この記事は月刊カメラマン誌で連載されていた「ジャンル別フォト講座・ネイチャー」の続編です。講師は写真家・山本純一さんです。

アングルの違いで写真表現はまったく異なる!

全国的な暖冬と少雪のせいで桜の開花が例年より早く、北海道は連休前に満開となりました。今は道内最東端のチシマザクラが満開を迎える季節です。さて今回のテーマは、アングルの違いで写真表現が全く違った印象になるお話です。作例を使って、わかり易く説明します。

アングルとは、見る角度、視点、観点、角、隅という意味合いです。写真の世界では、良く使う言葉ですね。たとえば「この写真、ベストアングルですね」、とか「別のアングルで捉えてみてはどう」、「アングルがいまひとつですね」など撮影会や講習会の批評やコンテスト等で良く耳にします。

被写体を撮影者本人が、どう捉えて第三者に伝えようかと考えた時に、一番迷うのがアングルなのです。私は仕事柄、撮影指導や審査で、講評の最後に必ず良い点を指摘するように心がけています。撮影したいという意欲を失わせるのが、最も良くないことです。

写真は楽しくがモットーですから、楽しいことはイコール上手くなる一番の近道です。アングルには、目線の位置、目線より高い位置、そして低い位置のの3種類が一般的です。三脚を使う撮影の場合、エレベータを一杯に伸ばしても目線までしか伸びない三脚はお勧めしません。

作例001「緑流の渓谷」6月上旬 樽前ガロー
▲三脚を目線より40cm上げて、バリアングル液晶を使い撮影。目線より遥かに髙い位置から俯瞰する渓谷は、見た目よりダイナミック。

■キヤノンEOS R EF16-35mmF2.8L Ⅲ USM(16mmで撮影)絞り優先AE(F8・1/4秒) WB:太陽光 
ISO400 ディテール重視 C-PLフィルター 三脚仕様

上の作例001と下の作例002は、苔が綺麗な渓谷を16mmの広角レンズを使い、前景に苔の岩をポイントにして、ハイとローアングルで撮影しています。見え方の違いは一目瞭然ですね。ハイアングルで捉えた岩肌は、画面から飛び出して来そうな迫力と遠近感を強く感じます。ローアングルでは、同じ画角でも少しおとなしい絵になります。

作例002
▲ほぼ同じ位置から三脚を水面ギリギリまで下げて、超ローアングルで撮影。バリアングル液晶モニターのおかげで構図の変更が楽。
■キヤノンEOS R EF16-35mm F2.8L Ⅲ USM(16mmで撮影) 絞り優先AE(F11・1秒) WB:太陽光 
ISO400 ディテール重視 C-PLフィルター 三脚使用

作例003「輪廻」6月上旬 苫小牧口無沼
▲干上がった沼から白骨のような枯れ木が現れ、新緑になった背景との対比が面白い。
■キヤノンEOS R EF11-24mmF4L USM(11mmで撮影) 絞り優先AE(F22・1/60秒) マイナス0.7露出補正 WB:太陽光 ISO1600 ディテール重視 手持ち撮影 

上の作例003と下の作例004は、超広角11mmレンズでの撮り比べです。こちらは逆に、ローアングルのほうが枯れ木の樹形の臨場感が強く伝わります。どちらを使うかは作者の判断ですが、一番のポイントは、目線のアングル以外も積極的にトライすることです。後から選択するレパートリーを増やすことが上達の近道ですね。

▲超ローアングルで枯れ木に接近して、画面から突き出すような構図を狙う。超広角独特の遠近感が画面に緊張感を与えている。
■キヤノンEOS R EF11-24mmF4L USM(11mmで撮影) 絞り優先AE(F22・1/30秒) マイナス1.0露出補正 WB:太陽光 ISO1600 ディテール重視 手持ち撮影 

キメッポイント!

1.目線以外のアングルを貪欲に探そう!
2.迷ったらハイとローも撮影する!
3.近づける被写体はより大胆なアングルでトライ!

撮影と解説:山本純一

1960年帯広市生まれ、札幌市在住。23年間の会社員生活を経て、2007年「Pure Peak Photo」を設立しフリーランスの写真家として活動。現在北海道の自然風景と動物をテーマに撮影を続けている。2012 年初の写真集「越冬」を中西出版(株) から刊行。(公)日本写真家協会会員(JPS)、日本自然科学写真協会会員(SSP)、「楽しい写真教室」主宰、道新文化センター講師、全日本写真連盟関東本部委員。