パナソニック LUMIX S 18mmF1.8 主な仕様
●焦点距離:18mm
●最短撮影距離:0.18m
●最大撮影倍率:0.20倍
●レンズ構成:12群13枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ73.6×約340g
●付属品:フード
開発力は認めるも、軸足が動画に向き過ぎているような…
このシリーズに用いられているレンズサイズと操作性の統一を図る、そのコンセプトとしては「ジンバルや動画用のリグを用いて撮影する際に、レンズ交換しても重心の調整やギア類の調整が不要、もしくは微調整で済む」というメリットがある。
スチル用として見てみると、外観が同じなのでコッソリ揃えても家人にバレにくいというメリットはさておき、カメラバッグから取り出す際にはどれがどの焦点距離なのか、目印を付けておかなければ判別が難しいというデメリットもある。フードが違うのでフード装着状態にしておけば分かるかも知れないが、パッと見では厳しそうだ。どちらにせよ、よくも悪くも没個性的ではある。
上の表組のように、どのレンズも300g前後と驚異的な軽さを実現しているし、外寸は同一。フルサイズ用の18mmと85mmが同じサイズの鏡筒に収まっていることと重量がほぼ揃っていることは、パナソニックの高いレンズ開発力の証左でもあるだろう。
その一方で外観は実用一辺倒。可愛げの欠片もないので道楽用の1本としては芸術点が低い。もう少しワクワクしたい場合にはLマウントアライアンスのパートナーであるシグマレンズを選んで、ということなのかも知れない。が、どことなくLUMIXというブランドが動画に傾倒し過ぎていて写真愛好家を無碍にしているのでは? と寂しくもあり、製品開発や商品企画の舵取りの難しさを感じさせる。
スチル用としては「組写真」に最適なシリーズ??
筆者はS 35mm F1.8を使っているが、持ってみた感覚はほぼ同一。重心位置が近似していることもあり手探りだと判別が出来ないレベルだ。レンズ自体の質感は悪くないがどうにも素っ気ない。しかし操作感や肌馴染みが良い。またフードの着脱がしやすく剛性感も高いので全体として道具としての信頼感は高い。
解像感は高いがカリカリ系ではなく、他のF1.8シリーズと同様に自然で被写体やシーンを選ばない使い易さがある。LUMIX機には魅力的なフォトスタイル(絵作り設定のこと)が沢山あり、どの設定とも相性が良さそうだ。
外観はもちろん描写の傾向も良く似ているので、画像だけ見ていると「あれ、これ何ミリだっけ?」と混乱してしまうこともある。が、視点を変えれば同じイメージを保ったまま画角だけ変えることができるので、動画以外でも、たとえば組写真などでも活躍出来そうだ。
絞り開放での周辺部は輝度差の大きな条件で少し色ズレがあるけれど、1段絞ればほぼ解決する。他のF1.8シリーズと比べて周辺画質は少しだけ劣るような気もするが、敢えてそこをツッコむのは無粋だと思うし、周辺画質よりも写真を楽しんで欲しい。
絞り値や撮影距離を問わず至近側まで安定した描写力を持ち、ワイドレンズとしてはキレイなボケ味であるし、総合的にみて優秀な光学性能と評価して良さそうだ。
ちなみに歪曲はわずかに樽型だが、個人的にはこのくらいが自然で心地よい写りだと感じる。あまりに真っ直ぐだとCGみたいで違和感があるが、その一方で物件撮影などでは真っ直ぐ写った方が良いので、ソフトで簡単に補正できるとはいえ、どうせカメラ内で電子的に補正するのであれば、任意でその程度を選べると良いのに、とは思った。ちなみにコマ収差も豊田的には気にならなかった。
ライバル不在=シグマとのすみ分けもデキています。
総じて優秀なレンズという印象が変わらず、軽量コンパクトながら、防塵防滴仕様であるなどタフネス性も十分。まさに仕事用の1本というイメージがF1.8シリーズにはある。
その中で18mmの単焦点レンズというのも、ミラーレス用としては稀有な存在で、ライバルは事実上の不在。とても上手いところを突いてきたな、という感想だ。
というのも近いスペックで言えばシグマの20mmF1.4 DG DN | Artや20mmF2.0 DG DN | Contemporary(Iシリーズ)も良いが、素晴らしい描写のArtは軽くなったとはいえ本レンズのほぼ倍の重さとなる635gもあり、所有欲をそそるIシリーズについても重量こそほぼ同等の370gだが、ワイド側の2mmの画角の違いはかなり大きな差となり得る。つまりは「このレンズだからこそ撮れた」が成立する条件を満たしているのだ。