みなさん、こんにちは。アルカスイス互換…誰が言い出したのかは知りませんが、いつの間にかこのフレーズは当たり前に使われるようになりました。今月は、この「アルカスイス互換」に深く迫ってみたいと思います。

サードパーティ製を購入する際は品質に注意!

アルカスイス互換の雲台にもっとも多く利用されているのは、L字型のアダプターです。アルカスイスにもあってLブラケットとネーミングされています。

カメラボディに取り付けると、ヨコ位置とタテ位置の入れ替えが瞬時に行える便利用品です。レンズの光軸がほとんど変わらないので画面構成を修正する必要がないのも便利です。またタテ位置のときでもカメラの重心が三脚の中心からズレないので小型のカーボン三脚でも不安定になりません。

ところでこのL型プレートは驚くほど多くのメーカーから販売されています。アベっちが愛用しているのはReally Right Stuff(リアリーライトスタッフ)製のマルチカメラプレート(汎用モデル)。これがニコンD850にピッタリです。

https://www.ginichi.com/shop/products/list.php?category_id=1660

▲アルカスイス互換の雲台に利用されているL字型のアダプター。リアリーライトスタッフ(Really Right Stuff=RRS)は1990年創業。プロやハイアマチュア向けの三脚や雲台関係の用品を製造している。銀一株式会社が日本国内への販売・サポートを担当している。

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▲リアリーライトスタッフのマルチカメラプレート(汎用タイプ)はニコンD850にピッタリ。確かな物作りを追求しており、性能はもちろん、見た目や質感、操作感まで追求されている。

▲リアリーライトスタッフのL字型アダプターを使用してヨコ位置で固定。

▲ヨコ位置からタテ位置の変更もスムーズ。アッという間にできる。レンズの光軸がほとんどずれないのが有難い。

ただしサードパーティ製の互換品といってもそれなりのお値段がします。

ある通販サイトでは、大陸製で990円というのもありました。比べてみるとよく似ていますが、まったくの別物でした。驚いたのはL字型の角度が90度になっていませんでした。なんとカメラはタテ位置ではなく斜めに固定されます。雲台には固定できるのでアルカスイス互換には違いないですが「安物買いの…」にならないように気をつけましょう。

▲左はリアリーライトスタッフのマルチカメラプレート(約1万9000円)。右はある通販サイトで購入した990円で販売されていた大陸製。精度も感触もすべてが異なる。

かつてクイックシュー代わりに台座の一部が開いていたジッツオの自由雲台

なんと2017年に創業100周年を迎えた三脚の名門Gitzo(ジッツォ)からもアルカスイス互換の雲台が登場しています。独自の規格をゴリ押しすることなくアルカスイス互換に乗るところが、ある意味老舗の余裕なのかもしれません。

ちなみに今から30年ほど前のジッツオの自由雲台は、台座の一部が開いていて、固定用のネジを落として困ることがありました。“なんでこんな切れ込みがあるんだ”と文句を言った人も多かったはずです。実はジッツオは「固定ネジはカメラに取り付けて、クイックシューのように出し入れして使ってほしい」と思っていたのです。このことを知っている人は少ないですね。たかが三脚、されど三脚な物語です。現場からは以上です!

▲30年ほど前のジッツオの自由雲台

撮影:阿部秀之

ヨーロッパの風景やスナップ、ポートレート、コマーシャルなど幅広いジャンルを撮影する。87年よりカメラグランプリ選考委員。

モデル:水穂まき

この記事は月刊カメラマン2018年6月号に掲載時のものです。