Xシリーズ初のボディ内手ブレ補正を採用したX-H1の登場から約4年と少々。ついに新型が登場しました。第5世代目となるXシリーズの実力は如何に!? ということで、同時に発表された超望遠ズームレンズXF150-600mmともども紹介します。

フジ機とは思えないスペック盛り盛り!

ゴツさの増したデザインと、そこはかとなく漂う風格。ご立派になられました。フルサイズ機くらいのサイズだけど「真面目につくるとこのサイズになるよね」って感じ。

画素スペックはX-H1からすると微増となる26MP(X-T4などと同じ)ではあるけれど、新設計かつメモリ積層タイプのいわゆる「超高速読み出し」ができる撮像センサーの搭載がX-H2S最大のハイライト。
処理性能を向上させた最新エンジンとの組み合わせで、フジ機では初となる人物以外の対象についての被写体認識AFを可能とした意欲作だ。

検出対象は動物・鳥・車・バイク・飛行機・電車。ニコンZ 9と比べると少ないように感じるけれど、まぁZ 9みたいにスペック上で細かく刻めば良いってモンでもないと思うのね。キヤノンみたいに、ハッキリと明示はしないものの、柔軟にバシバシ検出させるっていう考え方もあるからね。

モードダイヤルになっちゃったかー、という感情と、ダイヤル操作でカスタムの切り替えができて良いな、という感情が入り乱れます。個人的にはアナログの操作性が好きなんだよねぇ。でも実務的にはH2Sが正義だと思うし。ってことで、操作性は良くも悪くも他社と同等です。

高速性についてもかなり激しく進化しています。なんたってAE/AF追従で最速40コマ/秒でのブラックアウトフリー高速連写が可能っていうのだから、これまでのフジ機を知る身としては「おうおうおう、盛りに盛ったな!」と嬉しいやら寂しいやらの複雑な心境でもあります。

こういった高速センサーと被写体認識の組み合わせといえば、EOS R3やα1、Z 9やOM-1などの各社のハイエンド、もしくはフラッグシップ機の特権。本機の実力は如何ほどか、チェックしてみましょう。

「フツー化路線」が正常進化でもあり、寂しくもあり…。

まず、手に持った感じは「あれ、どことなくα7 IV?」な感じがチラリ。グリップの形状が似てるような…。個人的にはX-H1のグリップのほうが手に合うのだけれど、もちろんこの感じ方には個人差があるので気になる人は実機でチェックしてみて下さい。
ちなみに実機チェックでは軽いレンズと大きくて重いレンズの2パターンで試してみるのが吉です。かなり印象変わるからね。

アナログとデジタルの中間くらいだったX-H1のシャッターダイヤルとISO感度ダイヤル+前後電子ダイヤルの操作系から、X-H2Sではアナログダイヤルが取り払われて、モードダイヤルにジョブチェンジ。モダンというか他社同等の操作系になりました。これはチョッピリ寂しいというか、もう完全にお仕事カメラになったんだな、と。

コチラ側はシンプルというかフジそのもののボタン配置。リグを装着した時の各部の逃げなど、よく考えられていると思いました。バリアングルLCDを開くと冷却ファンをドッキングする穴と電極が配置されています。

加えて前後ダイヤルの「押し込み」操作もなくなりました。後ろダイヤルでの押し込みが拡大表示のX-H1使いとしては少し戸惑うシーンもあったけど、まぁ慣れの問題かと。他社機でダイヤル押し込みのある機種はないと思うし。

EVFを覗いた感じは非常にGood。精細感と表示クオリティが高くて覗きやすさも良好。これはZ 7とかパナS1のEVFを覗いた時と同じくらいの感動があったけれど、個人的には色味がちょっと寒色寄りなことが気になりました。

レンズのリリースボタンは素手だとアクセスが良いんだけど、グローブ付けてるとウッカリ触っちゃう位置なのが少し気になりました。フジはレンズの脱着時、少し渋いというかマウント口径の精度が良くて、脱着が少し硬めなのでレンズが落下することはないんだけどね。

特にフイルムシミュレーションをモノクロ系にすると青被りして見えるのがイマイチ。X-T4などよりは改善しているように見えたけれども、他社機はもっとモノクロ表示しているので。これは「萎えポイント」です。

実写した感じは凄くカッチリしていて、なんと言うか最早どこのメーカーのカメラを使っているのか分からないくらい。フジのカメラって触れればスグに分かるくらい個性的なカメラが多いし、どこか少しだけユルさがあったと思ってるけど、全方位に数値性能から何から改善しまくって、どこにもスキのない優等生になった感じがしました。正常進化で非常に喜ばしいけど、どこか寂しい。これはワガママなのかい?

