コンセプトやデュアルピクセル、DPRAWなどに関して開発者に聞いた「前編」、メモリーカードやデジタルレンズオプティマイザ、AFなどに関して尋ねた「中編」に引き続き、この「後編」ではEOS 5D Mark IVほぼ時を同じくして発表された2本のLレンズ「EF24-105mmF4L IS II USM」「EF16-35mmF2.8L III」に関して話を伺った。

EOS 5D Mark IV 主な仕様

●センサーサイズ:35mmフルサイズ(約36.0×24.0mm)●有効画素数:約3040万画素●画像処理エンジン:DIGIC 6+ ●ISO感度(拡張):100-32000(拡張50/102400)●最高連写速度:約7.0コマ/秒●シャッター速度:1/8000秒~30秒、バルブ●AF測距点(クロス測距点): 61点(最大41点クロス)●AEシステム(測光センサー分割数): 約15万画素RGB+IR測光センサー、252分割TTL開放測光●ファインダー視野率/倍率:約100%/0.71倍●動画記録:4K30p、フルHD120pほか●動画圧縮方式:H264/MPEG-4 AVC●液晶モニター: 3.2型 約162万ドット●記録メディア:CF(UDMA 7対応)+SDXC(UHS-1対応)●大きさ(W×H×D):約150.7×116.4.×75.9mm●本体重さ(本体のみ):約800g

注目ポイント

● 35mmフルサイズ用30.4メガピクセルCMOSセンサー
● 新画像処理エンジン「DIGIC 6+」
● 常用ISO100~32000(拡張102400)
● EOS-1D MarkⅡ譲りのオールクロス61点AF+F8対応
● 約7コマ/秒の連写性能
● 15万画素RGBセンサー+IR測光センサー
● ライブビュー時のDual Pixel CMOS AF+タッチAF
● 4K 30p&フルHD 60pのEOS MOVIE
● ワイド3.2型162万ドットタッチパネル液晶モニター
● 視野率約100%のインテリジェントビューファインダーⅡ
● 回折補正、カメラ内デジタルレンズオプティマイザ、DPRAWほか
● GPS、Wi-Fi内蔵


画像: 注目ポイント

EF24-105mm F4L IS II USM

●レンズ構成:12群17枚●絞り羽根枚数:10枚●最小絞り:22●最短撮影距離:45cm●最大撮影倍率:0.24倍(105mm時)●フィルター径:77mm●最大径×長さ:φ83.5×118mm●重さ:約795g●手ブレ補正効果:約4段分

「どんな環境においても満足して使える標準ズームを目指し、総合力を考えて設計しました」  ──山口

画像: 【EFレンズ商品企画担当】山口聖吾氏(ICP第一事業部)。

【EFレンズ商品企画担当】山口聖吾氏(ICP第一事業部)。

EF24-105mm F4L IS II USM
全体的な光学性能を向上、堅牢性も高めてリニューアル!

【諏訪】まずEF24-105mmF4L IS II USMは、どの辺を目指して開発したんですか?
【山口】前機種の24-105mmF4L IS USMは10年前に発売されて以来、5Dシリーズと6Dのキットとして非常に好評をいただきました。ただ発売から約10年が経ち、最新のLレンズと比べていろいろな面でリニューアルの要望をいただきました。たとえば手ブレ補正の性能はだいたい4段程度、ものによっては4段以上がLレンズのスタンダードになってきています。今回は光学性能の向上と、過酷な使用環境を想定し、全体的なリニューアルを図りました。
【諏訪】解像力では5Dsクラスも対応可能?
【山口】“このカメラにはこのレンズ”という区分けはしていなくて、レンズとカメラの総合力と言いますか、同じレンズでも最新の高画質化が進んだカメラであればその力は存分に発揮されますし、逆のことも言えます。24-105mmF4L IS IIは、最新カメラで使っていただくと、より満足いただける光学性能だと思います。
【諏訪】非球面レンズが4枚採用されています。どういう光学性能のアップを狙いましたか?
【山口】非球面レンズを使うことによって歪曲の補正や倍率色収差の補正などに主に効いてきています。
【諏訪】最短撮影距離の短縮は検討しました?
【山口】全面的なスペックアップを目指してやってきました。最終的にはやはり総合力になりますので、大きさとか重さのバランスと全面的な光学性能のバランスをみて、今回の最短撮影距離に落ち着いたという感じですね。
【諏訪】トータルバランスがこのレンズのコンセプトですね。
【山口】キットレンズとしてたくさんのお客さんに使用していただくレンズですので、どういった環境においても幅広く使えるレンズ、ご満足していただけるレンズというのを目標として、総合力ということを念頭に置いて設計しています。
【諏訪】5D MarkIVの標準ズームとしてベストマッチということですね。

EF16-35mm F2.8L III USM

画像: EF16-35mm F2.8L III USM

●レンズ構成:11群16枚●絞り羽根枚数:9枚●最小絞り:22●最短撮影距離:28cm●最大撮影倍率:0.25倍(35mm時)●フィルター径:82mm●最大径×長さ:φ88.5×127.5mm●重さ:約790g

「このレンズが一番求めることは、周辺画質を含めた
総合的な画質の向上でした」  ──島田

画像: 【EFレンズ商品企画担当】島田正太氏(ICP第一事業部)。

【EFレンズ商品企画担当】島田正太氏(ICP第一事業部)。

EF16-35mm F2.8L III USM
フッ素コーティングなど最近のLレンズに搭載している要素はすべて搭載!

