月刊カメラマン誌で創刊号より連載されている企画「カメラマン最前線」。編集部が今、最も注目し、期待する写真家を取り上げるものだ。現在、ライカそごう横浜店にて写真展「PORTGAL2016」を開催中(2017年7月中旬まで)、そして "Al-Andalus"の写真展がライカ阪急うめだ店で行われている写真家・大門美奈さんを紹介したい。2017年7月2017年6月号より。■取材・文:石井健次 ■状況撮影:本人提供/カメラマン編集部

PROFILE 大門 美奈 [ MINA DAIMON ]
横浜市出身。リコーフォトギャラリーRING CUBEの公募展をきっかけに写真家として活動
を始める。キヤノンフォトグラファーズセッションファイナリスト。主な写真展「Portugal」
(リコーフォトギャラリーRING CUBE)など。写真集に「Al-Andalus」(桜花出版)がある。

大門さんの写真展は現在、ライカそごう横浜店にて開催中!

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現在、ライカそごう横浜店にて大門さんの写真展「PORTGAL2016」が開催中(2017年7月中旬まで)。

6月よりライカ阪急うめだ店で写真展”Al-Andalus"も開催中!

写真提供:ライカカメラジャパン

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写真提供:ライカカメラジャパン

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大門さんが、2014年に写真集とした発表したスペイン アンダルシア地方を撮影したシリーズ "Al-Andalus"の写真展がライカ阪急うめだ店で開催中だ(展示期間は2017年11月までを予定)。

潮風が綴る愛情物語 酒とカメラとサーフィン

ほぼ毎日、地元の海岸を散策し撮影をする大門さん。

横浜で生まれ育った大門美奈さんは、茅ヶ崎にマイホームを購入した。茅ヶ崎の海岸まで歩いて数分という近さだ。サーフィンが好きで海の近くで暮らしはじめたのかと思ったら、サーフィンをはじめたのは、海岸の近くに住みはじめてからだという。

そんなことで取材は美奈さんの住まいの近くの海岸に決まった。「浜で一杯やりながらもいいですねぇ」美奈さんはカメラ機材のほかに、ハートランドビールを持って海へGO。かなりの酒豪である。いくら飲んでも乱れない。愛らしく品のいい酒飲みである。

だが、四月の午後の海岸に行ってみるとサザンが歌った「砂まじりの茅ヶ崎、人も波も消えて」という気分に浸る気分にもなれない、かなりの強風で波も荒く、サーファーの姿も見られなかった。こんな日もある。夕方に出直すことにした。

海の近くに住む恩恵は、海が近いというだけで生活自体が変わることだ。これは美奈さんの実感。サーフィンをしなくても、写真を撮らなくても、海はいつも目の前にある。どこにも行かない。だれをも拒まない。

美奈さんは、朝、雨が降っていなければ海へ行く。写真を撮るためでも、サーフィンをするためでもなく、ただ海を眺めに行く。

「お早う、今日も一日が始まるよ」そんな気分か。それでも写真家の性ゆえだろうか、無意識に風向きを確認してしまうのだ。当然、波のチェックも忘れない。そして、今日一日という日の準備がゆっくりと出来上がっていく。

もちろん、撮影ということになれば、海への愛おしさは格別盛り上がる。海沿いの道から撮影したら浜から撮ろう。一歩進むごとに素足には砂がまとわりついてくる。波打ち際に近づき過ぎると、波しぶきを浴びることもある。それも撮影には困るのだが、気分として一興ということになる。

映画のような幻想的に立ち上る朝もや、豪雨のあとの鮮やかな虹の橋、夏の強烈な日差しに溶け込む肌を焼いた人の笑顔……どんな光景も海の近くにいるからこそ、立ち会うことができる。その一期一会の恩恵に、美奈さんは謙虚に感謝する。茅ヶ崎の海の時間は美奈さんを包んで、今日もゆったりと過ぎていく。

大門さんのホームページでは、最新の情報が更新されている。

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美奈さんは東京農業大学造園学科を卒業した、写真家としては変わり種だ。美大受験のために通っていた予備校で“都市計画”に興味を抱いたのだ。地元横浜の未来都市づくりが始まったことに、大いに触発されたのだ。

都市づくりという大枠のなかでも、とりわけ造園に興味関心が動いた。造園関係を学べる大学はきわめて少ない。東京農業大学への進学は必然の選択だった。その思いのルーツは、14歳から画家・綾城圭三氏(故人)に師事し、絵画を学んだことにあるようだ。だが、本格的に絵筆を持つことよりも、美奈さんはデザインのほうへ惹かれて、都市計画の仕事に就きたいと思った。

ところが、実際に就職を念頭に市役所の土木関係の人びとと触れ合う中で垣間見た、それぞれが自分たちの権益保護、利権確保を優先させる“大人たち”に嫌気がさして、都市計画に関わる仕事を断念した。そんな彼女を待っていてくれたのが、写真だった。
(中編に続く)