写真家の紀成道さんは、いま現在、日本で起こっているものごとに焦点をあて、日本の社会が直面している課題をレンズを通して見つめることで、人々がいかにその課題に取り組み、乗り越えていくかを記録しています。そして、そこには日本が、日本たらしめている何かが写り込んでいるといいます。

「MOTHER」-鉄は生きもの-

「MOTHER」と題された今回の写真展は、高度経済成長期に誕生した製鉄所を舞台にしています。高炉を母体に例え、燃えさかる炎の中から激しく輝き生まれでる鉄、その生きものである鉄と全身全霊で向き合う技術者たちを、紀さんは追います。やがて鋼の製品となって現れた姿は、無機質で均質化し美しく、高炉で見せた姿とは、あまりに対照的です。

写真家の紀成道さん。今回のキービジュアルである作品に写る2人の技術者は、高度経済成長期から製鉄所と共に成長・発展をしてきた世代と、今、新たに経験を積み技術を継承するミレニアル世代。会場は、暗闇の中で溶けた鉄が浮かび上がり、生命体としての躍動感を真近で感じられる展示となり、とてもかっこいい。

また、高度経済成長期から製鉄所を支え、共に成長・発展をしてきた世代と、引き継ぐべきところを継承しながらも、すでに多くのものや環境が用意された中で仕事を学び、経験を積むミレニアル世代。その世代間に生まれる避けがたいギャップを、移り変わる街の風景と共に写し撮ります。(ミレニアル世代は2000年代に成人または社会人になる世代を指す。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多い。)

無機質で均質な姿となって現れた鋼の製品たち。

高度経済成長期時代と、現在の街の景色の移り変わりを可視化。

紀成道 写真展「MOTHER」展覧会情報

【東京】
会場:キヤノンギャラリー銀座
住所:東京都中央区銀座3-9-7 TEL:03-3542-1860
会期:2019年8月1日(木)~8月9日(金)
開館時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
休館日:日曜日、祝日
会場では、今回の写真展と同タイトルの写真集「MOTHER」(赤々舎発)を先行販売しています。

【大阪】
会場:キヤノンギャラリー大阪
住所:大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F TEL:06-7739-2125
会期:2019年10月24日(木)~10月30日(水)
開館時間:10時00分~18時00分(最終日は15時まで)
休館日:日曜日、祝日

トークイベント

【東京】
2019年8月3日(土) 13時~「鉄技を継ぐために」
ゲストに永田和宏さん(東京工業大学名誉教授・東京藝術大学元教授)をお迎えして、ギャラリー内にてギャラリートークが開催されます。

【大阪】
2019年10月26日(土) 13時~「高度成長と幸福論」
ゲストに新宮秀夫さん(京都大学名誉教授・NPO京都エネカン代表)をお迎えして、ギャラリー内にてギャラリートークが開催されます。

紀成道(きの せいどう)さんプロフィール

1978年、愛知県名古屋市生まれ。京都大学工学部(鉄冶金専攻)卒業。在学中に1年間休学し、カメラを担いで海外を放浪。帰国後、大学での研究生活に戻ったものの、京都の里山で農業を楽しむ人々にレンズを向けているうちに、写真の道に進むことを決意。大学院を中退し、フォトグラファーとして上京。

受賞歴
2018年 土門拳賞 最終候補
2018年 林忠彦賞 最終候補
2018年 国際写真センター写真集ライブラリー収蔵
2018年 日本ブックデザイン賞 入選
2017年 ルーシー写真集賞 最終候補
2016年 コニカミノルタフォト・プレミオ年度大賞
2009年 International Photography Awards (米国)入選

写真集
2019年 「Mother」(赤々舎刊)
2017年 「Touch the forest,touched by the forest.」(赤々舎刊)

展示
2017年 「Touch the forest,touched by the forest.」銀座ニコンサロン
2016年 「Touch the forest,touched by the forest.」コニカミノルタプラザ

メディア掲載
2018年 日本写真年鑑
2016年 キャパ6月号
2015年 風の旅人 49号
2014年 デイズジャパン Vol.12 No.1