※撮影共通データ:NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VR 絞り優先AE WB:オート
ニコン Z50Ⅱ 主な仕様
●APS-C 23.5×15.7mm CMOSセンサー
●2088万画素
●ISO100~51200(※拡張IS100~204800)
●約11コマ/秒(電子シャッター時 約15コマ/秒)
●0.39型XGA OLED 約236万ドット
●3.2型バリアングルTFT 約104万ドット タッチパネル
●SDXC(UHS-Ⅱ)
●約127×96.8×66.5mm・約495g(本体のみ)
大きく&重くなってはいるが、手ブレ補正は非搭載…。
ワガママを言えばボディ内手ブレ補正機構(以下、IBIS)の搭載と新型センサーの採用を期待したかったが、どちらもお値段にダイレクトアタックするものだけに…。
過去に何社かでIBIS搭載によってどのくらい販売価格に影響があるの? という質問をしたことがあるけれど、どう頑張っても価格帯が変わるくらいの影響があるものなので、今回のZ50Ⅱのスペックについては英断である、と筆者には感じられた。
センサーについてもポテンシャルがあるセンサーであり、これ以上に単価とパフォーマンスのバランスに優れたセンサーの調達が現実的でないのであれば、「引き継ぎ」という選択の妥当性には納得がいく。欲を言えば「あと1年早く登場していれば」となるが。
Z50とのディメンション比較では、厚みで7mm弱、高さで約3mm大きくなり、100gほど重くなった。個人的にはZ50のコンパクトさが好きだったので気になっていたポイントだったのだけれども、実際に使ってみると「道具としての適切なサイズ感」という印象。
手の大きな(手袋はLL~LLL)筆者にとってはグリップの形状変更もかなりこの印象に寄与していて、グリップしたままウロウロする際にはより少ない力で、指にカメラを引っ掛けるような感覚で掴むことができた。
さらにそこから、構えたり大きなレンズ装着時などには僅かにグリップ下側が絞られたテーパー形状になっていることで、手のひらに吸い付くような感触となりつつ構えた際に自然と脇が締まるような「正しい姿勢」が誘導される。
この部分に関しては、「グリップ過激派」を自任する筆者にとって「ニコン、やるな…」と唸らされた部分。少し大袈裟に言えば、Z9のホールド感に近い感覚だ。
こうした形状の設定は、小さな変更でも時に印象を大きく左右してしまうし、個人差も大きいので相当に細かいというか、泥臭い作業を繰り返し行ったのだろうと想像すると気が遠くなった。←すごく褒めています。
ジョイスティックを持たないけれど、[f4:タッチFn]を有効にすることでいわゆる「タッチパッドAF」が可能になるので、上位モデルのサブ機としても相性は良さそうだけれども、あくまでも手がデカい人間の意見なので、この点についてはぜひ実機で確認してみて欲しい。というのも、EVFを覗きながらだと親指の可動範囲は思ったよりも少ないのだ。
AFとEVFの感触は試作機の時点でも好印象!
今回の機体はベータ機かつファームも製品版ではないので性能評価的なことは行わないので悪しからず。
作例はないのだけれど、被写体認識オートで何となくカラスや鳩など都会の鳥を狙ってみたところ、Z6Ⅲの被写体認識「動物」と比べて鳥類に対する検出力が明らかに良くなっていた。個人的にZ6Ⅲのあの処理は駄作だと思っているので、早々に本機相当にアップデートしてほしいところ。
AFの感触はかなり良く、筆者の(フジ)X-T5と比べても同等か、安定感で言えばそれ以上かも? と感じるくらいには快適でよく出来ている。
タッチFnでのポインター操作は他社機と比べて滑らかさに欠けるように思うけれど、慣れれば他のZのジョイスティック操作よりずっと快適だった。
輝度の上がったEVFについてもかなり好印象。高輝度といえばZ6Ⅲが思い浮かぶが、筆者はZ6Ⅲのハイライト側の表示が少し眩しすぎるように感じられて苦手なのだけれど、本機はドット数とのバランスが良いのか、長時間覗いていても疲労感が少なく感じられたし、レスポンスが良いのでMF時のピントの見易さや掴み易さも上々。筆者が普段使っているX-T5やLUMIX S5よりも快適だった。
現行のAPS-C機で一番グッと来ていますー
気になったのはモードダイヤルと、モードダイヤル同軸にある撮影モード切り替えレバーの操作力量の軽さ。ボディ前面にあるFn1と2が少し押下しにくいこと。誤操作を防ぐという観点であればFn1と2の操作性を下げることについては納得なのだけれど、そうするとモードダイヤル類の軽さに妥当性が無い。実際に、実写中にはいつの間にかSCNモードになっていたり、動画になっていたりして「チッ」となるシーンがソコソコあった。
結論を言えばとても好印象で、Zで一番好きなだけでなく、現状APS-C機で一番グッと来ている。撮影が楽しくストレスが少ないし、何と言っても本気になれるカメラなところが良い。
本気度で言えば、電子シャッター時でも1/4000秒以上のシャッター速度が選べないので、Zマウント用のVoigtlanderレンズ遊びがしたい場合にはちょっとだけ気になるトコロがありそうではあるが…それくらいだ。
デザインについてもZのコンセプトを洗練させてきたことを実感できる。大型化についても実際に使ってみると納得できるところが多く、また熱容量的にも大きい方が有利なので、動画ガチ勢にとっても良いことだろう。
エントリー機ゆえの「良心的な価格設定」も評価したいです
IBISを持たないことも、熱を効率的に逃がすという点では素晴らしく有効だ。動き回るセンサーから熱を移動させるのは難しい、と少し想像してみるとピンと来るハズだ。
こんな感じで、Z50Ⅱが選択してきたものがどれもポジティブに感じられるように出来ているので使っていて心地良い。
それでいてお手頃価格を実現できていることは素晴らしい。
カメラやレンズの開発は、エントリー機だからといってハイクラスと比べて著しく開発コストを圧縮できるワケではない。同じくらいお金と時間が掛るのに1台当たりの利幅は上位モデルと比べて少ないのだ。
それでも、エントリークラスが担う役割は大きい。例えばキットレンズはそのメーカーで最も売れるレンズのひとつなので、つまるところはメーカーの看板でもある、ということ。
エントリークラスだからといって妥協はないのだ、と感じられる良い製品に仕上がっているので、今から発売が楽しみである。