月刊カメラマン誌「ジャンル別フォト講座」にて好評連載中「ネイチャー・マクロ」の講師・並木隆さんによるWebカメラマンスペシャルセミナー、その2です。このセミナーをもっと知りたい方は月刊カメラマン誌2017年5月号別冊付録をご参照ください。この短期連載は付録よりの引用です。並木さんの「スナップ」講座は月刊カメラマン誌で好評連載中です。記事の詳細は以下URLをご参照ください。

http://www.motormagazine.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=821

手ブレよりピントに留意!“ 美しい部分” をマクロ撮影!!

花撮影の定番と言えばマクロレンズ…と思われていますが、普通のレンズよりも最短撮影距離が短い単焦点レンズというだけで、決して“アップ専用”というわけではありません。でも、そこがマクロレンズの魅力でもあるんですけどね。

▲ムスカリの一輪だけを浮かび上がらせたかったので、花との隙間がやや空いている一見みすぼらしい花を選びました。
■絞りF3.5

その最短撮影距離の短さゆえに、アップで撮影するときは扱いが難しいのです。数年前までは手ブレ防止には三脚が必須でしたが、今は各社手ブレ補正付きマクロレンズが登場していますし、速いシャッター速度が稼げる高ISO 感度でもキレイに撮影できるカメラが増えたので、手ブレを怖がる必要はなし。

▲アップ以外の撮影もできるので重宝しますし、ボケ味がキレイなのもマクロレンズの特徴。前ボケのボケ味を調整するためにちょっと絞り込みました。
■絞りF5.6

気にすべきはピント。センサー面の像と被写体が同じ大きさに写る“等倍”では、絞り開放で1mm などという、超浅い被写界深度になってしまいます。合わせたつもりでも合っていないことが多いので、撮影毎に必ず背面液晶で画像を拡大して確認しましょう。プロだから合うんだと言われますが、違います。合うまで撮り続けているだけなのです。

そうそう、絞り込んで被写界深度を稼げば、多少のズレはカバーできるかな…なんて考えました? 絞り込んでも被写界深度は数ミリしか増えませんので無駄です。だから、絞りは開放付近での設定がほとんど。

▲ポピーの花びらの先端だけが浮かび上がるよう、花びらに沿うようにレンズを向けました。ピントの合う範囲をレンズの向きで調整できるようになれば、マクロマイスターです!
■ EF60mmF2.8 マクロIS 絞りF2.8 ISO200

絞り込みはボケ味を変えるときに行います。ピント合わせはAF よりもMF(マニュアルフォーカス)で、体を前後移動させて微調整するのが基本。AF だと合わないことが多いので、イライラするだけなんです。

基礎知識は以上。一番大切なのはどの部分を切り取るか…ということですが、私はアップで撮影するときは、どんな被写体かわからないようにと心がけています。わかったらマクロっぽくない!と思うからです。

ピントは美しいと感じた部分に合わせますから、花心じゃない方が多いです。花心はアップにすると意外とグロイ(笑)。美しいと感じる部分を見つけるためには被写体を肉眼でよく観察することが必要です。ファインダー越しに見つけようとしても見つかりませんよ、全部ボケちゃってますから。

今回のポイントは3点!

❶ピントが合うまで何枚も撮って確実にピントの合った作品を!
❷どんな被写体の一部分か?なんて、アップの作品では意味なし!
❸被写体を肉眼で観察して美しいと感じる部分を見つけよ!!

【共通撮影機材&データ】■キヤノンEOS 5D Mark Ⅱ 同7D EF100mm F2.8L マクロIS 絞り優先AE WB:太陽光 ISO400

撮影・解説は「花撮影・マクロの達人」並木隆さん

1971 年東京生まれ。高校生時代に写真家 丸林正則氏と出会い、以降写真の指導を受ける。東京写真専門学校(現:東京ビジュアルアーツ)中退後、中小企業の溶接工、トラック運転手、オフィスビルの窓ガラス清掃などを経てフリーランスとなる。現在は各種雑誌誌面での作品発表。主に花をモチーフにした作品を発表し続けている

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