3月に発売になった「AF-Sニッコール 180-400mm f/4E TC1.4 FL ED VR」その豪華なスペックに負けじとお値段もリッパなモノ。買うのはとっても勇気と覚悟がいるので、まずは借りてみて向かうは鈴鹿サーキット、開幕を迎えたスーパーフォーミュラで使ってみた。

5/10現在 ヨドバシ価格 143万,000円(税込)。誰が買うの?

1.4×1.4=1.96? いいえ2です

先代モデルAF-S 200-400mm f/4G ED VRⅡとの大きな違いは1.4倍テレコンバーターが内蔵されたこと。サーキットでは400ミリでも短いと感じるシーンがよくあるので、常にテレコンは携帯している。これが内蔵されていれば着脱の手間が省けるだけでなく、瞬時に次のシャッターチャンスに備えることができる。今回はあいにくの(?)晴天に恵まれたが、雨の日レンズにレインカバーを付けた状態などでさらに大きくこの恩恵を感じることだろう。

400mm域 D5 1/800秒 F9 ISO100  小林可夢偉選手

550mm域(内蔵テレコン使用) D5 1/1000秒 F8 ISO100

先代モデルよりAFのスピードアップも目指して開発されたというこのレンズ、確かに小気味良いAFを達成していると感じた。内蔵テレコン使用時もAF速度の低下はさほど感じられず、的確にマシンのコックピットを捉えることができた。また、意外にも内蔵テレコンを使わずにTC-14EⅢを使用してみても使用感、画質ともほぼ変わらなかった。ちなみに400mmの状態で1.4倍のテレコンを使用するとExifには550mmと記録される。

800mm域(内蔵テレコン+TC-14EⅢ) D5 1/1000秒 F8 ISO100

そこで、決してメーカーでは推奨していないだろう(一応装着できるとは記載されているが)使い方、Wテレコンを試してみる。内蔵1.4倍にTC-14EⅢの組み合わせ、400mmだと2倍の800mm相当になる。また合成F8となるのでD5のフォーカスポイントはセンター付近の9点のみとなる。こうなるとさすがにコントラストは少し低くなり、AFも掴み出すまで迷いが見られる。しかし一度ピントを捉えればそこそこの追従性、この焦点距離からすれば立派なもの。ただレンズ構成枚数が40枚を超えるだけあって、画質はシャープさは残るものの少し滲みが発生する。画像処理を前提とすれば充分な画質ではあるが、過度な期待はしない方が良いだろう。機会があれば、内蔵テレコンを使わずにTC-20EⅢでどうなるか試してみたい。

800mm域 D5 1/1000秒 F11 ISO200 関口雄飛選手

800mm域 D5 1/1000秒 F13 ISO200 国本雄資選手

ここでこのレンズを始めとする最新の望遠ニッコールに採用されている電磁絞り(Eタイプのレンズ)について言及しておきたい。電磁絞りのメリットとして、機械的な連動機構よりも正確な実絞り、レンズ毎の絞り羽根位置の最適化、マウント内径の有効活用などがあげられ、将来的に必須となる機構だ。しかしデメリットとして、絞りをモーターで作動させるためのタイムラグが発生してしまい、開放F値から4段を超えた位からでレリーズタイムラグの増加、連写速度の低下が発生する。これはニコンとて例外ではなく、たとえば開放F値2.8のレンズではF11を超えたあたりからレリーズタイムラグの変化を感じることができる。(これがわからない人には関係のない話だが)ところがこの180-400mmは開放から5段絞ったF22までレリーズタイムラグの変化が無く快適に撮影できたのだ。またF22以上に絞る場合はスローシャッター使用時なので、その場合はタイムラグに神経質になることもないだろう。

LET'S VR!

