やれることをキッチリやってくるニコン。自分たちにしかやれないことをちゃーんと知っているニコン。イイね。ステキすぎます。もちろん、他のコトだってしっかりやっているハズ。ヤルことやらないでこんなことばかりしていたら、かーちゃんに怒られちゃいますからー(笑)

「ニコンFM2」をリアルタイムで知るジジイも安心の「質感」

ボディデザインの完成度は実にヨイとして、これに相応しいレンズは?? 売れたら出すのかなぁ?

さて、Z fcの登場を知ったとき、唯一にして最大の心配事は「質感」だった。ごまかしが効きやすそうなブラックボディではなくシルバーボディで攻めてくるってんだから、その心意気アッパレなり~と拍手するのと同時に「墓穴を掘るなよ。自らをフェイクに仕立てるようなマネすんなよ」と心の底から心配したのである。

でも、よかった! 実物を見る前に抱いていた、マイナス側にビチッと振り切った疑義の念は、すべて杞憂だった。「ニコンFM2」をリアルタイムで知るジジイ(New FM2を3台所有歴アリ。うち1台は現在も温存)=ワタシにも、100パー納得の外観をZ fcは有している。ホント上手に仕立ててきた。

いにしえのマニュアル機=ニコンFMへのオマージュというのなら、露出補正ダイアルは不要のハズ…なんて堅苦しいことは言わないの。

もちろん、「ボディの薄さ」があっての好印象でもある。Z fcが気になって仕方がないという性癖(?)をお持ちのアナタなら、おそらくはかつて「Df」が見せた、あの「ズドンとしたボディ」にさまざまな思いを抱いている(いた)はず。

でも、ご安心めされ。ミラーレス機であるZ fcが同じ轍を踏もうハズがない。これぞ、ショートフランジバックの"もうひとつの利点"が白日の下に晒された瞬間だ。他社には模倣不能な独自の解釈が堂々と披露された瞬間だといってもいい。

手持ちのNew FM2と比べると、実はまだ少しだけ奥行きのあるボディだったりもするのだけど、それはしかめっ面で比較しなけりゃわからない程度の違いでしかなく、結果ムリしてナニかをネジ伏せている気配も見事に皆無。ダイヤル満載のボディがとても自然に仕上げられているのが嬉しく、そしてちょっぴり不思議な感じ。要するに、イイワケ不要の絶妙な仕立て具合が、まずはZ fcの大きな魅力となっているのである。

最大の特徴は、ダイヤル操作中心の操作系。とはいえ、そこは紛れもない現代っ子、好みに応じシャッター速度や露出補正をコマンドダイヤル操作に変更することもできる。

「上面ダイヤル命!」にも見えるZ fcなのだけど、実際には好みに応じ前後コマンドダイヤルによる今ふうの操作もできる。たとえば露出補正は、ダイヤルを「C」ポジションにすればコマンドダイヤルでの操作に変更でき、さらに露出補正ダイヤルではプラマイ3段調節のところプラマイ5段までの補正が可能に。また、追加設定することなくニコン他機でいうところの「簡易露出補正」操作が可能になるのも特徴のひとつだ。
■NIKKOR Z 16-50mmF3.5-6.3 VR 絞り優先AE(f8)1/250秒 マイナス1.3露出補正 ISOオート(ISO100) WB:オート

そして、「ニコンFM2にインスパイアされた外観デザイン」とニコン自らが称するとおり、Z fcはさりげなくマニュアル機を装うヤツでもある。撮影モード切り替えレバー、および関連表示がとことん控えめな存在に追いやられているのは、設置スペースの問題もあろうこととは思いつつ、基本「ボクはマニュアル一眼レフ(ふうのミラーレス機)ですからぁ」というスタンスだからだと個人的には判断。

ぶっちゃけ、じゃあナンで露出補正ダイヤルがドドーンとソコにあるのぉ? なんていう矛盾を感じないこともナイのだが(マニュアル機に露出補正という発想、および操作は無縁だからね)、そこはまぁ、実用性重視ってことで。でも、どうして「FE系にインスパイアされた」じゃないの? というギモンは、ほんのり残るかな。

中身は、ほぼZ 50ということでご理解ください。

ボクのZ50 と借り物Z fcのツーショット。このとてつもなく大きな見た目の差はナニ? 中身はほぼ一緒(であるハズ)なのにぃ…。

中身は、ほぼZ 50だと思われる。スペックを見比べても、その思いにいささかの揺るぎも生じることはない。よって、Z50を2台所有し「センサーにゴミが付きやすいじゃねーか(怒)」とかナンとかいいながらも、結局は「小型軽量なシステム」として重宝し続けているワタシには、音や感触に関しては大筋で「お馴染みのもの」を感じることになったといっていい。

