ついに正式発表されましたな。公式のテザー動画がいくつか公開されていましたが、正直、どれも他社が先んじてヤッてる事ばかり…。イイトコ取りといえばその通りだけど所詮は二番煎じで、見せ方もワリと結構ダサい感じ。ニコンは何をどうアピールしたいのか? そんなモヤモヤした状態のまま、突如としてオサワリする機会が豊田に与えられました。ということで緊急インプレになります。

◆EVFのレスポンスはほぼほぼ一眼レフ!

画像: 積層型CMOSセンサーの45.7MP。画像処理エンジンは新たにEXPEED 7を搭載。Z 7Ⅱとの比較で12倍ほど高速処理が可能になったとのこと。

積層型CMOSセンサーの45.7MP。画像処理エンジンは新たにEXPEED 7を搭載。Z 7Ⅱとの比較で12倍ほど高速処理が可能になったとのこと。

第一印象は、結構重い。その理由はEOS R3。コイツは持った時に「え?軽い!!」という驚きがありました。Z 9はボディ単体で約1160g(メディアとバッテリー込みで約1340g)に対してR3はボディ単体で驚異の約822g(メディアとバッテリ込みで約1015g)と約200gも軽い。200gっていうと大したことないような印象持っちゃうけど、これを振り回して使うんだから当違うし、カメラバッグに収めた時の重量感も移動とかで長時間持ち歩いているとマジで翌日の疲労感が違うからね。

ソニーみたいに軽いけど高性能、みたいなレンズを出てくれば話は違うけど、ニコンはまだそういう可能性を探る段階に到達していないってのが厳しい現実としてあります。EVFの覗き心地やレスポンスは本当に素晴らしくて、もうOVF。α1より覗き心地そのものは上でしょう。この辺は流石ニコン。電源ONからの起動レスポンスや表示までのレスポンスとか、諸々の反応もまた素晴らしく、ほぼ一眼レフでした。

ただねー、EVFっていうシステムの都合上、会議室くらいの明るさのところって言えばいいかな? 組み合わせるレンズの開放F値にも依りますが、微妙な明るさの場所だとEVFの制御がローライトと通常制御で行ったり来たりする挙動が出ちゃって、撮影しながらレンズ振ったりするとチラついて見えたりカクついて残像感が気になって見えたりすることがあります。
仕方ないと言えば仕方ないのだけどね。この閾値を3段階で選べると良かったのに。だって撮影現場によってはずっと不快な表示を睨みつけて撮影しなきゃならないし、そんなの疲れちゃうよね。

んで、ある程度明るい場所だとα1よりスムースかも?? と思うくらいにはヌルヌルというよりリアルでスムースな表示。表現が難しいのだけど、ちゃんと撮影者と被写体の動きに画面がリアルタイムに追従している感がありました。この感覚もまた凄くOVFっぽい。撮影を挟んでもブラックアウトフリーっていう感じじゃなくて、本当にOVFを覗いている気分になってきます。なので明るさがキモだね。

ということで現在の仕様だと撮影現場によって意見が分かれそうです。撮影せずにただカメラを振り回すだけじゃ分からないので、もしオサワリする機会があれば、是非明るいところと暗いところで連写しながら流し撮りみたいな感じでチェックしてみて下さい。

ヒトケタ機ならではのオーラは弱く、どちらかと言うと「高そうなZ 6」?

画像: ニコン初となるタテヨコ4軸チルトアングルモニター。もつろんフラッグシップへの採用も初。

ニコン初となるタテヨコ4軸チルトアングルモニター。もつろんフラッグシップへの採用も初。

新しい画像処理エンジンを採用していることもあって、UIや操作性がちゃんと改善していたところもマル。メッチャ良くなりましたね。これ、従来機との同居は難しいと思います。自分ならZ 6/7とZ 9は同時使用は出来ないと思う。細かい仕様の違いが積み重なって、イライラが爆発すると思います。まぁ凄く改善された新型が出た時共通の悩みだね。

水準器が航空機のHUD(ヘッドアップディスプレイね)みたいな見易くて邪魔しないデザインってのも良いね。実戦で使ってみたワケではないけれど、かなり好感触。個人的には「視認性」と「邪魔しない」がこれほど両立出来ているのは見たこと無いと思ったので、全てのメーカーでこの水準器デザインにして欲しいかも。

グリップの感じは、悪くはないけどそれ程でもないってとこかな。具体例を挙げれば、α1より断然良いけど、EOS R3の方が私は好きです。相性や好みもあるので気になる人は実際に触ってみて確認して下さい。
外装系でネガティブに感じたのは全体的に少し安っぽいところ。いやね、十分高品質なのだけども、Dヒト桁や1DX系って工芸品のようなメカの繊細さと凄くしっかりした感じがあったのね。でも、Z 9にはあの「すげー良い機械」という感じが見当たりません。
なので「高そうなZ 6」って感じ。十分高品質だけど、そこに感動はナシ。

とは言え、この感触は「仕事に徹した、無駄を削ぎ落とした感」とも受け取れるので、むしろ好感触という人も居るでしょう。ただね「ニコンのヒトケタ機が持っている特別な感触は味わえないのね」と少し寂しかったのよ。
寂しさ抜きにしても、これ多分10年信頼し続けて使うってのは厳しいと思います。性能的には問題無く使えると思うけど、気持ちが続かないのでは?

