月刊カメラマン2018年2月号から7月号にかけて、異なったジャンルのトップ写真家6人が、お気に入りの富士フイルムXFレンズを使用して作品を発表、気に入っている理由や使用感をレポートした。今回は2018年5月号に掲載した第4回「料理×佐藤 朗」の記事を再掲する。

60mmマクロ一本で料理本まるまる一冊撮影!
手ブレ補正が効くX-H1と組み合わせ機動力UP!

▲料理書の撮影では、本を頼りに読者が再現しやすいように、色や形を正確に写すことも重要視される。その点で富士フイルムのカメラとレンズは安心して使うことができる。
■絞りF8 1/125秒 ISO200
*共通撮影データ:X-H1 XF60mmF2.4R Macro フィルムシミュレーション:プロビア 

▲調理工程中。被写体の料理を狙いつつ、作業をしている料理人の邪魔にならないように心がけ、側で撮影する。素早く動く箸先などを追いかける際にはAF機能が優れているのにこしたことはない。
■絞りF7.1 1/125秒 ISO200 

▲料理は人の口に入るほどのサイズ。素材のディテールを伝えるために、マクロ機能を活かしてクローズアップすることも。寄ったり引いたりアングルが変わることは頻繁なので、マクロ機能は必須だ。
■絞りF9 1/100秒 ISO400

まったなしの料理撮影には60mmマクロ一択だ!

この日も料理書に掲載する写真の撮影。ブロガーのかめ代さんのレシピ本で、テーマはお弁当。現状、私の仕事の8割くらいは料理写真だ。

昔は格闘技、バスケットボールなどスポーツ写真も撮っていたのだが、これほどまでに料理写真が増えたのは『Hanako』という雑誌で取材をするようになってから。毎日数件の飲食店をハシゴして撮影と試食を繰り返し、料理写真の経験値が豊かになるのと同時に、料理撮影の依頼も増えていった。料理撮影はシャッターチャンスが短い。ボヤボヤしていると油が固まったり、麺が伸びたり、あっという間に料理が劣化してしまうので、迅速にライティングや構図を判断してシャッターを切らねばならないという、待ったなしの現場だ。

しかも、完成された料理のみならず、調理工程を撮る際には料理人の手が動き続け、菜箸をひとかき回せば素材の状態も変化するなど後戻りができない。機動力を考えると三脚は邪魔になることも少なくない。

先日発売になったX-H1の手ブレ補正には正直助かっている。しかも、AF速度もアップしており、手持ちで撮影スピードを求められる現場では、使い始めたその日にもかかわらず「重宝している」と言ってしまいそうなくらい、ありがたかった。

レンズは歪みも感じず、料理に対してちょうど良い画角、距離感、遠近感で撮影ができるXF60mmF2.4 R Macroが中心だ。

時に素材にクローズアップする場合はこのマクロ機能が必要になる。それ以上の焦点距離になれば撮影者が被写体から遠くなり、角度が低くなって高いアングルで撮影するのにも脚立に登らなければならなくなってしまう。撮れる画を重視するには被写体に対するアプローチの時間や効率を真剣に考えるべきで、結局はこの60mmが料理撮影にはピッタリなのだ。ともすれば料理本一冊まるまるこのレンズのみで撮影していることもあるくらいだ。

しかも、X-H1との組み合わせはベストだ。手ブレ補正とAF性能の向上で、もともと手ブレ補正がないこのレンズの能力もアップした。私はGFX 50Sも使用しているが、カメラが異なっても同じフィルムシミュレーションであれば色味がまったく同じというところにも魅力を感じている。撮影現場で複数のカメラを使い、最近では写真のみならず動画撮影も求められる中で、カメラごとに色味が違うと後のレタッチで合わせなければならないが、そういったストレスを感じずに撮影ができる安心感は絶大だ。

今回の撮影で使用したフジノンXFレンズとXシリーズ
XF60mmF2.4 R Macro

fujifilm.jp

●レンズ構成:8群10枚●絞り羽根枚数:9枚●最短撮影距離:60cm(標準)26.7~200cm(マクロ)●最大径×長さ:Φ64.1×63.6㎜●重さ:215g●フィルター径:39㎜●実勢税込価格:6万6870円※

富士フイルム X-H1

fujifilm.jp

●有効画素数:約2430万画素●撮像素子:X-Trans CMOSⅢ●標準ISO感度:ISO200~12800●ボディサイズ:W 1 3 9 . 8×H 9 7 . 3×D85.5㎜●重量:約673g●実勢税込価格:25万8660円

※実勢税込価格は2018年4月上旬の都内量販店のものです。レンズも同様です。

佐藤 朗
Akira Satoh

(株)フェリカスピコ代表。日本大学芸術学部卒業。これまで広告、書籍、雑誌、webなどで撮影活動をし、2011年料理専門の写真教室「フェリカスピコ」を設立。これまで約5000人の受講者がいる。 

*掲載した記事は月刊カメラマン2018年5月号当時のものです。