増したような気がします。新エンジンの効果かな?
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 絞り優先AE(F6.3 1/2500秒) マイナス1.0露出補正 ISO400 フォトスタイル:L.モノクロームD

モノクロっぽく撮ってますがカラー写真です。こういった被写体を撮った時も「あれ? いつもよりナンダカ表現が良い…」となりますよ。あと、この新レンズが結構楽しい。軽くて寄れるのが良いね!
■LUMIX S 14−28mmF4-5.6 絞り優先AE(F8.0 1/250秒) マイナス0.3露出補正 ISO100 フォトスタイル:L.クラシックネオ

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