写真の新たな媒体、SNS( ソーシャル・ネットワーク・サービス)この連載では写真家・中野幸英さんが、SNS から生まれた新たな文法= リテラシーを実際に投稿者と会って検証・共有していきます。今回は瞳さん(20歳・学生)をご紹介します。この記事は月刊カメラマンに掲載されたものです。

突き抜けた趣味

陽も落ちてきたのでカフェを出る。すでに夕方の様な低い日射しの中、瞳さんは迷わず森の中に突っ込んでいく。大きな広場にはまるで興味が無いように、奥に進む足取りに強さを感じる。

池の反射には吸い寄せられるようにしゃがみ、水面へ近づき、アングルを探る。話しかけられる様な雰囲気ではない。取材とはいえ、話しかけて邪魔をするのが申し訳ない。

写真学校などでは、まず最初に単焦点レンズをスナップで使い自分が動くことを鍛えるというが、彼女はそれを地でやっている。授業でもなく仕事でもない、20 歳の女の子が冬の藪の中に分け入ってくことに感心していた。

さっきカフェでは「遊びの中にカメラがある感じ」だと話していたが、一転遊びとは思えない動きだ。これほど真剣になる遊びがあれば楽しいに違いない。「フォローが増えて、見てもらえることが純粋に嬉しい」と話していた。

SNS のインサイトと呼ばれるセルフ分析ページでは、投稿が一番見られる時間帯を探っているとも話していた。だが、見られるだけではない。彼女は撮影からカメラ選びから、すべてを楽しんでいる。

完全な一つのツール

瞳さんは新宿御苑の中で何回も自分のカメラを撮った。時にはカメラやフィルムをいろいろな場所に置いて。カメラへの愛着と、好きなことを楽しめている自信のようなものを彼女から感じる。

瞳さんが撮っているのを後ろから少し離れて見る。彼女は喋りながらも光に呼ばれるように木陰に入り込んでいく。途中時季外れの桜が咲いていたのを見つけ、今度は鞄からiPhone を出して撮る。

瞳さんはカメラやSNS を使い分けながら一体に、コミュニケーションツールとして駆使している。
写真をここまで楽しめるのはSNS があるからなのか聴いてみると、「SNSがなくても写真をやっていると思います」と彼女は答えた。

写真・文:中野幸英さん

写真家。作品制作、コマーシャル撮影をはじめ、動画撮影や講師、東北復興プロジェクトのメディア担当など多岐に活動。