動物園。XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR=中身、ソニーかと思いましたよ。

意地悪して金網と対象の距離が近い条件でもパチリしたけど、他社と比べてAFが迷い難い印象。被写体認識のパラメーターやアルゴリズムを相当頑張ったんじゃないかな。EOSより撮り易かったですぜ。
■XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR 絞り優先AE(F8.0 1/420秒) マイナス0.7露出補正 ISO12800

「まるでフジ機じゃないみたいだ…」が正直な感想。AFがスコブル良い。400mm超えると手ブレ補正の安定感はEOS R5や6とかの方が良い感じがしますが、本機はR7より上な印象。ま、相性はあると思います。
■XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR 絞り優先AE(F8.0 1/500秒) マイナス0.7露出補正 ISO1600

とりあえず被写体認識させてみよか、と動物園へ。レンズはXF150-600mmでっせ。物理的に大きなレンズだけど、スペック的には納得できるサイズ感。しかも結構軽いです。フードと三脚座込みで約1.8kgなのだけど、手に持っている限りそこまで重さを感じない。AFはチョッパヤで正確無比って感じ。これはもうソニーかな? という印象です。

検出対象を動物で四足動物を狙ってみたけど、かなり、というか相当に優秀。過去にテストしたZ 9のver.1.0台より快適だし、変なところにAF枠が飛んだりしません。ver.2.0では鳥以外の動物を撮ってないから何とも言えないけど、動物園に限って言えばZ 9より良いと思いました。

ちなみにEOS R7よりも良いです。ただしEOSみたいに魚でもなんでも瞳を検出しちゃう懐の深さはナシ。
鳥類についても「鳥」に設定しておけば信頼できる精度でAFが来てましたね。

グッスン(涙)。被写体認識で、あの大キヤノンを上回る日が来ようとは…。

今回テストした限りにおいては、EOS R7と比べて檻や金網に対して引っ張られ難く、AF精度もワンランク上。ついにこの日が…と感慨深いね。
気になったのが、大型レンズと組み合わせた時にグリップが合わなかったこと。親指側が全然合わないので手が痛くなる系でした。ココはかなり気になったけど個人差も大きいと思うので…。

RAW+JPEGでバシバシ連写してみましたが、UHS-ⅡのSDでもバッファフルになるシーンはありませんでした。このあたりもEOS R7と比べて秀でているポイント。暗所でもEVFのレートは安定しているしね。


梅雨戻りの曇天で撮ってますが瞳AFの検出速度と喰い付き、ピント精度に思わずニンマリ。レンズが良いのかISO10000でも使える画質。AWBも安定感が高まった感じ。
■XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR 絞り優先AE(F7.1 1/500秒) マイナス0.7露出補正 ISO10000

ただし、お値段が10万円以上違うから比べちゃ駄目だし、こっちは本気も本気のプロ仕様だからね。本当は変に比べて欲しくはないし、本機はそういうタフな使い方が出来て当然というコンセプトです。視点を変えれば、コスパで言えばR7が当然優れてるってこと。

で、XF150-600mmがスコブル良い。これは傑作かも、と思う写りとAFと取り回しの良さ。直前にRF100-500mmを使ってたこともありますが、写りで言えば最低でも同等以上ですね。新しいだけあると思いました。不満点は、ズームリングのトルク調整が出来ないこと。あとフード先端にゴム巻いて欲しいね。

スナップ。快適性がヤバい! 欲しい!

