ニコン NIKKOR Z 17-28mm f/2.8 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算17-28mm相当
●最短撮影距離:0.19m(17mm)、0.23m(20mm)、0.26m(24mm)、0.26m(28mm)
●最大撮影倍率:1:2.8
●レンズ構成:11群13枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ75×101mm・約450g
●付属品:フード ケース
「お手頃価格の大口径ズーム」は理解できるが…
ニコンのZレンズには既にS-Lineという高性能・高画質のシリーズに属するZ 14-24mm f/2.8 Sが存在している。ハイエンドクラスのレンズとしては小型・軽量ではあるけれど、それでも約650gとそれなりに大柄。それに対して本レンズは約450gと持ち歩きのハードルがだいぶ低くなっていることが特徴だ。このコンセプトのレンズはZ 28-75mm f/2.8に続いて2本目となる。
ズーム画角を少し控えめにすることで、価格を抑えつつ普段使いでも負担にならないサイズ感を実現するF2.8通しズームというコンセプトは大変結構だと思う。が、それでも本レンズは実販価格は15万円以上(税込)もする。
もちろんS-Lineの14-24mm f/2.8Sは実販価格で33万2200円(税込・ニコンダイレクト)もするので、約半額で手に入ることを考えればバーゲンのようにも思うけれど、F4通しで良ければS-LineにZ 14-30mm f/4Sという個人的に名作だと思っているレンズが17万2000円(税込)と本レンズとほぼ同額で存在する。となると、果たしてお手頃? という疑問は禁じ得ない。
ともあれ、ロードマップによると70-180mm f/2.8も開発中とのこと。お手頃F2.8ズームのフィルター径はφ67で共通となっている。こちらのレンズの登場も期待したい。
見た目よりも軽量。質感は…まあ、個人の好みなので。
手にとってみると、見た目よりも軽いことが印象的。これくらいであればいつもの機材に本レンズを1本プラスしても大きな負担にはならなそうだし、Z 7などとの組み合わせでは合計で約1.1kg強に収まる。個人的にZのグリップ形状が合っていることもあって、連続4時間以上グリップを握りしめてスナップ撮影を楽しんだが全く疲れなかった。
サテン調の塗装は個人的にはイマイチ。拭けばすぐに除去出来るとは言え、ツメの擦過痕が非常に残りやすいことが気になるし、手触りが上質というワケでもない。定価で税込20万円に届こうかというレンズの外装としては満足度は低いように感じた。
またこのレンズはズームによって全長が変化しないインナーズームタイプなので、特に接写時などでは全長変化を気にせず済むので取り回しは楽。ジンバル使用時でも重心移動が少ないので相性が良さそうだ。
STMによるAFは静粛、というかほぼ無音。速度そのものは令和の時代としては普通だが快適。ブリージングが少なくAFの駆動音もないので、撮影していてどうにも速度感がないというのが本音だが、かと言ってZ 14-24mm f/2.8Sのように高速というワケではない。
上位モデルとほぼ遜色ない描写。しかも、寄れる!
描写は非常に優秀で、ズーム全域で絞り開放から基本的に良好。特にワイド側での眼を見張るシャープさは見事。逆光にも強く、光源を画面内や画面のすぐ外に配置しても画面はクリアに保たれる。
評価基準をお値段ベースに設定すると、テレ側での四隅がちょっぴり気になる場合もあったが、それも2段ほど絞れば申し分ない描写となる。
近接性の高さを活かした撮影をする場合は、ボケがちょっとウルサイというか独特な感じに写ることもあるが、それはそれで楽しめそうだし、少し背景を整理すれば問題はなさそう。
基本的には綺麗にボケる。シャープネス的な話をすれば、絞りF4.0くらいまでは少し甘い場合もあるが、柔らかさと受け取ることもできるし、個人的には申し分のない描写力というのが正直な感想だ。
この際、「ソックリさん」は忘れましょう。ニコン純正レンズですよ!
スペックやレンズ構成図的にソックリさんがいらっしゃることは何となく皆さんお気づきかと思います。が、こちらはニコンが純正レンズとして発売するレンズなので、誰が何と言おうとニコンレンズ。Zボディとの完全対応を約束しています。
つまりZの絵作りを100%楽しめるっていうワケ。
直接比較した訳ではないけれど、以前にテストしたソックリさんとα7 Ⅲを組み合わせた時の印象で言えば、明らかにこのZ 17-28mm f/2.8の方が上です。全体的に解像感が良くてワンランク上のレンズ、というとちょっと大袈裟というか言い過ぎかも知れないですが、少なくとも0.5ランクは上です。Z28-75mm f/2.8の時にも同じ印象を持ったけど、これが最適化ってやつなんだろうね。純正レンズなので、製品の基準はもちろんニコンクオリティです。
あと、やっぱり軽くて寄れるレンズは楽しいです。ワイド側が17mmスタートだけど、14mmが必要なシーンってのは限られると思っているので、これから明るいワイドズームが必要な人にとってはとても良い選択肢になると思いました。
ニッパチズームながら普段使いもできますよ。
F2.8ズームっていうスペックはやはり一度は経験してみたいものだと思います。そういうレンズとしては本レンズはかなりコンパクトに出来ているので、持ち歩けて負担にならない、かつレンズ性能的にもとても良い選択肢だと思います。レンズが大きいと持ち出す頻度は下がりますから。どれだけ良くても持ち歩くのに気合が必要になるし、お食事でも気を使います。カメラバッグがデカイと、例えばカウンターでラーメンは食べにくいからね。
そうした普段持ち歩けるF2.8ズームという魅惑の選択肢となる本レンズに対して、純粋にワイドズームが欲しいって人にはZ 14-30mm f/4.0Sの存在も気になるところだと思います。
簡単に特徴を挙げれば、本レンズの方が優れているのは接写性とハンドリング。
対するZ 14-30mm f/4.0Sの方が優れているのはワイド側の画角とズーム比の大きさ。あとはS-Lineっていうブランド。
写りについてはS-Lineのが良いかな? と思うけど、ほぼ互角というか、描写の差が写真のクオリティを左右するほどの差はありません。
個人的には画角で選ぶのが良いと思います。
どうでも良い話だけど、個人的にレンズ構成図が美しく見えるのはS-Lineだね。筆者は別に光学設計に明るいワケじゃないけど、それでも「対象型になっていて綺麗な設計だなー」って思います。