今年8月にニコンから発売された「Nikon Z 30」は、動画撮影向きの小型・軽量なミラーレスカメラ。動画とかVlogとか、これまで「静観の構え」であったニコン。満を持してリリースされた本機は、果たして後発ゆえの強みはあるのか?

ファインダーを潔く切り取ったスッキリデザイン

■NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR 絞りF5.6 1/200秒 ISO100 WB:5000K ピクチャーコントロール:ビビッド 可変減光フィルター:KANI ND2-400 Valiable 82mm Sidepole 使用

従来からのニコンユーザーであるのなら、まずZシリーズ初のスマートなデザインに目を引かれるだろう。定評のあるEVFを潔く切り取り、全体に凸凹の少ないスッキリとしたボディ。本機はトライポッドグリップを付けっ放しにすることも多いだろうから、出し入れしやすいスマートな形状は、地味ながらVlog撮影時に重宝する。

Vlog撮影時にファインダーを覗くことはほとんどないので、ファインダーがないことでの撮影への支障は特にナシ。ファインダーがどうしても欲しい方は、素直にNikon Z 50かNikon Z fcを選ぶのが賢明だろう。

また、小型といえどニコン独自の深いグリップ仕様は変わらないので、ホールディングは良好。この辺は老舗メーカーゆえのアドバンテージと言えよう。ちなみにウィンドマフは動画撮影時でなければ必要ないのだが、ウサギの耳のような可愛らしさがあったので、撮影中はずっと付けておいた。個人的には、白とかピンクとかグレー以外のカラフルな選択肢があると、もっと楽しくなると思った。

高度な技術や編集も不要の「動画作例集」

ここでの動画はすべて「SmallRig トライポッドグリップ3070 リモコンML-L7セット」と、「SmallRig ウィンドマフ3859」を使用して撮影。今回は1920×1080:60pで撮影して1920×1080:24pで書き出ししている。理由は、電子手ブレ補正を使用したかったのと、編集時にスローモーションを使用したかったからだ。

本機で撮影可能な記録画素数とフレームレートは、3840×2160(4K UHD)は30p/25p/24p、1920×1080は120p/100p/60p/50p/30p/25p/24p、1920×1080スローは30p(4倍)/25p(4倍)/24p(5倍)だが、1920×1080:120p/100pと、1920×1080スロー:30p(4倍)/25p(4倍)/24p(5倍)の撮影では、電子手ブレ補正機能が使用できない。ブレを抑えるために別途ジンバルなどを使用すれば問題ないが、トライポッドグリップを使用する際は、この設定条件を覚えておくと便利だろう。

■使用アクセサリー:SmallRig トライポッドグリップ3070 リモコンML-L7セット/ SmallRig ウィンドマフ3859 可変減光フィルター:KANI ND2-400 Valiable 82mm Sidepole 使用NikonZ30動画作例

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最初の動画はトライポッドグリップを持ち、カメラを前に押し出すように、テンションをかけてカメラのブレを抑えながら横にパンして撮影。動画冒頭の波の音は、内蔵マイクでの同録だ。

2番目のヤドカリの動画も、トライポッドグリップ手持ちで撮影。タッチAF機能を使ってピントを合わせ、AF-Fで追っている。

3番目の動画は自撮り。トライポッドグリップを三脚の形状にして台に設置、リモコンを使って撮影している。

ここで、液晶を開いた状態で自撮りするときの注意点を。カメラ本体のメニュー「自分撮りモード」がONになっていると、リモコンは録画ボタンとシャッターボタンしか動作しない。OFFにすればリモコンすべての機能が使用できるが、AFの枠を移動させる矢印は液晶を折りたたんだ状態が正位置になるため、開いていると逆の方向に動いてしまう。慣れてしまえば簡単なことではあるが、最初は戸惑いが生じるだろう。

4番目の動画は、トライポッドグリップを左手に持って、自分を中心に回転して撮影。編集時に40%のスローモーションにしている。手ブレが気になるようなシーンは編集時にスローにする前提で撮影すると便利だが、本機は電子手ブレ補正を使用するか使用しないかで撮影フレームレートを決定したい。

最後の動画は、助手席に座ってダッシュボードに置くようにして撮影。トライポッドグリップを三脚状に開き、そのままだと倒れてしまうので手で支えるようにしている。多少フロントガラスの映りこみがあるが、電子手ブレ補正が減速帯のガタガタをナチュラルに抑制してくれている。

「ユーザーセッティング機能」は動画と静止画の切り替えに大活躍

■絞りF6.3 1/500秒 WB:5300K ISO100 ※ピクチャーコントロール:スタンダード

本機には人物、犬、猫の顔や瞳を検出する瞳AFと動物AFが搭載されており、正面を向いている人物にはとても効果を感じる。もちろん、ヤドカリにはこれらの自動的な感知AFは作動しないが、このような小さな被写体はタッチAFで、ピントを合わせたい箇所をピンポイントにタッチして合集させると楽だろう。

動画の場合はコントラストが高すぎると見にくいのと、後から露出の微調整ができるようにピクチャーコントロールは「フラット」で撮影することが多い。が、その設定のまま静止画を撮影してしまうとすべてが眠い画像になってしまう。そんな静止画と動画の撮影切り替えの役に立ったのが、露出モードダイヤルにあるユーザーセッティングだ。

静止画だけ撮影しているときは、そこまで必要を感じていなかった機能だが、動画を同時に撮影するようになって有り難みを大きく感じている。特にエントリー機は様々なセッティングをメニューの階層に潜って設定する必要があったりするので、モードダイヤルを回すだけでピクチャーコントロール、ISO感度、撮影モード、オートフォーカスモード、アクティブD-ライティングなどが一発で変換できるのはとても助かる。

動画撮影入門にお勧めのセット

キットレンズの「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」は、ボディに合ったコンパクトサイズで、沈胴式の標準ズームレンズ。広角側の歪みも少なく、スナップを撮り歩くにはピッタリのレンズだ。

NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR

■絞りF5.6 1/250秒 ISO100 WB:5000K ※ADL:弱め ※ピクチャーコントロール:ビビッド 可変減光フィルター:KANI ND2-400 Valiable 82mm Sidepole 使用

自撮りカメラ発売時に毎度のように勃発する「その画角では自撮りがしにくいのではないか」論争は、DXフォーマットで広角が16mm始まりの本機でもあったようだが、最近はカメラを手に持った状態で自撮りをすることはほとんど無く、三脚や台を利用して、カメラと自分の顔とのベストな距離を作り出すことのほうが断然多い。

今回はテスト撮影なので手持ちでの作例撮影も行ったが、上記の理由で広角16mm始まりのレンズでも何らの問題は感じなかった。むしろ無理にワイドな画角で四隅に不自然な歪みが出るほうが後々の編集作業の手間が増えたり、使えない画角となってしまう。ある意味、本機のキットレンズの広角端は「よく練られた」ものであることを実感できた。

■絞りF5.6 1/200秒 ISO100 WB:5000K ※ピクチャーコントロール:ビビッド
可変減光フィルター:KANI ND2-400 Valiable 82mm Sidepole 使用

動画撮影というと、機材の多さや設定の難しさで二の足を踏んでいる静止画ニコンユーザーの方も多いと思う。しかし本機とトライポッドグリップのセットを使い、電子手ブレ補正を効かせた状態で撮影をしてみれば、意外と簡単に綺麗な動画が撮れるもの。動画撮影の入門機としてお勧めしたい機種だ。