3D-トラッキングをついに搭載!…やっとソニーに追いついた??

画像: メディアはCF Express タイプBのダブルスロット。買うとなるとまだ高いっすよねー。

メディアはCF Express タイプBのダブルスロット。買うとなるとまだ高いっすよねー。

イチバン懸念していたAFについて。シーンによって得手不得手があるので、乱暴に豊田基準で平均してみて、大体α9 Ⅱとドッコイかちょっと良いくらいかな? と思いました。非常に良く頑張っていると思います。AFに関してはお世辞抜きで想像以上でした。Z 6とか贔屓目に評価しても本当に話にならなかったので「よくココまで到達出来たな!」と感激しました。ひょっとするとプロジェクトXが取材に来るかも知れません。

一番の注目は、やっとこさ搭載された3Dトラッキング。野生のワニ(腹ペコ)レベルでくらいついたら、D5とかD6じゃ撮れなかったシーンでもZ 9なら撮れるんじゃね?(もちろん逆もあるよ)と可能性を感じるレベルです。被写体認識(瞳とか動物とか)については実戦投入してみないことには分からないので保留だけど、ワリとイケそうな感じではあります。

オートエリアAFはまぁまぁ使えるかな? って感じ。個人的にはソニーの方が賢いと感じました。オートエリアAFの賢さを好みも含めてトータルで優劣付けるならAF性能についてはα1 ≧ R3 ≧ Z9 ≧ α9II って感じだと予想しています。得手不得手もあるので時には順位が前後すると思いますが、だいたいこんなモンじゃないかな。

これまではα1>>>>R5>>>>>>>>>>Z 6Ⅱという感じで、ソニーが令和3年とするならニコンは平成11年くらい。ニコンはミレニアムを迎えることが出来ていませんでした。それはもう周回遅れどころの話じゃない有様だったので、Z 9の進歩っぷりは称賛に値する凄い進歩だと思います。

思い切りましたね、メカシャッターレス!

画像: バッテリーは新開発となるEN-EL18dを採用…の割には単写700コマ、動画170分と控えめ。

バッテリーは新開発となるEN-EL18dを採用…の割には単写700コマ、動画170分と控えめ。

AF、凄く良くなったね!って話を振ってみたら「センサー側のピンぼけを検知する能力が頑張っていて、エンジンの演算性能はもの物凄く向上しています。アルゴリズムの進化もありますが、やはり演算性能が効いています」っていうニュアンスの回答でした。α1みたいに演算の暴力が効いてる感じはビンビンします。

実際にそのトレードオフとしてD6とかに使うサイズのバッテリーで、単写で700コマ(CIPA基準)しか保たない。EVFとか他にも電気喰うデバイスがてんこ盛りなので仕方なのかもね。

面白いなー、と思ったのがメカシャッターレス仕様。厳密にはセンサー保護用のシャッターは搭載されていますが、撮影用のシャッターは電子のみ。読み出し速度がメッチャ速いから、思い切ってメカシャッターレスということです。ちなみにα1の方がもう少し速いっぽいので、ソニーって本当に凄いよね。Z 9があと半年なり早く登場していれば…と思います。

まあ、とってもクールなハイエンド機ってことですよ。実写レポートは近々に!

画像: まあ、とってもクールなハイエンド機ってことですよ。実写レポートは近々に!
画像: 新しくなったUI。これはイイっす!!

新しくなったUI。これはイイっす!!

α1と同様に電子シャッターでのシンクロ撮影にも対応しています。シンクロの仕様はコレまでのニコンと同じで、シャッター押せば取り敢えずシンクロが飛ぶとのこと。シャッターが無いので当然ながらレリーズショックは無し。なのでシャッター音も電子音。コイツがちょいと味気ない音で、昭和56年製のセンスを持つ豊田的には心地良いとは思えませんでした。

なのでパッションには訴えかけてこない、とてもクールなハイエンド機ってのがニコン機としては新鮮です。何となく「COOLPIXの再来?」って思っちゃいました。ハイエンドモデルなので厳しく評価しますが「やっと他社に追いついた」というのが現実です。なので、これからがZの第二章だと思うのね。だって他社機ユーザー(報道系ね)はもう既にミラーレスで現場を飛び回ってたワケで、業務効率化も随分進んでいたと思います。

ニコンユーザーもこれでやっとこさ安心してミラーレスに移行出来るカメラが登場した、というポジションだね。使用者の不平不満を具現化した形状をしたいろんなシーンで使いにくい形状のFTZアダプターが常識的な形状になるタイミングも正直遅かったと思います。もっと早くリリース出来たでしょ。

そういった諸々もあり、「Z9バンザイ!」とか「おめでとう」なんてお祝い歓迎ムードの記述をする気分にはとてもなりませんでした。だって紛れもなく、ここがスタートラインだから。そういう気持ちがあるので、よくあの半端なZ6 Ⅱで“The Next Chapter”とかぶっ込んできたな、と怒りが再燃しています。あのコピーを自分が付けたなら恥ずかしくて外歩けませんことよ。

あとさ、ニコンといえば調光制御という気持ちをF5以来ずっと持っています。D200のD-TTLやD300以降のiTTL-BLの実力たるや眼を見張るものがあるからね。ニコンの調光はマジで凄く賢かった。いつの間にか全くアピールしなくなったので、進化・改善しているのかどうかすら不明ってのは寂しいよ。

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