「Stay home」の時は、じっくりと自宅で撮影に専念してみませんか? 各ジャンルのエキスパート写真家が、その撮影ノウハウをアドバイスしてくれました。「フラワー編」は山田久美夫さんです。

自宅や近所の花を撮影して楽しもう!

新型コロナウイルスによる緊急事態宣言も解除へ向かうことを望むが、まだ全国で全面解禁とならない場合は家でも撮れる被写体で写真を楽しみたい。なかでも一番手軽に楽しめるのは、自宅の庭や近所の道端などで楽しめる「花の写真」だ。これなら、庭先での撮影でも、想像以上にきれいで魅力的撮影が楽しめる。感覚的には、お花をポートレート感覚で撮ると思えば、イメージしやすいだろう。

「マクロレンズ×ソフトな光」
▲玄関前の鉢植え。素直にマクロレンズで撮影しているが、絞り開放にしてソフトな立体感を。さらに、ソフトな光で柔らかな雰囲気にしたかったので、あえて乳白色で半透明なレジ袋にいれたまま撮影。背景もレジ袋を利用。これなら、手軽にスッキリした撮影ができる。
■ニコン Z 50 40mm F2.8  絞りF4.5 1/320秒 ISO800

▲こちらは上の作例の被写体となったもの。

被写体は、自生の草花でもいいし、花屋さんで売っている小さな鉢植えでもいい。鉢植えなら、好きな花を2-3種類買っておけば、しばらく楽しめる。家で撮ることの最大のメリットは、天候やライティングが自由になること。雨の日の水滴を狙うのもいいし、ソフトな光で柔らかなトーンで撮るのもいい。

「水滴で楽しむ」
▲雨の日でも、玄関先なら気軽に撮影できる。やっぱり、水滴+植物はほんとうにフォトジェニック。もちろん、日々、水をあげるときに撮ってもいいけれど、やっぱり自然の雨が一番ステキ。そんな絶好のチャンスを捉えやすいのも、家撮りの最大のメリットかも。
■パナソニック G9 LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm F2.8 絞りF2.8 1/500秒 ISO800

また、鉢植えなら、いい光やいい背景のところに移動させて撮ることもできるので、より自由度の高い撮影が楽しめる。むしろ、光や背景のいい場所を探し、そこに花を置くくらいの気持ちで撮るといいかもしれない。

撮影機材だが、基本的にマクロ中心の撮影になる。大きめの花なら、普通のレンズでも楽しめるが、小さめの花を狙うなら、マクロレンズを用意したいところ。等倍撮影までカバーできれば、大抵のシーンは撮影できる。

より手軽に楽しむなら、クローズアップレンズや接写リング、リバースリングといった、手頃なマクロ用アクセサリーを手持ちのレンズと併用するのがオススメだ。もちろん、普通に撮ると、図鑑的な感じになりがちなので、そこはひと工夫したいところ。

超接写でイメージの世界へ」
▲花を撮っていると、どうしてもワンパターンになりがち。そんなときは思い切って発想を変えてみるといい。オススメは超接写。マクロレンズでもたかだか等倍で、眼の延長上。なので、接写リングを使って、等倍越えの世界を体験してみたい。とくに、ワイド系レンズや大口径レンズと接写リングを組み合わせると、まさにレンズを通してでなければ楽しめない、写真ならではの甘美な描写を楽しむことだってできる。とはいえ、最初は失敗の山になるので、とにかく枚数撮って、あとから選ぶつもりで頑張ろう!
■パナソニック GX-7 MK2 LUMIX G 14mm F2.5 絞りF2.5 1/8秒 ISO1600

とくに、標準系の明るめの単焦点レンズと、これらのアクセサリーを組み合わせると、切れ味の鋭いマクロレンズとはひと味違う作品を楽しめる。そして絞り開放で撮ると、極端に浅い被写界深度と、レンズの収差によりソフトで雰囲気のある作品を楽しめるので、ぜひチャレンジしたい。

撮影・解説:山田久美夫

写真家。1961年横浜生まれ。高校時代の1978年に初の個展を開催。1979年よりフリーのフォトグラファーとなる。1983年よりカメラ専門誌に執筆開始。数々の雑誌やウェブ等で、カメラやレンズについて執筆。1999年より「DigitalCamera.jp」を運営。写真集「Natural」(1994年)、「ツァイスのふるさとを訪ねて」(1996年)、「ドイツ・ 色と光」(2000年)、「東寺の四季」(2016年)を出版。作品展「Natural」(1994年)、「神戸・色と光」(1995年)、「Flower Portrait」(2014年)、「東寺の四季」(2016年)、「ヨコハマの星空」(2017年) など、これまで国内外で40回以上の個展を開催。デジタルカメラグランプリ審査委員長。カメラグランプリ2017特別選考委員。