サイトロンジャパンが取り扱うKamLanブランドレンズに新たに55mmF1.4が追加された。このレンズはCP+2022で参考出品されていたもので、フルサイズセンサーのイメージサークルに対応する。現在対応するマウントはソニーFE、キヤノンRF、ニコンZの3つ。フルマニュアルのレンズとなりボディとの通信は出来ないのでExifにもレンズ情報は残らない。

KamLan55mm F1.4 (カムラン)主な仕様

●焦点距離:55mm
●最短撮影距離:約0.5m
●レンズ構成:6群8枚
●フィルター径:58mm
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:13枚
●大きさ・重さ:φ約76.5×60mm・約475g
●付属品:フード

質感は上々も、クリックレスの絞りリングはビミョー。

絞り開放で敢えて少し明るめに撮ってるけど、嫌な滲み方はしてない。「中華レンズ」という響きからは想像できないくらいの写りにびっくり。
■キヤノン EOS R5 絞りF1.4 1/320秒 ISO100 WB:オート

レンズ構成図は現状で公表されていないようだが、なぜか製品元箱にはイラストが載っている。
見ると、6群8枚の構成で高屈折ガラスを5枚使った意欲作といえよう。重量も約475gで絞り羽根は13枚の円形タイプだ。絞りリングはクリックレスとなっている。

レンズの質感は高く、絞りリングとピントリングのトルクも適切で、全体的に操作感は上々。ねじ込み式のフードも引っかかりなく着脱でき、装着状態でブランドロゴが丁度良いところに収まるなど、工作精度が高いことを思わせる。

クリックレスタイプの絞りリングは個人的には好きではないけれど、ローレットパターンが使い分けられ、さらに幅も違う。なので「ブラインド操作でウッカリ操作してしまうことは少なかったが、ゼロではないぞ」っていう嫌味を言うにとどめておきます。

この性能をこの価格帯で手に入れることが出来るのは奇跡的!

電子先幕シャッターで撮っているので、画面下部に少し露光ムラが出て暗くなっています。1/4000秒より速いとより顕著にムラが生じるので、メカシャッターで撮るのが吉。写りはお見事で、得も言われぬ立体感にウットリ。
■キヤノン EOS R5 絞りF1.4半 1/2500秒 ISO100 WB:オート

今回はEOS R5と組み合わせてみたが、EVFを覗いた瞬間から「あ、コイツは良いぞ」という感動があった。昨今の高精細EVFにおいては、OVF機に良いレンズを組み合わせた時と同様の感動があるのが嬉しい。
念の為に言っておくと、EOS Rシリーズと組み合わせる場合、「レンズなしレリーズ」を設定から許可しておかないと撮影は出来ないので、これから中華レンズデビューする人は要注意だ。

寄れないことを逆手に取って、至近端にして前ボケを活かしたホワホワ表現にチャレンジ、かつ収差の出方もチェック。結構イジワルな撮り方ですが、周辺部のエッジを見てもほぼ色づきが無い。これは…KamLanやるな!
■キヤノン EOS R5 絞りF1.4 1/100秒 ISO100 WB:オート

ピント合わせはやりやすく、筆者の目では拡大せずとも楽にMFすることができた。中距離以降のシーンでは絞り開放であっても収差は軽微で、拡大しても滲みはあまり感じられない。絞り込めばもちろんキリッとはするが、絞らなくても十分以上に素晴らしいシャープネスがあり、そもそもの光学性能が非常に優れていることが伺えた…というか、日本の光学メーカーもうかうかしていられないくらいの実力がある。

レンズの距離指標が0.8m未満で少しずつソフトになってくるがピントの芯は残っているし、妙な滲みや色ズレもなくとても美しい描写が楽しめる。惜しむらくは最短撮影距離が0.5mであること。あと少し寄れれば、というシーンが多々あった。また歪曲は樽型の素直なカタチなので補正はカンタンだ。ちなみに撮影距離が近づくほどに程度は悪化するので近距離でタイルなどを撮りたい場合には注意や工夫が必要だろう。

大人気のRF50mmF1.8STMと比較してみましたよ

ふと気になったので、巷では「撒き餌」とか「シンデレラレンズ」(どちらの表現も好きじゃない)とチマタで評判のRF50mmF1.8STMと比べてみた。実売価格がほぼ同一で、約160gかつ最大倍率が0.25倍と使い勝手では明らかに純正が勝っているが、約3倍の重量のカムランとどのような違いがあるだろうか? ※共通設定 ■キヤノンキヤノン EOS R5 ISO100 WB:オート

