日本の鉄道はJR線だけでおよそ2 万km に及ぶ。国内の列車が素晴らしい景色の中を日々駆け抜ける様は「珠玉の絶景」の宝庫といえる。ここでは「見たことがない撮影地」や「写真で見たことはあるが、行き方がわからない撮影地」を中心に厳選した。今回は長野・千葉編。この記事の詳細については弊社刊ムック「鉄道写真の奥義」をご参照ください。
■文・写真/杉山 慧

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小海線 佐久広瀬~佐久海ノ口

八ヶ岳高原線の愛称をもつ小海線は、小淵沢付近の大築堤をはじめとする名撮影地を数多く抱えている。普通列車に使われるのはキハ110系で、その素朴なデザインは雄大な景色に良く溶け込んでいる。作例は昼前の小淵沢行き。もう一本早い9時台の列車なら正面にも光が当たるが、木々の立体感がなくなってしまうので、好みが分かれるところ。背後の八ヶ岳が見えない場合は、手前の山々と列車だけを切り取っても面白い。

■70mm 絞りF8 1/800秒 ISO800 ※2019年6月26日11時36分撮影

高圧電線の支柱「No.84」の近くで撮影する。佐久海ノ口方面から国道141号を走り、上り坂の途中で「←広瀬」の標識に従い県道68号に入る。800m程進むと、左側に下る細い道がある。この道に入って、小海線の鉄橋下まで進むと海ノ口変電所がある。付近の広い場所に車を止めたら、登山開始だ。

変電所の西側に「No.85」と書かれた小さな黄色い看板がある。ここから撮影地まで、大きく方向が変わるとき地点には必ずこの黄色い看板があり、それに従えば良い。「No.85」の支柱まで来たら、続いて「No.84」の支柱を目指す。この先の小さな尾根を終えた次の尾根にある「No.84」の支柱を通り過ぎるとすぐに視界が開け撮影地だ。駐車場からは25分程を要する。

篠ノ井線 坂北~聖高原

篠ノ井線は一本松峠経由で長野盆地と松本盆地を結んでいる。普通列車は211系が主力で、日中は383系の特急「(ワイドビュー)しなの」が1時間おきに運転されている。

■86mm 絞りF8 1/800秒 ISO400 ※2019年6月26日7時23分撮影

作例は211系の普通列車。本数の多い朝が狙い目で、EH200形牽引の石油貨物列車5463レ(始発駅の根岸金・土曜日発は運休)は6時20分頃の通過だ。残雪を抱く山々は鹿島槍ヶ岳(画面中央左側)や五竜岳(画面中央右側)で、撮影場所から50km以上離れているにも関わらず迫力満点である。

撮影地は青柳城趾。国道403号の「六工」交差点から坂北駅を目指し、筑北小学校の北東に沿う道を進む。あとは道なりに山道を登っていく。所々、青柳城趾の方向を示す標識がある。青柳城趾の南側にある駐車場に車を止めたら、そこからは徒歩で向かう。門の近くに城内の地図が描かれた看板があるので、事前に見ておこう。道なりにアップダウンを繰り返すこと10分程で、撮影地の「一の郭」に到達できる。

内房線 上総湊~竹岡

東京湾に沿って房総半島を進む内房線。山が海に近づくことで、俯瞰ができる数少ない撮影地を紹介しよう。1連のトラスが印象的な水色の鉄橋は海に良く馴染む。作例は209系の普通列車。基本的に普通列車オンリーの区間だが、週末を中心に特急「新宿さざなみ」などの臨時列車が運転されるので狙ってみるとよいだろう。広いレンズで長編成を撮る場合は鉄橋前後の住宅をうまく配置しよう。

■200mm 絞りF8 1/1000秒 ISO200 ※2019年8月1日9時53分撮影

住宅地の裏手にある山が撮影地。急勾配だが、車で神社の手前で終端となる地点まで行くことができる。神社の手前で住宅の横を歩行者が通れる道がある。この道の突き当たりを左に進むと、尾根筋をあがる道と突き当たるので、そこを右に曲がり、山へあがっていく。獣道は見えづらいが、時々赤いテープが木にくくりつけられているのが目印である。

途中、腰の高さ程度の切通しを進んだら、あとは線路側の斜面にできた獣道を進んでいくと撮影地である。航空写真を見ると樹木が三角形に抜けている部分なので参考にしておきたい。

撮影・解説:杉山慧

1992年11月、静岡県出身。幼少期より鉄道に興味を持ち、日本大学芸術学部写真学科卒業後、ネコ・パブリッシングに入社し月刊誌[レイル・マガジン]の編集に携わる。2017年3月、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。2018年12月レイルマンフォトオフィスを退社し、フリーの鉄道写真家として独立。独立後は月刊誌[鉄道ジャーナル]での写真撮影や原稿執筆のほか、レンズメーカー「タムロン」主催するに「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」で審査員を務めた。