2年後の五輪開催を見据え、日本が過去最高となる762名の選手団を派遣したことでも話題になっているアジア競技大会。それは2年後に向けた準備を進める全ての人々にとって「予行演習」となる大会だけに、報道関係者をサポートするカメラメーカー各社にとっても「負けられない戦い」だ。東京から遠く離れたジャカルタの地で、2年後を見据えた各社の動きを追ってみた。
■撮影・報告:小城崇史。

MPCにはオフィシャルスポンサーキヤノンのデポ

メイン会場となるGBKメインスタジアムにほど近いコンベンションセンター内に設けられたメインプレスセンター(MPC)。入口を入ると右手に大会オフィシャルパートナーであるキヤノンのロゴが視線に飛び込んでくる。そう、ここが大会期間中、正式な取材パスを持つ報道関係者をサポートするキヤノンプロフェッショナルサービス(CPS)のサービスデポだ。

デポの責任者を務めるキヤノンシンガポールPTEのエヴァン・チャンさんによると「この大会に向けた準備は一年前から始めました。アジア圏8カ国・地域から集まった約40名のスタッフが朝8時から夜8時まで、大会を取材するフォトグラファーをサポートします」という。デポでは機材の点検清掃や貸出を行い、貸出可能なアイテム数は約400種類用意されているとか。

「私たち(キヤノンシンガポールPTE)は南・東南アジアをサポートする販売会社なので、これまでも地域内の販売会社として各種国際大会やスポーツイベントを全力でサポートしてきた。2年後だけでなく、これから先もその姿勢はずっと変わらない」という言葉に、シェアナンバーワンメーカーのプライドを見た。

画像: ▲メインプレスセンター内入って正面に位置するキヤノンのサービスデポ

▲メインプレスセンター内入って正面に位置するキヤノンのサービスデポ

画像: ▲カウンター横にはEF1200mmのディスプレイが。

▲カウンター横にはEF1200mmのディスプレイが。

画像: ▲ある日の試合会場。この会場でのキヤノンのシェアは7割程度のようだ。

▲ある日の試合会場。この会場でのキヤノンのシェアは7割程度のようだ。

「安心確実なサポート」で報道関係者を支えるニコン。

一方、国際大会を取材する報道陣と切っても切れない関係にあるニコン。今大会ではメイン会場から少し離れた大会組織委員会の本部棟にサービスデポを構え、6の国や地域から集まった24名の精鋭スタッフが報道関係者をサポートする。

「今回のデポは、弊社のシンガポール法人が中心となって運営しています。さすがにミラーレスカメラ『ニコンZ7・Z6』は置いていませんが(取材日は8月23日)、D5やD500を中心に、プロ向け製品のほとんどのアイテムを用意して、報道関係者の皆様のニーズに応えるようにしています」と語るのは、北京五輪(2008年)から国際大会でのサポート業務を手がける(株)ニコンの鈴木健司さん。

「基本的には点検・清掃が主な業務ですが、簡単な修理やレンズのAF調整などもご要望に応じて行っています。アジア圏ではNPS(ニコンプロフェッショナルサービス)がない国もあるため、弊社のフラッグシップ機であるD5や、今年3月に発売したAF-S NIKKOR 180-400mm f4/E TC1.4 FL ED VRをまだ触ったことがないという方にもお貸出するなどして、国際大会ならではのコミュニケーションと、お使いいただいている皆様からの情報収集につとめています」という。

「時代と共に技術も進歩し、そしてお客様の使い方も変わってきます。2年後に大きなイベントを控えているのはもちろんですが、今まで参加してきた国際大会と変わらず、着実にサポートしていくことでこれからも皆様の信頼に応えたい」という言葉に、老舗メーカーの歴史と実力を垣間見た気がした。

画像: ▲大会組織委員会本部の建物。今大会は古くからある建物を活用しているケースが多く、この瀟洒な建物も「大会本部」というサインがなかったら気付かない優雅さだ。

▲大会組織委員会本部の建物。今大会は古くからある建物を活用しているケースが多く、この瀟洒な建物も「大会本部」というサインがなかったら気付かない優雅さだ。

画像: ▲ニコンのサービスデポカウンター。夜8時まで開いているため試合終了時間が読みづらい競技を取材する報道関係者にも好評のようだ。

▲ニコンのサービスデポカウンター。夜8時まで開いているため試合終了時間が読みづらい競技を取材する報道関係者にも好評のようだ。

画像: ▲備えあれば憂いなし。ニコンサービスデポを利用する報道関係者に配布されたレインカバー。幸いなことにジャカルタでは開会式後晴れの日が続いており、このレインカバーの使用シーンは未だ目撃していない。