Check1 解像感 F2.0(左KamLan 右キヤノン)

中央部はカムランの方がスッキリしていてシャープ。周辺部はキヤノンの方が素直って感じ。カムランは周辺部でコマ収差が結構ある感じのボケ方をしていますが、だからといって素直なキヤノンのボケが綺麗か? っていうとそういう訳でもない感じ。キヤノンはちょっと硬いね。ま、誤差みたいなものだけど。

いつもの場所、いつもの対象でチェックしてみた。撮影距離は約3mだ。シャープネスという点ではRFレンズが秀でている。このレンズで感心したのはAF精度。繰り返しAFしているが精度が非常に安定していた。EF時代とは大違いだ。?この条件での背景ボケはカムランの方がキレイに見える。

Check2 ボケ味 F2.0(左KamLan 右キヤノン)

不思議と同一絞りだとカムランの方が少しボケが大きく見えます。さらにボケも柔らかくて綺麗なので「明るい単焦点レンズ使ってる」感に溢れた写真が撮れてキモチイイね。F2.0まで絞ると至近側で少し柔らかくなるカムランも結構シャープに。

カムランの至近端距離に撮影距離を設定してボケ具合をチェックしてみた。筆者の感覚だとカムランの勝ち。柔らかくてキレイなボケ味だし、口径食も少ない。まぁ目を三角にするほどのことも無いけれど。

Check3 逆光耐性 F2.0(左KamLan 右キヤノン)

逆光に関してはキヤノンの方が優秀。どちらもフレア・ゴーストを撮影に活かせるタイプなので、工夫のし甲斐があって撮影は楽しいです。カムランは絞り込むとゴーストのカタチがハッキリと目立ってくるので、逆光時はあまり絞らないのが吉。キヤノンは勉強用としても玄人のお散歩用としても、シーンを選ばないソツナイ感じで使いやすい感じ。カムランは楽しいけれど苦労も多いタイプだと思いました。

一応逆光耐性のテスト。ワースト条件で撮ってます。これはもう、一目瞭然だね。

往年のシグマ50mmF1.4 EXをさらに進化させた描写なんです

ほぼ至近端。至近側だと周辺光量が落ちてるけど、これはこれで雰囲気が良くて好き。歪曲も少しある。拡大してみるとシャープに解像してたりもする不思議。クラシックなようで最新レンズの実力も備えている。
■キヤノン EOS R5 絞りF1.4 1/2000秒 ISO100 WB:オート

EOS Rシリーズユーザーで、これから標準レンズを買おうという人なら間違いなくRF50mmF1.8STMがオススメ。カメラまかせで簡単キレイだし、コンパクトでバッグを圧迫しないから。
もうすでに標準レンズをはじめとして単焦点レンズを何本か持っている、という猛者にはカムランがオススメ。あと少しが寄り切れないっていうデメリットはあるけど、ピント合わせは楽しいし描写も良い。特にF1.4からF2.0の間の描写は絶品だと思いました。

F2.8まで絞ればキリリだけど、そこまで絞っちゃうと他のレンズと変わらなくなっちゃうからね。で、大口径レンズを楽しもうと開放近辺で撮る場合の注意点。電子先幕シャッターは選択しない方が良いと思いました。ってのが1/4000秒より高速なシャッター速度を選ぶと露光ムラが気になることがあるから。純正レンズだとあまり気にした事なかったのだけど、今回は気になりました。ここはメカシャッターで撮るのがキレイです。

レンズ構成図です。左がカムランで右は往年の名玉=シグマ 50mmF1.4 EX DG HSM。どう?

最後に。
カムランで撮ってて「あれ? 描写の感じが大好きなシグマの50mmF1.4 EX DG HSMに似てる」と思うシーンが何度かありまして。ネガティブな意味で言ってるのではなくて、とてもポジティブな感情です、一応ね。そう思ってシグマのサイトで調べてみたら、レンズ構成が結構近いんですよ。つまり、往年のガウスタイプの標準レンズをそのまま進化させたらこうなる、みたいな素直な写りと収差を楽しめて柔らかい描写がとってもストライク。シグマのこのレンズが好きな人にはカムランは突き刺さると思います。