手ブレ補正=VRも進化して、SPORTモードが備わる最新版を搭載している。これはもうサーキットへ着いたならSPORTモードで固定。センタリングを繰り返し行わないVRは快適そのもの。厳密には画質の劣化があり、そのためにNORMALモードがあるらしいのだが、ハッキリ言って私にはわからない。フットワークを妨げる一脚を外し、手持ちでピット内のドライバーを撮影してみる。

400mm域 D5 1/125秒 F7.1 ISO400 関口雄飛選手

460mm域(内蔵テレコン使用) D5 1/60秒 F5.6 ISO400 伊沢拓也選手

400mm域 D5 1/30秒 F6.3 ISO400 石浦宏明選手

結果はご覧の通り、圧縮効果も相まって、なかなか緊張感の伝わるカットが撮影できたと思う。石浦選手のカットは400mmで1/30秒、手持ちでこれが撮影できるのは感動もの。メーカーによると約4段分の手振れ防止効果があるということだ。ピタッと止まって石浦選手の毛穴までバッチリ確認、間違ってもこの距離で女性を撮ってはイケないね。(実は後悔している@PITWALK)

180mm域 D5 1/100秒 F4 ISO400 山下健太選手

コックピットに佇むドライバーを今度は縦位置、180mm側で撮影。で、このカット、後にPCで見てみると周辺光量がかなり落ち込んでいるのが確認できる。他のシーンでは気づかなかったのだが、180mm側開放でこの現象がかなり目立つと言うことは頭に入れておいた方が良い。テレコンバーターを内蔵した事で鏡筒内のスペースに制約が発生し、マスターレンズのテレセントリック性に影響を及ぼしたのかもしれない。これは2段絞ればほぼ解消する。でもこのシーン、かえってそれがいい効果を生み出していると思うのだが。

スーパーなGTにスーパーなレンズ

スーパーフォーミュラに先駆けて開幕したスーパーGT選手権、月カメでおなじみのEPSON NSXも活躍する、日本を代表する花形レース。今回スーパーフォーミュラで撮影する2週間前にも、その開幕戦でまだデポに1本しかなかったこのレンズを借りることができた。早速決勝レースで使ってみたので合わせてレポートする。まずは応援スタンドを入れながら広めの構図で撮影、一脚を使用。

290mm域 D5 1/1000秒 F9 ISO400 以下同じ

なぜ、ここでスーパーGTかというと開催された岡山国際サーキットがコースと撮影エリアの距離が近く、スタートシーンがこのレンズのレンジにぴったりだったから。テレ端からワイド端まで目いっぱい使えるのだ。さあ、グリーンシグナル点灯で決勝スタート! 400mm側にズームイン!さらにレバーでテレコンON!ズームアウトしながら連続AF撮影開始。

550mm域(テレ端)

460mm域

330mm域

280mm域

220mm域(ワイド端)

マシンがほぼ同じ大きさになるようにズーム操作しているのだが、画角の変化量は背景にあるオレンジ色の看板の大きさを見てもらえばわかると思う。このレンズはインナーズーム方式なので安定した姿勢のままズーム操作ができる。このあたりの完成度の高さが、比較的安値なAF-S 200-500mm f/5.6 ED VRとは一味違うところ。ズームアウトしながらのAFも実にスムーズ、シームレスだ。これよ、これを待っていたのよ我々ニコンユーザーは。

SFはどうなったの?

550mm域(内蔵テレコン使用)660mm相当 D5 1/000秒 F11 ISO320 1.2Xクロップ VR SPORT 手持ち撮影 2カット共通

話をスーパーフォーミュラに戻して、まず結論から。TEAM MUGENの山本尚貴選手が見事ポール・トゥ・ウィンで開幕戦を制す!今年はHONDAエンジンの巻き返しで面白いシーズンになるだろう。

おっと、ココはWebカメラマン。で、あらためて結論。
このレンズ、本当に「欲しい」のだ。でも値段が…。キヤノンの同クラスのレンズに対して20万円位高いんじゃない?短焦点側が20mm短いからって、1mm1マソエソはないでしょ、みたいな。現在はバックオーダーを抱えているみたいだが、法人を中心とした200-400mmからの買い替え需要が一段落した後、市場からのニーズがどのくらいあるか。まあ、生存競争激しいプロの世界では、コレがあるとないとではフットワークに違いが出そうなので…。一般のユーザーは200-500mmという、実は私も使っている銘玉があれば充分なのでこの記事は読み飛ばして。でもお金がある人、どうしても欲しい人は、今スグ買っちゃって良し! 周辺光量とか、重さとか、多少の欠点は忘れるくらい、クリアでシャープな写真が撮れるから。

Canonユーザーが地団駄踏んで悔しがる、右手で操作できるテレコンレバー