▲備えあれば憂いなし。ニコンサービスデポを利用する報道関係者に配布されたレインカバー。幸いなことにジャカルタでは開会式後晴れの日が続いており、このレインカバーの使用シーンは未だ目撃していない。

サイレントシャッターを武器に躍進するソニー

2017年のα9発売以来、スポーツフォトグラファーに対するサポートの取り組みを始めたソニー。今大会も、ジャカルタ市内のダウンタウンに位置するホテルの一室をベースとするサポートデポを開設し、大会を取材するフォトグラファーのサポートを行っている。「スポーツの国際大会にデポを出すようになったのは、昨年8月に開催されたロンドンの世界陸上が始まりで、まだまだ経験は浅いですが、少しずつノウハウを貯め込んで行っているところです」と語るのは、日本のソニーマーケティングでプロサービスを担当する兄井宏史さん。

中国・シンガポールからやってきたスタッフと共に、清掃・点検・簡単な修理、そして代替機の貸し出しをおこなっているという。「スポーツ大会におけるデポの経験値がまだ豊富ではないので、フォトグラファーの皆様に期待いただいているのはどんなサポートなのかを学びながら、徐々に増え始めている弊社製品ユーザーの方のサポートをさせていただいています。しかしα9の速くて広いAFや、サイレントシャッターを評価してくださる方も増えてきています。プロの方に安心して使っていただく上でサポートは本当に大切な要素です。これからも、国内外の大会で経験を積み重ねることによって、2年後はもちろんですが、プロフォトグラファーの方々に安心して使えると言っていただけるようにしていきたい」という言葉に、先行する他社とは違うアプローチで新たな道を切り開く、この会社らしいテイストを感じさせてくれた。

画像: ▲ジャカルタ市内、関係者も多く滞在するホテルの一室にサポートデポを開設したソニー。

▲ジャカルタ市内、関係者も多く滞在するホテルの一室にサポートデポを開設したソニー。

画像: ▲現地でのサポートを担当する兄井宏史さん(左)とアビー・セティア・ラマダンさん(右)。

▲現地でのサポートを担当する兄井宏史さん(左)とアビー・セティア・ラマダンさん(右)。

画像: ▲準備万端で出番を待つ機材。

▲準備万端で出番を待つ機材。

オリンパスもサポートデポを開設!

今回報道関係者にとって最大の衝撃となったのが、オリンパスのサポートデポ開設だろう。ジャカルタ市内に複数存在する試合会場の内、クラスター2に位置する会場にほど近いホテルを訪ねてみると、確かにオリンパスのデポがあった。E-M1 Mark Ⅱの卓越した高速連写性能に注目しているフォトグラファーもいるにはいるものの、現状「確実な結果」を求められる国際大会の現場で目にする機会はほぼゼロと言ってもいい状況だ。なのになぜ?

「サービスデポ開設を決めたのは今年の3月でした。弊社はE-M1 Mark Ⅱの発売以降、撮影ジャンルとしてスポーツが非常に大きなフィールドだったので、ユーザーが増えつつある状況の中で、大きな大会でどのようなサポートができるのかを視察するのと、何人かの方が使ってくださっているので、その感想や使用感も伺いながら、今後弊社がスポーツ写真ジャンルにおけるどんなサポートができるのか、経験値を積むべくデポを出させていただきました」と語るのは、日頃は東京でプロ写真家のサポートを担当する、オリンパスプロサロンの田中伸顕さん。

今大会は田中さんと、2名のサービスエンジニアが会期中前後半交替で、延べ3名体制でのサポートを行うという。大会組織委員会が発行するAD(会場内に入ることのできるパス)も取得しているあたり、並々ならぬ熱意を感じた。

画像: ▲クラスター2にほど近いホテル内に設けられたオリンパスのデポ。

▲クラスター2にほど近いホテル内に設けられたオリンパスのデポ。

画像: ▲堀川健太さん(左)は大会前半のサービスエンジニアをつとめ、田中伸顕さん(右)は全日程を通して報道関係者をサポートする。

▲堀川健太さん(左)は大会前半のサービスエンジニアをつとめ、田中伸顕さん(右)は全日程を通して報道関係者をサポートする。

画像: ▲貸出機材の中にはTG-5の姿もあった。

▲貸出機材の中にはTG-5の姿もあった。

2年後の「東京オリンピック」に向けて、各カメラメーカーのプロサポートという静かなる戦いはもうすでにジャカルタから始まっていた。

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