『一瞬を共有する二つの心』。毎回一つのテーマを決めて撮影、撮り手である私・萩原がそのカットの撮影者側の意図を、モデルであるいのうえのぞみさんが撮られ手の意識を、それぞれ語るこの企画。本誌9月号で掲載したカットとは違う、いわゆるアザーカットの紹介とその撮影について語っていきます。
今回のテーマは『淡い憧れ』
本誌では、徐々に特別な女のコとして意識し始めた彼女に対し、気持ちを言い出せないまま、彼女の仕草を追いかける目線で…というカットを掲載いただいた。
Webでは、現実から空想へと展開してみた。
遠目から彼女をみつめる。
彼女は何を見ているのだろう…ちょっと離れたところ、あとから歩いてくる彼女を、チラチラっと振り返りながら。
彼女を意識すると、ここからは妄想。
まっすぐと見つめる眼差しは、確かに僕に向けられている。
少し乱れた、そして何かを訴えているいるかのように。
その姿が神々しくも眩しかった。
ソファに腰掛けると、無防備にも横になる彼女。
表情は影で見えない。だから余計に気になる。
どういうつもりで僕の前にこうしているのか、が。
艶かしい姿で階段の上にいる彼女に、僕は近づこうと、そっと階段を這うように登っていく。
でも表情を見たとき、ハッとなる。
そこには何とも言えない悲しさ漂う表情で、窓の外を見る彼女。
僕の求める彼女はこういう彼女ではないかも…そう思った瞬間に、妄想が途絶えた。
淡い憧れの現実と妄想
妄想シーンは勝手な距離感(妄想ですから)で、やや近めを感じさせる35mmで撮影。階段上のカットは自然な距離感を、と55mmを選択した。妄想と言ってもエロではなく、艶かしい匂いを想像してみた。影が、艶にせよ謎めいた雰囲気にせよ絶対の存在になると考えたので、かなりこだわってみた。表情やポーズはこちらから注文している。(萩原)
妄想編では、大きな洋館で撮影しました。普段は着ないような衣装に少し緊張しつつ撮影スタート。一方的に覗かれている感じを撮りたいので、と、萩原さんから『あまり見られていない雰囲気でお願い(撮られていることを意識しないで)』と言われたので、なるべくカメラを意識しないようにしました。こんな写真に憧れるはあるけど、誰かに憧れる気持ちって最近ないなー(笑)(いのうえ)