ガッチガチのパキパキ画像にしたのは誰?(諏訪)

編集部:この際、デジタルレンズオプティマイザー(以下DLO)とかソフトウエアの話もしちゃいましょうよ。穴埋め的に使えるかもしれないから。うひょひょ。
諏訪:DLOに対するは考え方は難しくなってますね。今まではボディ側でのレンズ補正はオフで撮って、後からDLOで微調整したり、それこそ一気に補正したりもしていました。でも今はボディ側にデフォルトで補正が入っていて、さらにそこにDLOで補正を乗っけっていう…。なんか複雑な状況なんです(笑)
森田:Too muchな感じなのね。
諏訪:レンズとボディの解像度がここまで上がったのに、いまだに画作りベースのシャープネスが高すぎ…。出てくる画がもうパキパキで、さすがになんとかしないとマズい状況です(笑)。これはキヤノンに限ったことではないんですけど。どこのメーカーも「あそこのほうがシャープだね」って言われたいから、(シャープネスを)落とすのにはかなりの勇気が必要なんです。でも今は行き過ぎちゃってるんで…。
森田:それって、今の市場のオーダーなんですよね? 解像方向重視のパキパキ好みという。各社ともそれを見ているっていう。
諏訪:でしょうね。相乗効果でどんどん上げてっちゃってるんですよ。メーカーがシャープにすれば、それに慣れたユーザーもそのシャープネスを求めてしまう。どんどん麻痺していってるような(笑)
森田:欧米とかは昔からカリカリが大好きじゃないですか。目が違うんだろうけど。やっぱりメーカーだってグローバルな視野で見ているから、欧米に合わせているんでしょうか?
諏訪:今は海外に合わせていると思います。まぁ、それもメーカーによりますが。フジなんかは多分、日本、というかアジアかな。アジアしか売れてないみたいだし(笑)。だけどキヤノンなんかはおそらく北米がベースでしょう。
森田:なんだかんだ言っても最大の市場は北米ですからね。
編集部:パッと見でシャープネスと彩度が高いほうが有利、って話? ずっと見続けると目が疲れるとか置いといて。
諏訪:そうです。それがKissとかその辺のクラスなら分かるんです。でも、プロが使う上のグレードでも同じ基準なんですよね。
森田:ポートレートに使いたいのにバキバキじゃん、みたいな。それって、スマホ文化の悪影響みたいなのもある?
諏訪:オレはあると思います。iPhoneとかの画処理がシャープパキパキな方向ですからね。それに負けたって言われてたくないんでしょうね。カメラメーカーとして。
森田:光学メーカーとしての矜持が違った方向に出ている。
諏訪:もちろんシャープであること自体は悪いことじゃないんだけど、過ぎるのがね。
森田:バランスの問題でしょうね。
落合:昔話をするとさ、カメラ好き、レンズ好きの趣味層も含めて、みんな高いシャープネスを求めていましたよね。まぁ、一部のシャープネス至上主義の人が自分でイジった画を見ると、極端にガチガチのバキバキでヒドいのが多かった(笑)んだけど、そういう側面がデジカメの進化を支えてきたという事実もある。
諏訪:だよねー。たしかにオレらは(デジタル)黎明期に、もっとシャープじゃなきゃダメだよ! って言ってたから。でも、これって本当にシャープじゃなかった頃に言い続けていたのが、まだそのまま続いてるってことなんだよね(笑)
落合:そこにスマホが変な意味で後押ししちゃっている。「映える」を気にしすぎて引くに引けないって感じ。もっとも、最近は変わってきているようにも思いますけど。
諏訪:引けないよね。難しいでしょうね(笑)
編集部:「どっちのレンズショー」(月カメでの連載企画)でも、シャープネスを比較していましたよね。シャープなのが偉い、みたいな感じじゃなかったの?
諏訪:それは解像できているかどうかという意味のシャープネスです。輪郭の立ち方っていうのは様々な種類があるんです。太く輪郭が立ってくるのもあれば、本当に線が細くキレイに立ってくるのもあって、まちまちなので。あくまでもあの企画は「レンズの評価」ということだったので、そこをゴッチャに評価していました。仮にボディと併せた画の評価となったときは、そこをさらにツッコむことになると思います。
編集部:ああ、メンド。
諏訪:だから、たまに遭遇するヒドいレンズに関しては、画作り設定やピクチャースタイルに言及して、「設定を変えた方がよかった」みたいなコメントを入れることがありました。ささやかなフォローですけど(笑)
森田:なかなかアレですね。オーセンティックなレンズづくり。いわゆるコンヴェンショナルというか、もう王道で。テレセンとかなんだとかみたいなことを好き放題に追求しちゃうみたいな…。フォクトレンダーやシグマじゃないけど、そういうことはカメラメーカーってやりにくいっていうね。いろんなコストとか工数とか、そういう生産の問題もあるんだろうけど。そういうのって、キヤノンの話だけじゃないと思うんだけれど、キヤノンなんかは、やっぱそういうのは難しいんですか? 大企業として。
諏訪:株式公開しちゃダメなんですよ(笑)。株主を見るってことは、結局マスを見なきゃいけなくなるから。
森田:そんなもん作ってるから業績が振るわないなんだよ、とか株主に言われちゃう(笑)

This article is a sponsored article by
''.