平成の世との別れのとき。
そのさよならの向こう側に、燻るように、しかしギラギラと輝き続ける昭和が、
確かに私たちを照らしているのを感じる。
失われゆく昭和よ、来たるべき次代を照らす文化とならんことを。
音楽、ファッション、映画などのサブカルを中心にヴィンテージまみれの青春を20年以上ひた走る「おじさん女子」2人組L’amritaが、昭和歌謡の世界を、令和を迎えた日本を舞台に繰り広げます。

下北沢のNo.1お花見スポット 北沢川緑道公園

下北沢という駅はもちろんあるけれど、下北沢という町名は実は存在しません。
通常、下北沢と呼ばれる地域はその駅の周辺1キロ四方にも満たない小さな町で、北沢・代田・代沢の3つに分かれています。
今日はその3つのうち、大きなお屋敷の並ぶ代沢へお散歩してみることにしました。

下北沢から三軒茶屋に向かう「茶沢通り」を南下していくと、北沢川緑道公園があります。
赤堤から池尻まで4.3キロ、三宿のあたりで目黒川となる北沢川沿いの緑道です。
この辺りはソメイヨシノがずらりと植えられていて、桜の季節には夢のような光景が広がります。
平日の昼間は人出もほとんどないので、私が毎年一人でぶらぶらのんびりお花見を楽しむとっておきの場所なんです。

小川に架かる橋で記念撮影風の1枚。こんなふうに気ままにおしゃべりしている人もけっこういるのですが、公園とはいえ川沿いの緑道なのでとにかく細長く、住宅地の中を縫うような形なので普通の公園と比べてもかなり静かなんです。
セーヌ川沿いの恋人同士のように、愛をささやきあうのにもピッタリの場所です。

「世田谷邪宗門」 店構えとは裏腹におしゃべりに花の咲く明るい喫茶店

代沢の住宅街の中にぽつりとあるのがここ「世田谷邪宗門」。お店の名前に地名が付いていることからわかるように、全国に8店舗の邪宗門がありました。現在2店舗が閉店し、残る6店のうちのひとつがここです。
グループ最初のお店、国立のマスターは元船乗りでマジシャン。そこへマジック仲間が集まるようになり、そのなかから同じ価値観の者がひとり、またひとりと純喫茶を始めました。いずれも名前は「邪宗門」。こうしてチェーン店とはまたちょっと違う、邪宗門グループができあがりました。

このグループには鉄の掟があり、一つは儲からないこと。そしてもう一つは門主がマジシャンであること。
ここ世田谷邪宗門の門主はあの初代引田天功に手ほどきを受けたマジシャンなのだそうです。

店の中はたくさんのアンティークランプと火縄銃、奥の席には蓄音機に美空ひばりのレコードがずらり。この不思議な雰囲気のせいか有名アニメの舞台にもなったそうで、「君たちも聖地巡礼?」と常連さんが声を掛けてくださいました。
いえいえ、私たちは昭和を探しに…と言うと、出るわ出るわ昭和のお話。

下北沢周辺の街の歴史を研究するグループの会員だというその常連さんから、戦後すぐの下北沢の姿をおさめた写真満載のリーフレットを頂き、しばしのレクチャータイム。
にこやかな店員さんたちも交え、たくさんの楽しいおしゃべりに花が咲きます。
劇団主宰で芸能スクールの講師も務める佐野さんの聞き上手が光っていました…

甘いものが欲しくなった私たち、ここで名物のあんみつコーヒー800円をいただくことに。
あんみつにコーヒーシロップをかけていただくこのメニュー、門主がコーヒーを飲みながらあんパンをかじっていて思いついたとか。寒天に絡んだシロップが香ばしくてよく合います。

そのほかにはレアチーズケーキとコーヒー900円、邪宗門トマトジュース600円、アイスコーヒー570円、ココア700円を。小ぶりなテーブルがあっという間にいっぱいに…

ちょっと薄暗い奥の席も趣きあっていいけれど、夕方の窓際の席は差し込む光が格別。
1ページ目の白黒写真がとっても幻想的で夢みたいな1枚になりました。そのまま二人が光に溶けて消えていってしまうような…
地獄の稽古を共に戦い抜いてきた劇団員(男子)同士だなんて思えない!さすが俳優さんです!

佐野さんと新城さんの演技力に感心しきりの私たち。素顔のふたりをすっかり忘れてしまいそうです。
このシリーズ最終回となる来週はどんな顔を見せてくれるのでしょうか…
次回更新は9月27日(金)です。お楽しみに♪

モデル協力:東京ミルクホール(劇団)

www.tokyomilkhall.com

2003年9月旗揚げ。女人禁制の男の園。
≪最高に好感をもって呆れられる舞台≫を構築し、「若手演出家コンクール2004」(日本演出者協会主催)で最優秀賞を受賞。
2014年、第20回本公演をもって解散を宣言するも、イベントなど地下活動を継続中。
劇団事務所には、本公演再開を望むハガキの山がうず高く積まれている。2017年、再始動。

【次回公演】
東京ミルクホール第23回本公演「レッツゴーギャング」
2019年10月9日(水)〜14日(月・祝)
下北沢 小劇場B1

モデル:佐野バビ市(脚本家/舞台演出家/俳優/女装家/劇団主宰)

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演出家・喰始(WAHAHA本舗)、荻田浩一(宝塚歌劇団)に師事したのち劇団東京ミルクホール旗揚げ。
日本演出者協会・若手演出家コンクール最優秀賞受賞。
役者バンド「こころは三河」でギターと司会を担当。

モデル:新城侑樹(俳優)

twitter.com

国立舞鶴工業高専 機械工学科 3年次修了
立教大学文学部史学科 卒
大学在学中は演劇サークルに所属。
社会人生活を経て、2012年5月東京ミルクホール入団。
2012年9月公演『たけしの挑戦状』以降、全ての本公演に出演。
どんな要求にも100%で応えるべく率先して無茶をするメンタリティ、演技力を勢いと運動量でカバーする姿勢には賛否両論あり。
広くて浅いオタク知識を活かしてチャンマツ(同劇団研究生)と始めたポッドキャスト番組『東京ミルク放送局』を2015年3月より毎週配信中。

写真・文:L'amrita(ラ・ミュリタ)

写真家・齋藤真理と文筆家・早川瑞穂からなる創作ユニット。なんでもない毎日を、ちょっとロマンティックに、ノスタルジックに。『すべてのひとがそれぞれの物語の主人公』をテーマに活動する女性ふたりの創作ユニットです。昭和レトロ、ヴィンテージ、60年代~70年代の音楽や映画など、ふたりの趣味を活かした懐かしくて温かみのある雰囲気の作品作りを得意としています。

www.lamrita.tokyo

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