【諏訪】EF16-35mmF2.8L IIIは、正直なところII型のとくに周辺が大変だったので、今回はかなり期待しているんです。まだ試せていませんが周辺部分はバッチリですか?
【島田】16-35mmF2.8のII型が2007年に発売されまして好評を博していたんですけれども、周辺部分の画質に不満があるというユーザーさんの声は我々も認知しておりました。リニューアルにあたっては、もちろん中心部分も向上していますが、やはり周辺画質の向上を強く念頭に置いています。
【諏訪】最短撮影距離は変わっていないんですけど、倍率が微妙に変わっているんですよね。
【島田】光学系が変わっていますので。もちろん最短撮影距離はもっと近ければと考えてはいたんですけれども、いろいろバランスを考えた結果、変えておりません。
【諏訪】SWC、ASCを使っている。この辺の最新の技術がだいたい入っていると。
【島田】24-105mmの旧型もそうですが、16-35mmのII型も最近のLレンズにはちょっと見劣りがする部分があります。そこで耐久性やフッ素コーティングの採用などで、そうい
った最近のLレンズに搭載している部分はすべて搭載します。
【諏訪】16-35mmF4L ISの解像力が高くて僕が5Dsで使うメインレンズになっているんですが、それと比べて勝っていますか?
【島田】実は16-35mmF4Lはかなり完成度が高く、Lレンズにふさわしい高画質を実現しています。画質面でいうとEF16-35mmF4L IS USMと今回のEF16-35mm F2.8LIII USMは双璧を成すレベルです。ただ、こちらは開放F2.8なので、F4でIS付の16-35mmか、こちらのF2.8かというところで
使い分けていただければと思っています。
【諏訪】当初16-35mmF2.8にISを載せるという話はなかったんですか?
【島田】ISの搭載によって総合的なバランスが崩れてしまうようだと…このレンズが一番求めることは周辺画質を含めた総合的な画質の向上でしたので、そちらを優先させています。
【諏訪】IS搭載のネックになったのは画質ですか? サイズですか?
【島田】両方ですね。
【諏訪】35mmF1.4なんかに採用されたBRレンズは検討したんですか?
【島田】検討しましたが、このレンズにはBRレンズは採用しませんでした。BRレンズには効果を発揮する上で適した光学系があります。
【諏訪】もし積んだりとかすると値段もドーンと上がったりするものなんですか。
【島田】一概には言えないですね。
【諏訪】キヤノンはボディのコンセプトモデルとかで1億5千万画素とか2億5千万画素とかのセンサーの開発発表をしています。今、出てくる24-105mmはバランス重視だと思うんですけど、とくに16-35mmといったプロも使うような高画質版のレンズの場合は、どの辺の世代の画素数とかカメラまでを対応できると見越して設計されているのでしょう?
【島田】レンズというのはカメラに比べると発売している時期というのがどうしても長くなりますので、長い目ではある程度そういった対応もしていくことは考えてはいるんですけど、具体的に何画素ですとか何年先までと言い難い部分があります。
【諏訪】画素数が上がれば逆にレンズの解像度はあまり求められなくなるとか、いろんな説があって、何が正解なのか僕もつかみきれていないんですが、単純にカメラの画素数が上がれば求められるレンズ解像度が高くなるということで、もっと先を見越してスペックを上げた状態で作っておくものなのかなと想像をしていたんでが。
【山口】基本的には、どんなレンズであっても画素数が上がればその力は引き出されます。ただ、もちろん解像度の高いレンズ、光学性能の高いレンズがよりその効果を実感していただけるため、私どもとしまして今後カメラを高画素化していくにあたっては、よりよい光学設計を目指していきたいと思っています。
【諏訪】すごい優等生的ないいお答えを(笑)。僕も月刊カメラマンに「どっちのレンズショー」という企画を連載していますが、いろいろ他社も含めて比較すると、けっきょく新しいものが勝つ結果になることが多い。高価なレンズですし“少し先まで勝ち続けていけるレンズであって欲しいな”というのがユーザーの素直な気持ちだと思います。
【島田】そういった意味で言うと十分に安心して使っていただけるものになっています。
【諏訪】もちろん16-35mmとかは、プロが使うことを想定して1D Xシリーズとかとのマッチングを全部見て開発していますよね。
【島田】はい。16-35mmに限らず24-105mmでも当然見ています。
【諏訪】ASCとかのコーティングは今後全レンズに搭載されてくるものなのでしょうか?
【山口】今後、全レンズに採用するかどうかは、申し訳ございませんがお答えできません。フレアー・ゴーストの目標性能、達成に必要かつ効果的と判断した場合に採用していきます。

画像: EF16-35mm F2.8L III USM フッ素コーティングなど最近のLレンズに搭載している要素はすべて搭載!

諏訪光二 撮影・解説

日本大学芸術学部写真学科中退。弊誌人気連載「どっちのレンズショー」レポーター。EIZO ColorEdge グローバルアンバサダー。SAMURAI FOTO会員。

*本記事は2016年10月に発売された弊社ムック「史上最強の5D登場! Canon EOS 5D Mark IV オーナーズブック」より抜粋したもので、開発者の所属などは当時のままです。

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