小林紀晴さんの写真展「孵化する夜の啼き声」が銀座ニコンサロンにて開催中です。
小林さんは、1995年にデビュー作でありベストセラーとなった『アジアン·ジャパニーズ』以降、写真制作はもとより、ノンフィクションや小説の執筆など多岐に渡る活動をされています。

古くから継承され続ける祭事、祭祀を巡る旅

小林さんはアジアを旅することに多くの時間を費やした20代を経て、海外ばかりに目を向けていた反動からか、30代半ばから頻繁に日本を旅するようになったそうです。とりわけ日本全国の聖なる地に魅かれ、各地に伝わる祭りや神事を撮影。その作品を「遠くから来た舟」として発表し、2013年の第22回林忠彦賞を受賞されています。

その後、2017年には写真紀行として、日本各地の奇祭を訪ね撮影した『ニッポンの奇祭』も出版されています。本展では、小林さんがここ6年ほどの間で、日本各地で古くから伝承されているという40ほどの祭事、祭祀などを巡り撮影した作品57点が展示されています。

展示風景。会場では、長野県諏訪地方で開催される「御柱祭」や岩手県奥州市の「蘇民祭」、長野県阿南町の「和合の念仏踊り」など、私もはじめて知る日本各地の祭りの写真が数多く展示されていました。

会場は、壁面全体から中央の柱まで大小様々なプリントで展示構成され、日本全国の祭事、祭祀などが混在する世界が広がります。まるで見知らぬトンネルを抜けると、時空が変化し、自分が原始の、そしていつかの未来にいるような、不思議な感覚に囚われるかのようでした。

写真家の小林紀晴さん。
小林さんの故郷、長野県諏訪で数え年の7年毎に開催する「御柱祭」の起源は、平安初期の桓武天皇(781~ 806)の時代にまで遡るともいわれ、小林さんのお祖父さんやお父さん、そして小林さんご自身も氏子として参加されていたそうです。

写真左)沖縄の宮古島に伝わる厄払いの伝統行事「パーントゥ」。
年に1度、仮面をつけ、泥だらけの体に蔓草を巻き付けた3体の来訪神「パーントゥ」が、集落を回り島民や建物に泥を塗りつけ、厄払いをするお祭りです。この作品では島民に怖がられる存在の「パーントゥ」が、島民たちの少し後ろに一緒に座る光景が、どことなく奇妙で微笑ましく感じました。

会場では、赤々舎から出版された本展と同名の写真集『孵化する夜の啼き声』(3,300円+税) も販売中です。

展覧会情報

小林紀晴写真展「孵化する夜の啼き声」

【東京】
会期:2019年12月11日(水) ~ 2019年12月24日(火)
会場:銀座ニコンサロン
住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA 1階  
電話:03-5537-1469
開館時間:10:30~18:30(最終日15:00まで)
休館日:日曜日

【大阪】
会期:2020年1月9日(木) ~ 2020年1月22日(水)
会場:大阪ニコンサロン
住所:大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト·オフィスタワー13階
電話:06-6348-9698
開館時間:10:30~18:30(最終日15:00まで)
休館日:日曜日

小林紀晴(コバヤシ キセイ)さんプロフィール

1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真科卒業。
新聞社にカメラマンとして入社後、1991年に独立。
1995年に『ASIAN JAPANES』(センター出版局・1995年) でデビュー。
2000年から2002年まで渡米(N.Y.)。
1997年 「DAYS ASIA」 日本写真協会新人賞、2013年「遠くから来た舟」 第22回林忠彦賞を受賞。
写真集、著書に『homeland』(NTT出版・1999年)、『days new york』(平凡社・2003年)、『はなはねに』(小林紀晴写真事務所・2008年)、『kemonomichi』(冬青社・2013年)、『ニッポンの奇祭』(講談社・2017年)、『見知らぬ記憶』(平凡社・2018年)、『愛のかたち』(河出文庫・2019年)、『まばゆい残像 そこに金子光晴がいた』(産業編集センター・2019年)、『孵化する夜の啼き声』(赤々舎・2019年)など多数。東京工芸大学芸術学部写真学科教授。ニッコールクラブ顧問。