鳥を撮ろうとしましたが、咄嗟だったので被写体認識させない設定でした。こういう時はワリと至近優先的なAFの振る舞いで、このシーンも左側の木(葉)にAFしています。これはトヨタ的に大変好み。ちなみに最近のキヤノンだと、鳥が飛んでたら鳥にAFしちゃうお利口さん。あれは人を駄目にするね。
■XF16-55mmF2.8 R LM WR 絞り優先AE(F3.2 1/2000秒) マイナス1.3露出補正 ISO500

明らかにEVFが良くなっているのでMFが捗ります。X-H1でも快適だと思っていたけど、精密にMFさせるにはEVFを睨みつけるか拡大表示させる必要がありました。が、本機だと拡大させなくて良いからね。これがドット数の魔力なんだろうね。あと光学系も良くなっています。アイセンサーの感度も個人的にはちょうど良かった。

驚いたのは、カメラマンリターンズ#5の座談会でも触れているMF時にレリーズボタンを半押しするとフォーカスロックされるク●仕様が改善されている…。この調子で従来機についてもファームアップで対応してもらえると良いんだけどね。

レリーズ感はX-H1のフェザータッチが好きでしたが、X-H2Sの方が本人だけでなく周囲に対しても「わかり易さ」があるので現場では楽そう。電子音も結構良いというか好みでした。メカシャッターでも電子音出せるので驚きました。

深いトーンの連続性が良くなってる気がします。だからなのかちょっと立体感が増して写ってるように見えるんだよね。少なくともX-H1より画質は好み。
■XF16-55mmF2.8 R LM WR 絞り優先AE(F4.0 1/80秒) マイナス0.3露出補正 ISO400

で、XF16-55mmF2.8R LM WRと組み合わせて撮っていると快適性がヤバくて我が家へお迎えしたい気持ちが沸騰寸前。トラッキングAFも安定していて良い感じ。OM-1みたいに大暴れすることはないし、Z 9と比べても安心感は上。本当にフジのカメラなのか?

あと、画質というか階調性がちょっと良くなってるような…。間違いなくX-H1よりは良いんだけど、画像チェックしていて過去にX-T4と比べても「あれ?」と思うシーンが何度もありました。ハイライトが伸びてる、とかじゃなくて、階調性のお話です。

まとめ。APS-C機としては現在最強かと。ホントにフジのカメラなんですかね??

実に良い。
内容からするとバーゲンプライスだし今スグにでも欲しい気持ちは否定できません。が、グリップが合わないのとバリアングルが好きじゃないので様子見を決め込んでいます。X-H1の時は惚れ込んでそのまま予約して買ったけどコイツはどうだろう…。

とレビューとは関係無いことを綴りたくなりました。
性能的には文句無くてAPS-Cで凄いカメラが欲しいって人には、現状で唯一の選択肢かと。AFがほぼソニー(褒めてますよ)だし、画質はいつものフジ。ボディの作りはニコンとキヤノンの間くらいで、スキがないです。お仕事機として申し分のない仕上がり…だけど、EVFの接眼部はちょっと曇りやすいかな。拭けば良いという話かも知れないけどね。

伝統的にフジが苦手なシーンのひとつである、ローコントラスト気味で繰り返しパターンの対象。各AFモードで15回AF繰り返してみたけど1度も迷わなかったです。AFの距離の掴み方とか被写体の見つけ方が凄くソニーっぽいんだよね。
■XF16-55mmF2.8 R LM WR 絞り優先AE(F5.0 1/110秒) マイナス0.7露出補正 ISO320

X-H1ユーザーやX-T4ユーザーが買い替えを検討している場合は、何を撮るか? で決めるのが良いと思います。動きモノ撮りたいなら迷わず買い替え推奨。出来ることが全然違うからね。あと動画撮りたい人も買い替えた方が良いと思います。ポートレート系も買い替えた方が楽だろうね。

筆者のようにスナップメインだとその判断は本当に難しくて、手に馴染むとか肌に合うとかで選ぶのが良いと思います。個人的にはX-H1の操作系がスキです。パッとマニュアルにした時により直感的に操作出来るから。デジタルからカメラ使い始めた人であれば関係ないかも知れませんが。