日本の鉄道はJR線だけでおよそ2 万km に及ぶ。国内の列車が素晴らしい景色の中を日々駆け抜ける様は「珠玉の絶景」の宝庫といえる。ここでは「見たことがない撮影地」や「写真で見たことはあるが、行き方がわからない撮影地」を中心に厳選した。今回も東日本編。この記事の詳細については弊社刊ムック「鉄道写真の奥義」をご参照ください。
■文・写真/杉山 慧

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奥羽本線 赤岩~板谷

山形新幹線は在来線の奥羽本線と線路を共有するミニ新幹線方式を採っている。在来線の線路を改修したので、奥羽山脈を越える福島~米沢間の峠道は険しく、スピードダウンの原因となっているが、代わりに山々の景色をゆっくりと楽しむことができる区間だ。

作例はE3系新幹線「つばさ」。山形県の県鳥「オシドリ」をイメージした鮮やかなカラーが、日に日に濃さを増す山々の景色に映える。

■140mm 絞りF8 1/800秒 ISO400 ※2019年6月2日9時56分撮影

撮影地は未舗装の林道上だが、路面は整備されているためオフロード車でなくても到達可能。福島駅前から県道70号を進み、東北自動車道を過ぎて4km進むと「市内庭坂→」と標識のある交差点がある。この交差点を右折すると広域農道で、2.4km進むと、撮影地へ繋がる道路の交差点だ。

ここを左手前方向に入り、富山地区へ走る。集落が切れてしばらくして未舗装となる。高津森山の南側から回り込むと、視界が開け眼下に奥羽本線が見える。さらに200m進むとアンテナが立っており、その付近が撮影地だ。

磐越西線 磐梯熱海~中山宿

磐越西線(郡山~新津)のうち、郡山~喜多方間は電化されている。普通列車は基本的にE721系だが、観光列車「フルーティアふくしま」を連結する列車は719系で運転される。

作例はクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」1泊2日コース(運転日注意)。10両編成と長いので、収まりきらない編成後部を樹木で隠した。木々の間から何度か見え隠れしながら走ってくるので、好みの構図を見つけたい。紅葉も綺麗な場所だ。

■102mm 絞りF8 1/1000秒 ISO800 ※2019年6月2日12時30分撮影

撮影地へは徒歩でしかアクセスできない。磐梯熱海の温泉街の外れが登山口だ。車は磐梯熱海温泉を抜けて国道49号に合流する手前の駐車帯に停めよう。駐車帯の50m東側にある橋を渡ったら右折。ここが林道の入口で許可車両以外は入れない。

20分程緩い上り勾配の林道を歩くと、頭上を高圧電線が横切っている。左手の斜面を見ると、高圧電線に沿って樹木が伐採されており獣道がある。この獣道に入って2本目となる高圧電線の支柱付近から磐越西線が見下ろせる。

上越線 津久田~岩本

群馬県らしい河岸段丘を青い客車が走る。磐越西線を臨時列車として走った青い12系客車が、客車の配置区(車庫)がある高崎まで回送される光景で、上越線ではたびたび見られる。定期列車で211系の普通列車と、EH200形牽引の貨物列車が運転される他、臨時列車で「SLぐんま みなかみ」や「TRAIN SUITE 四季島」が撮影できる。

■130mm 絞りF10 1/800秒 ISO400 2019年6月25日13時56分撮影

作例は左側のトンネルから続く築堤上に5両編成を収めた。もっと右にカメラを振ると利根川の鉄橋上を行く列車を収めることができる。秋の紅葉の季節でも15時半頃までは日が当たる。

国道17号を渋川方面から走り、津久田の対岸を通過し進路を東に取ると「←林道桜木上野線」と書かれた道路標識に出会う。この標識に従って左折。舗装されたこの林道を1.4km進むと、左カーブの右側に獣道が見える。駐車は付近の広い場所に。獣道の先には高圧電線の鉄塔があるが、途中で木々の間から上越線を見下ろせる。獣道から斜面を少し降りたあたりが一番綺麗に見渡せる撮影地だ。

撮影・解説:杉山慧

1992年11月、静岡県出身。幼少期より鉄道に興味を持ち、日本大学芸術学部写真学科卒業後、ネコ・パブリッシングに入社し月刊誌[レイル・マガジン]の編集に携わる。2017年3月、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。2018年12月レイルマンフォトオフィスを退社し、フリーの鉄道写真家として独立。独立後は月刊誌[鉄道ジャーナル]での写真撮影や原稿執筆のほか、レンズメーカー「タムロン」主催するに「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」で審査員を務めた。