AF-C+測距点1点選択ならば動体にも余裕で食いつくAFも、オートエリアAFだと測距点が暴れ気味になる傾向もそのまんまだ。トラッキングAFが見せる緩めの追従もキャリーオーバーって感じ。

秒間コマ速は、通常時の最速が約5コマ/秒、拡張で11コマ/秒。ともにAF、AE追従での連続撮影が可能だ。拡張時はRAWが12bit記録に制限され、また撮影中のEVF or モニター表示がアフタービューのパラパラ表示となるが、個人的には実用性に問題はないと判断しており、まったく同一のスペックを持つZ 50では日常けっこう平気で使っている。
■NIKKOR Z 16-50mmF3.5-6.3 VR 絞りF7.1 1/2000秒 WB:オート ISOオート

一方、違いが感じられることがあったのが高感度ノイズリダクションの画処理。超高感度で低コントラストな絵柄を撮ったとき、被写体のエッジ強調がZ 50より明確になることがあり、そんなときはノイズの舐め方もZ 50より少し控えめになる印象だった。つまり、超高感度時にZ 50よりもシャープな印象の画を結ぶことがあったのだ。

ただしこれは、複雑な条件がわずかにブレての差異である可能性、そしてオート設定(デフォルト)のピクチャーコントロールが介在しての結果である可能性を排除できない些細な違いでもある。基本的には「撮れる画は同じ」と思っていて差し支えないだろう。

この精緻な画作りを見よ! 数年前からすっかりフルサイズおやじになっていたワタシは、Z50登場時「今さらAPS-Cはいらないんじゃね?」なんてことを思ったのだが、いざ使ってみたら「圧倒的に小型軽量なボディが生むこの素晴らしい画」にすっかりシてヤラれてしまい認識を改めることになっている。Z fcはその魅力をそのまま引き継いでいるのだ。
■NIKKOR Z 28mmF2.8 プログラムAE(F6.3 1/250秒) マイナス0.7露出補正 ISOオート(ISO100) WB:オート

また、瞳AFや動物AFの有無設定がiメニューからダイレクトにできるようになっている点、そしてそれらのAFがオートエリアAF(測距点自動選択)だけではなくワイドエリアAFでも動作するようになっているところは、Z50よりも数段、利便性を向上させているポイントだ。Z50にも適用して欲しい"進化”がZ fcには確かに備わっているということだ。

個人的には、ゼヒともブラックボディが欲しいところではある。でも、例えばペンタ部の側面に配した「黒革」の存在を強調するのであれば(そうすることでFM系、FE系の印象が強固になる)、まずはシルバーボディであることが必須だったのであろうことは想像に難くない。

NIKKOR Z 28mmF2.8は、見た目イイ具合に"昔のレンズ"を再現しているのだけど、ローレットなどが見事にそのまんまのテイストである反面、距離表示がない、絞りリングがない、前ダマ小さすぎ!! ってな「半分のっぺらぼー」な仕上がりが当時を知るオッサンから言わせると正直、中途半端ではある。あと、VR(手ぶれ補正)を持たないので、ボディ内手ぶれ補正を装備しないZ fcとのコンビでは手ぶれに対し「ほぼ丸腰」の状態になることにも相応の覚悟が必要だ。ただ、写りは満点。ソコはやっぱり現代っ子レンズ。抜かりはない。
■NIKKOR Z 28mmF2.8 絞りF2.8  1/250秒 WB:オート ISOオート(ISO1600)

ブラックボディに関しては、大人しく今後の展開に期待することにして、実現の際にはゼヒ「プレミアムエクステリアキャンペーン第二弾」として「アチコチ塗装が剥げて金色の地金が見えている仕様」の外装ステッカーを用意していただきたいところ(笑)。え? なんだそれって? うーん…いちいち説明するのは面倒くさいんで、わからない人はスルーしちゃってください!!

すっかり「握りの深いグリップを持つボディ」に慣れた手には、ボディを手に持ったまま移動することがしにくい(要するに端的にいうと「持ちにくい」)印象に終始したZ fcだったのだけど、はて? フィルム時代にはそんなことなかったのになぁ…と思ってよく考えてみたら、そうだ、Z fcにはセルフタイマーレバーがないっ! そう、あの頃は、セルフタイマーレバーに中指をかけ、そしてときにはロック解除位置まで引き出した巻き上げレバーに親指をかけ、その上でストラップを手首に巻いて持ち歩いていたんだった。って考えると、Z fcにもセルフタイマーレバーもどき、あってもよかったんじゃなーい? なんて思う。どこぞのカメラみたいに「ピクチャーコントロールがワンタッチで切り替えられるレバーです」なんて名目を立てときゃ問題ないっしょ(笑)
■NIKKOR Z 28mmF2.8 絞り優先AE(f8 1/320秒) WB:オート ISOオート(ISO100) W